AIに仕事を奪われないための「カイゼン思考」

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皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。

AIに関しての記事はいくつか以前もご紹介しましたが、AIに仕事を奪わるのではないかという心配は、けっこう多くの方が感じられていることかもしれません。

これは、AIというものがよくわからないことからくる不安です。

まずはAIが何なのか、出来ること・出来ないことが何なのかをきちんと把握する。そしてどう共働を成し遂げていくかが、これからの時代を生きる我々の考えるべきことです。

今回は、AIに仕事を奪われないためには、「カイゼン思考」、つまりカイゼンの知識・技術・経験が大きな役に立つという視点からのエントリーになります。

AIとカイゼン

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AIに関する記事は、ネットを見回しても数多くあります。私も以前のエントリーで「強いAI」と「弱いAI」についてまとめましたが、現在のテクノロジーはこの「弱いAI」を発展させている段階です。そしてこれは当分のあいだ続きます。

機械学習、あるいはディープラーニングなど一昔前では考えられないような技術で進化を遂げているAI ですが、結局のところ人間がデザインし、正解を決め、導いてやらなければ機能しない

ここをきちんと押さえておけば、単純に「仕事を奪われる」という恐怖は霧散していきます。むしろ、「ではどこにどうやってAIを導入するのか」を考えることが重要だということに気づくはずです。

この「どこにどうやってAIを導入するのか」は、まさにカイゼンという業務の最も得意とする領域なんですね。簡便自動化の際の機械導入みたいなもの。

導入に当たっては、まず業務の選定から入りますが、方針管理における3C分析や、パレート80 20ルールCTQにおける重点化は、プロジェクトやワークショップの選定でも日常的に使われる手法です。

対象となるプロセスの選定しかり。

そしてプロセス中のどの部分にAIを組み込むのか、これにはいわゆるプロセスマッピング(情報とプロセスの流れ図:Swim Lane)が絶大なパワーを発揮します。

この際、SIPOC分析自工程完結の考え方で、求められる要件をクリアにすることも、カイゼンの常套手段です。

このあたりRPA導入のエントリーでもお話ししましたね。

そして、カイゼン活動で常日頃から大事にされていることは、「実際に使う人の声を聞くこと」です。

エンジニアや我々が良かれと思って何かを開発しても、毎日毎分使う側の作業者さんが使い勝手が悪いと、これはもう絶対使われません

使い手=お客様の声をきちんと反映させながら、AIにやってもらいたい業務、AIが生成すべき成果物(アウトプット)を明確にしていくこと。これは仕事で何かを変化・カイゼンさせていくときにマストになる考え方です。

このあたり、「AI時代の新キャリアデザイン」にも同じことが書かれていて、「カイゼン、やっぱりAI時代にも求められているな」と改めて納得いたしました。

カイゼンとは常に良い方向に変化していくことです。ビジネスも、あるいはAIもその基本部分は同じ。変化促進のためのカイゼンの考え方と手法が、AIとの共働とマッチするのは至極当然かもしれませんね。

カイゼンマンが「AIシナジスト」になる

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このようにAIと人の間で、AIの出来ること出来ないことをきちんと把握しながら、「適材(適機能)適所」AIを導入・促進できる人間になることは、これからの時代に求められるカイゼンマンの在り方になってくるはず、というのが持論です。

このへん先ほどご紹介した、「AI時代の新キャリアデザイン」の中では「AIシナジスト」という言い方で表されていました。Synergy(相乗効果)を生む人ということで、Synergist(シナジスト)。

そのためにはもちろん、AIについてよく知らなければいけませんね。

先に説明したような導入の際の促進・サポートだけでなく、ではどの会社のどういったプログラムなら要件を満たすのか、こうしたことを判断できる能力も求められて行きます。

まさに簡便自動化の機械を入れているようなものですしね。

あとはデータ活用に当たっての、「情報倫理」という部分も問われていくでしょう。手に入るからと言って、例えば顧客の個人情報に関するものをなんでもかんでも分析していいのかという部分。

あるいは、AI導入に当たりパートナー会社との間での情報開示に関することで、関連各所と連携を図らなければいけないところもそうです。全体最適を目指すカイゼン活動に、Cross functional teamで事に当たるのは欠かせない考え方です。

実際にプログラムを書いたりする能力はいらないにしても、AIに関連して学ぶことは多い。最近ではMOOC(Massive open online course)という無料の学習システムも充実してきました。いろいろ学びの場は用意されています。

カイゼン=良い方向への変化です。従来の現場IE的カイゼンにとどまらず、新しい時代に見合った手法や考え方を身に着けつけていきたいですね。

それが「カイゼンマンがAIシナジストになる」ということだと思います。

AIにできないこと、カイゼン手法で

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AIにできることの説明は以前もしましたし、またネットでも多くの情報が入手可能です。

逆に「AIにできないことは何なのか」は、意外とはっきり知られていなかったりします。

そこでこの節では、「AIにできないこと」=AIシナジストであるカイゼンマンが、AI(その導入)を導いてあげられることである、という視点で掘り下げていきます。

これからの時代に求められる大事なことは、「AIと人間がうまく共働作業して生産性を高めていく」こと。

よって我々カイゼンマンに求められるのは、AIが苦手とする

  • 動機:解決すべき課題を定める力
  • 目標設計:何が正解かを定める力
  • 思考集中:考えるべきことを捉える

のような点でどうAI導入をサポートしていくかになっていきます。

これら3つは最近読んだ「AIにできること、できないこと」という本からの情報です。それぞれについて深く知りたい方は、書籍を当たっていただくとして、ここではそれぞれの項目について、普段カイゼン プロジェクトを進める上でどのような手法や考え方を使ってるのかを見てみます。

動機: 解決すべき課題を定める力

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どの課題を優先して解決すべきか。

AIはそもそも、人間がデザインしてあげたことを学び、その中で答えを探し出すためのエキスパートです。それはつまり、現状のAIには膨大なビジネス課題のどれを優先化していくかを決定する能力はないということです。

ビジネスに求められることは多岐にわたりますね。

収益向上、品質向上、顧客満足、社会貢献、従業員満足、社会から求めれるものを一歩先んじて創造していくこと。

これらは我々のカイゼン活動の中では、戦略的計画、つまり方針管理を設定し、そのなかで3C分析などを行う作業がそのまま優先化という作業になっています。

その中でいわゆる社会動向の調査というのは、AIにやってもらえる作業ではあるでしょう。何のデータを求めているのかさえはっきりさせてあげれば、こうした事前調査はAIに任せ、そこから優先化すべき事柄を探り出していく。こんな共働が出来そうです。

CTQ(クリティカルトゥクオリティ)などのフレームワークも機能するでしょう。

またゴールにたどり着くための適切な道順(サブゴール)の設定もAIにはできません。ここでは系統図法や、PDPC法で成功への道筋を立てていきます。これらもカイゼンプロジェクトで頻繁に使われるものですね。課題解決型TBPでは、「成功へのシナリオを描く」というステップがあることは、以前ご紹介しましたね。

ちなみにこのAIの、「解決すべき課題を定める力がない」というのは、AIとビジネスをするうえでかなりのキーポイントになります。

先ほどご紹介した「AIにできること、できないこと」という本でも引用されていましたが、ピーター・ドラッカー曰く、

「重要なことは、正しい答えを見つけることではない。 正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とはいえないまでも役に立たないものはない」

RPAの導入もそうですが、何を解決するのかの判断を下すのは人間です。そのために必要な能力を磨く、あるいは先に上げたようなカイゼン活動のフレームワークを適用することで、ヒトの存在感が増すことになります。

目標設計:何が正解かを定める力

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またAIは「目標設定」、すなわち「あるべき姿」も決めることはできません。

正しい問いがあって、正しい目標が設定できる。

時間的制約やリソースの観点からも、ビジネスは網羅的であってはならない。パレート(80 20の法則)の考え方で重点主義を貫くことです。「やらないことは何かを決めるのが戦略である」という言葉もあります。

こうした価値判断は人間が行わなければなりません。バリューグラフ、クライテリアマトリックスや7 Waysのアイデア評価法などが使用可能ですね。

正しい問いは、言い換えると「より効果的でかつ全体最適を目指せる課題」ということもできるでしょう。

カイゼン活動には欠かせない視点です。

それには、社会動向、政界情勢、技術進歩など常にアンテナを張り情報収集をしていくことが戦略的場面で必要になります。また他社をベンチマーキングして、自社・自部署、自身の立ち位置と向かうべき、あるべき姿を俯瞰していく作業も求められていきます。

現状とあるべき姿のGapを埋めるにはどうしたらいいかを考えていくことの「ギャップアプローチ」。

Win Winの関係を目指し、バランスの取れた結果を得るにはどうしたらいいのでしょうか。AIにこうした答えを出す機能はありません。KPIが全体最適化できるように設定し置くことは、方針管理の基本です。

自部署の、あるいは自社の「Vision、 Mission、 Value」も明確にしておきましょう。どんなあるべき姿(目標)であれ、VisionやValue に違わないものでなければならない。

トヨタの方針管理や自工程完結の中でキーとなるのも、自部署、自社に求められた役割をはっきりさせて、出てくる成果物の質を判定することにあります

クライテリアマトリックスや7Waysのアイデア評価法は、予測される結果についても使用可能です。

AIには何が正解かを判定する能力はありません。判定してるのは人間が正解を与えているからです。

様々な場面の「目標」は、人間があらかじめデザインしておかなくてはいけません。これは常日頃、カイゼン活動に求められていることになります。

思考集中:考えるべきことを捉える力

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この「思考集中:考えるべきことを捉える力」は、すでにAIが身につけてきていることです。

ただしAIは、質より量で「思考集中」を実現しています。総当たり戦。

選択肢の幅が狭い、つまり考えるべきことがそもそも少ない範囲であれば、いずれAIが 人間を超えていくことは明らかです。というか囲碁とか、すでに超えていますよね。

一方で、検討する選択肢の幅を広くとった上で、質の高い絞り込みが出来るというのが、人間の強みではないでしょうか。

視野を広げるというのはとても大事なこと。

いわゆるカイゼンのアイデアも、どこから降ってくるか分かりません。

TPS(トヨタ生産方式)の、後工程引き取りの考え方が、アメリカ視察中に初めて見たスーパーマーケットにヒントを得たというのは有名な話です。

またアメリカのサウスウエスト航空では、飛行準備LT短縮のためにF1のピットインをベンチマークしました。客室乗務員(CA)も機内掃除に参加、地上職員はトイレ掃除と飲み物の補給をし、すべての準備を10分以内に完了させる、まさにSMED (Single Minute Exchange of Die:シングル段取り)ですね。

以前「巧遅拙速で!チャンスが舞い込む“セレンディピティ”」でも触れましたが、大事なことはとりあえずやってみることです。

そしてこの場合のアクションには、自分の知らない分野の書籍なども、とりあえず試しに読んでみるというチャレンジが含まれます。そうすることで、今まで考えたこともなかったような新たな考え方や視点を手に入れることができる。

もちろん畑違いの領域の情報が、直接的にすぐ機能するということはまれかもしれません。が、知識を広げ、心の片隅に保存しておくことが、時にアイデアとなって舞い降りてくるというのは、何かに真剣に取り組んでいる人なら誰でも経験したことではないでしょうか。

やらねばならない専門の読書や研究も重要ですが、ときには全く畑違いの領域に挑戦して視野を広げておくといいでしょう。

やろうと思えば人間は、無限に視野を広げて新たなものを吸収することができます。そして我々の脳は、ふとした拍子にそれをつなげてアイデアにしてくれる、相当高次なレベルのコンピューターです。

そうした大きく広く点在する情報をつなげて理解し、アイデアとして昇華させる機能はAIにはありません。

人間は、大きな視野と点在する情報の点と点をつなげて大きな線を作っていく。まるで夜空に浮かぶ星たちをつなげて星座をデザインするような。

そして大きな「絵」が見えてきたなら、「星1つ1つ」のような限られた範囲での思考集中はAIにお任せする。

まさに適材適所、選択と集中、ヒトとAIが共働していく方法ではないかと思います。

まとめ

石角友愛さんの本

いかがでしたでしょうか?

今回は「AIに仕事を奪われないための『カイゼン思考』」と題しまして、カイゼンで使われる思考や手法がいかに「AIシナジスト」として役立つかご紹介しました。

今後AIは、エクセルのように一般的なツールになると言われています。

ただそうした中でも、何もAIエンジニアや、データサイエンティストみたいな、ゴリゴリの方向性を目指すばかりが生き残りの術ではないということです。

石角友愛さんの言う「AIシナジスト」とは、現在の会社・部署に勤務しながら、AI導入の際その開発側と自社との橋渡し役になる存在です。

「AIでなくなる職業」というのも注目を集めていますが、「AI時代に新たに生まれる職業・ポジション」というものもあるはず。

大事なことは、アンテナを広げ、最先端の情報を吸収しながら、自らの立ち位置に落とし込んでいくこと、想像していくことではないかと思っています。

状況を見える化していくことですね。問題が見えればアクションが取れます。それがカイゼン活動の第一歩です。

今日も読んでいただきましてありがとうございました。

ではまた!

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