サウジアラムコ上場のわけ

Why Saudi Aramco got listed.

今結構話題になっている、サウジアラビアの国営石油会社アラムコ上場についてです。私Kusunoko-CIがサウジを去る2018年には、すでにこの株式上場の情報が出回っていました。世界最大級のIPOなどと言われ、話題性も高かったわけですが、どこまで将来性があるのかは若干不透明という見方のようですね。いろいろ、サウジに住んでいると聞こえてくる王族のお話なんかもありまして、さもありなんという感じがしました。そこで、実際住んでいなければわからない、ちょっとした豆知識も絡めながら、今日はサウジアラムコ上場の秘密に迫りたいと思います。

サウジアラムコとは

はいお世話になります、Wikipediaさんの説明は以下の通りです。

サウジアラビア王国の国有石油会社である。
保有原油埋蔵量、原油生産量、原油輸出量は共に世界最大である。

ということで、サウジで当たり前ですが最も大きくかつ有名で、おそらく給与も一番位高いであろう会社です。ちなみに、私の所属していたToastmasters clubの会合も何度かこのSaudi Aramcoのレクレーションセンターで行われたりしまして、行きましたが結構立派な施設です。当然ですね。
ちなみにこの会社、厳格な国籍給与規定がありまして、一番高いのはアメリカ人、ついでカナダ人、そしてサウジ人という順番だそうです。もともとアメリカ資本が入っていたものが国有化されたということもあってなのでしょう。ちなみの正式名称は、アラビアン・アメリカン・オイル・カンパニー(通称Aramco)ということで、100%国有化されてもなお、アメリカという言葉が入っているあたり、サウジとアメリカのつながりの深さを感じます。

会合風景

なぜ上場?

さて今回のテーマであります、なぜ上場しなくてはいけないのか、ですが、ずばり、財政難です。石油のみが世界の血液として、まさに文字通り世界を動かしていた時代は、価格もいかようにもなったでしょうし、サウジという国が持つ富はそれこそ計り知れないものがあったと思います。
ただ石油の「一極集中」という状態はすでに終わりを見せ始め、そのため政府(王家の皆さん)も脱石油を掲げて舵取りをし始めています。どこかでVision 2030というニュースを見たこともあるかもしれませんが、観光や金融に収入源を見出し、そうまるでドバイのような国に変化してこの難局を乗り切っていきたいという思いがあるようです。この旗振りで有名なのが、若くして突然Crown Princeに任命された、ムハンマド皇太子です。昨年(2018年)末、ジャーナリストの件で話題になりましたね。

増える王族

現在、サウジアラビアに王家の親族は何人くらいいると思いますか? なんと2万人です。Wow.すごいですね。ちなみに外務省のホームページの情報によれば、サウジアラビアの人口は3,294万人(2016年)。内訳が自国民:73%、外国人:27%とのこと。これで行くと、約2400万人がサウジ国民ということになります。そのうち2万人強が王家ゆかりの方々。ということは、1200人に一人は王家の人ということです。結構な確率で王家の人に出会えそうな感じですね。東京の人口が今1400万人ですから、同じ計算で行くと都内に12,000人くらいいる計算になります。もう町を一つぐらい作れそうな勢いです。
で、皆さんご存知のように、一夫多妻制で多産なお国柄ですから、増加率もかなりなのだろうなというのは想像に難くないです。
そして、生活費支給です。これは諸説あるのですが、やはり現在の王様に近いところの方々には相当額が支払われているようで、「初代国王の子息には月給3000万円」などという記事もあります。で、順に減額はされていくんでしょうけれども、2万人分です。私がサウジにいたころ言われたのは、すべての王家の人たちは、おなかの中にいる赤ちゃんも含め、月額5万リヤル(約150万円)もらう、とのことでした。さっきの3000万円に比べればずいぶん常識的な数字に聞こえてしまいますが、それでも、150万x12カ月x2万人で、3600億円です(多分もっとですよね)。毎年です。そして増えるのです。これは大変な負担ですよ。

人頭税・消費税・ガソリン値上げ

そんなわけで、財政は火の車。しかもこのまま行くと歳出維持に必要な資産が5年以内に底を尽くというIMFのお墨付き
そこで、外国人の扶養家族一人につき毎月400リヤルの人頭税をかけてみたり(2018年から段階的に100,200、300、そして2021年に400リヤル)、Value added tax、いわゆる日本でいうところの消費税を5%導入してみたり。ガソリン代はレギュラーで0.6リヤル/リッター(18円)だったのを1.37リヤル(41円)まで上げてみたり。まぁいろいろと国民(と主に外国人)から税金という形でお金を得ようとしております。もちろん何もないよりましです。

財政赤字の上昇幅は縮小したとのことですから、延命措置にはなっていますね。ただ、出ていく方を何とかしないといけませんよね。これは日本の政府にも声を大にして言いたいですけど!

サウジの苦悩

それだけではなく、一般国民の人口増。サウジアラビアは割ときれいな三角形の人口ピラミッドを形成しており、このまま行くと2030年までに労働人口が2倍になるとも予想されていて、就職を求めてさまよう人々もかなりの数に上ります。Kusunoko-CI、終業後車で帰る時ラジオを聞いていたのですが、人生相談(そういうものはどこに行ってもあるんですね)番組で、「うちの夫の就職が見つからないんです」と泣いて相談している女性の話を聞いたことがあります。
また、2018年くらいから、ようやく女性の社会進出政策がとられ始めましたけれども、そもそもの産業構造が男性主体で作られていましたから、これを変えていくのはなかなかに骨の折れる作業になると思います。

女子大なんかもあって、女子学生もいっぱいいるんですよ。ただ私がいた当時は、ほとんど働き口はなかった。ほんとに化粧品売り場とか一部限られたところでのみ女性を見ることはありましたが、下着売り場も男性で、「とっても気まずい」(嫁談)ってこともありましたから。
結局のところ、政治というのは経済政策なんですよね。国民が、職がある、暮らしが立ちゆくと感じ納得すれば、その政権は長く続くことができる。そうでないのは、日本の民主党時代の政権を見れば明らかかと思います。
今までは、湯水のように配ることのできた一般国民へのお金も、これからはそうもいかない。労働人口と就職口のアンバランス、特にこれからは女性も視野に入れた産業構造改革も行わなくてはならない。これまでは潤沢な資金で紛らわすことのできていた国民の不満をどう扱っていくのか。ムハンマド皇太子、手腕を問われますね。

サウジ人口ピラミッド

まとめ

いかがでしたでしょうか? 今回の「サウジアラムコ上場のわけ」。『アラムコ上場、初値は公開価格上回る 時価総額最大に』との見出しで日本経済新聞にも記事が出ておりましたが、「サウジ政府が支配する企業統治に課題が残る。海外上場のメドも見えず、規模に見合うだけの成功を収めたとはいえない状況だ。」との見方をされているようですね。
Kusunoko-CI、リーダーシップのところでお話ししましたが、自ら範を見せないと、改善・改革は成し遂げられませんが、どうするのでしょうね。これからも私は注目していきます。なんせ私の息子の生まれた国ですから! I love Saudi! がんばれSaudi Arabia!

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