チェンジマネジメント Change management
皆さんはChange managementという言葉を聞いたことがありますか?
日本ではまだあんまりなじみがないかもしれませんが、文化的な違いからか海外では結構重要視されています。
ChangeをManagementする(そのまんま?)という意味ですね。これはつまりどこでも変革に対しては苦労しているということです。
そこで今回は、変革に際して人をどう扱っていくのか、どうすれば人は変革を受け入れやすいのか、に関して少し述べていきたい思います。
チェンジマネジメントとは
大きなprojectが会社でスタート。これからの時代を生き抜くためには、どうしても必要な変革である。まさに社運を賭けた変革であるのに、抵抗勢力が。
私のブログを読んでくださっている皆さんは、すでに人というものがいかに変化を嫌う生き物であるかよくご存知かもしれませんね。そうです、抵抗勢力が生まれます。
小さな話でいえば、5Sの実施に伴い、諸般のルールを確認してみると、たばこ休憩で帰ってこないベテランとかいるみたいな。で、こうしたルールの小さなほころびも、5Sに穴をあけるには十分ですから、社長自らそのベテランさんとお話ししたりする。そうすると、「俺はこうやってずっとやってきたんだ、何が悪い。いやならクビにしてみろ、俺がいないと回らないだろう?」みたいな態度に出られてしまったり。
変化に対するわかりやすい抵抗です。
これは極端な例であるにしても、大なり小なり変化に対する抵抗というのは出てきます。それをどう乗り越えるか、変革成否の90%以上を占める「人」要素とどう向き合っていくか、それがチェンジマネジメントが提唱するフレームワークです。
チェンジマネジメント フレームワーク
もうさっそく結論から。
各社様々な理屈を構築していますが、私が学んだPROSCI社のフレームワークを中心にお話してみましょう。「ADKARモデル」です。
このPROSCI社さん、ProfessionalとScienceでPROSCIと名乗っているようで、クライアントにはColumbiaとかAdobeという大きな会社名も見られます。で、このADKARって何なのか、ですが、
A: Awareness 気づき
D: Desire 欲望・情熱
K: Knowledge 知識
A: Ability 能力
R: Reinforcement 強化
こういうふうに、人が変革に必要な段階やその要件を、「ADKAR」というそれぞれの要素の頭文字で説明しているわけです。ひとつずつ説明していきますと、
A: Awareness
気づき。今まさに組織としてどんな変革を行おうとしていのかの正しい情報がないと、人はただ戸惑い恐怖を覚え混乱し、最悪の場合やみくもに拒否してしまいます。
なので、きちんとしたコミュニケーションを、根まわしを取っていきましょう、というステップです。告知やタウンホールミーティングなど。
D: Desire
欲望・情熱。この変革に対するそんな利点が、従業員にとってあるのでしょう?
いわる「What is it in for me」(それは私にとって何の得があるの?)という納得がないと人は動きません。
変化を受け入れたい、変化をサポートしたい、変化したいというインセンティブを与える努力をしなくてはいけません。
K: Knowledge
知識。上記2点を踏まえ、変化が起こりつつあり、そして変化したいという気持ちも芽生えた。でもそれが何なのかわからない。
これはこれでフラストレーションがたまります。変革に関する情報を与えてあげましょう。
何が変わって、以前と何が違うようになり、これからはどうなっていくのか、具体的な説明が必要というphaseです。
A: Ability
能力。情報は頭でわかった。では実際にシステムを使うにはどうやるんだ、どこのプラットフォームから、どこをクリックして、何を提出して・・・という具体的な操作性に関するトレーニングがないと、口で言われても人はわかりません、基本的に。
R: Reinforcement
強化。そして最後の強化ですが、変革させるのはある意味簡単。ただその後それがきちんと定着するかはまた別の問題。
特にマネジメントは、それがきちんと定着し標準化されていくまで、フォローアップをしていかなくてはならない。
現場を歩きますか。あるいはレポートを提出させますか。コミュニケーションをとって現状を把握しますか。
皆さんが新しいシステムで困ったことがあれば、それを開発などにフィードバックしていきますか。
これはマネジメントサイドの責任です。そしてKusunoko-CIの経験上、これがもっとも重要でかつだいたい弱い。
お気づきの方もいるかと思いますが、マーケティングの「AIDMAS」などに触発された感のあるフレームワークですね。その時々で、有効な手段を取らなくてはならないという方法論です。
チェンジマネジメント 事例
では実際にどうやるのかというのが気になるところですよね。
まずは組織の変化に対するassessmentです。この部署は比較的この変化を受け入れる土壌があるぞ、この部署はかなり厳しいぞ、という地味ぃな判別の作業に入ります。
エクセルとか用意しまして、組織図を書きます。で、その部署のキーパーソンの変化に対する受容度を記入します。受け入れ度合いの高いところはもちろん問題ないのですが、低いところは努力を必要とします。
変化が全社的なものである場合、基本的にはTop managementの後押しはあるはずですから、各部署にいわゆる「Change ambassador」を設け、変化推進事務局の、その部署への橋頭保になってもらいます。このChange ambassadorはある程度影響力のある人じゃないと意味ないです。
まずはもちろんその部課長とのコンセンサスを設けることが必要で、あとはコミュニケーションによって、先ほどのADKARにあるようなステップごとの適切なトレーニングやセッションを行っていきます。
チェンジマネジメント それでも変わらなかったら
これは実際に講師の方にお聞きした話です。ある半民半官企業で大きな変革を行うことになった。コンピューターシステムの入れ替えだったと思います。古くなって、無駄に複雑化したシステムを入れ替えれば、経費は下がる、使用者の負担も減るということで悪いことではないわけです。
ただ、従業員=人が変化を受け入れなければならないという部分は、もちろんついて回ります。
残念ながら反対勢力が出ました。結構古株の、しかも高めのポジションにいらっしゃった方がシステム受け入れにNoと言い出しました。これを皮切りに、その方の周辺の、あるいはなにかしら賛同してしまった(反対のための反対?)人たちがグループになってしまい、変革は難航しました。協力が得られないからです。
お分かりかと思いますが、システム変更など時間がかかればそれだけコストがかかります。会社はChange managementのコンサルタントに相談しており、変化のためにあらゆる努力はしましたが、それでも一部集団化した人たちは、受け入れようとしません。
本当に最後の最後の手段として、会社はその反対の指揮を取っていたベテランの方に辞めてもらいました。
その後、驚きリーダーを失った集団は一気に賛成派へと変わり、ごく少数の人たちがややしばらく小さな抵抗を見せたようですが、無事変革は達成されたとのこと。
このお話は、反対者がいたらクビにせよ、という話では全然なくて、最後の最後まで話し合いや説得という会話の場、あるいはトレーニングを続けてもダメなら、こういう選択肢もあるかもしれないという例になります。
Projectや改善の成果・目的と個人の従業員を天秤にかけることになるのは嫌な感じではありますが、致し方ないこともあるということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか、ChangeをManagement。
そんな大きなProjectというわけではなく、いわゆる改善というものでも、こうしたコミュニケーションやトレーニング、根まわしの部分はあります。
私はサウジ時代に5S活動とこのChange Managementの方法論をくっつけて展開させていきました。
また企業文化構築という部分にも結構かかわってくるので、知っておいても損はないですよ。
「変革成否にかかわる90%の要因は、人である」。適切なコミュニケーションて大事ですよね!