工程能力を統計ソフトで算出してみた
皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
さて以前、工程能力についてのお話をしました。
「シックスシグマでやること」とサブタイトルをつけていますが、別にシックスシグマじゃなくても使用する考え方であることは、皆さんよくご存知だと思います。
計算方式などいろいろご説明しましたが、では統計解析ソフトを使うとどうなるのか、が今回のお話しです。
題して「工程能力を統計ソフトで算出してみた」です。あまりに楽すぎて、もう戻れない感が半端ないです。
統計ソフトMinitab
さてKusunoko-CIは「Minitab」という統計ソフトを使っています。
私は別にこの会社さんとは何のかかわりもないんで、別にこれじゃなきゃいかんということは申しません。
ただ、サウジアラビアにいたときに、イギリスの会社のシックスシグマ グリーンベルト講習を受けたのですが、その時も紹介されていました。かなりワールドワイドなものですね。
慣れるまでは正直、機能が多すぎて何をしていいのかわからん、と思ったものでしたが、だんだんやり方を覚え使い始めると、もうこれなしではいられない。
将来こちらのソフトを使わなくなったとしても、何かしら代替のソフトは使うだろうなと思います。
統計ソフトはそれぐらい便利です。感覚的には、インターネットなしの生活が考えられないくらいのレベルですよ。
Minitabで工程能力を計算する
さて早速この便利なMinitabで工程能力を算出してみましょう。
ある工場の組み立てラインでのお話を例にしてみます。
ここでは作業日数(リードタイム)があまりに長いのが悩みの種ということで、実際に現在どれくらい時間がかかっているのか調査を行いました。
62回分のサンプルを取ることができました。Minitabのワークシートに記入していきます。


改善前データ
現状把握
そうしましたら、現状の工程能力の計算に移りましょう。
まずはいつものように「統計」から、「品質ツール」を選び、「工程能力の分析」→「正規」を選択します。
説明にも「データがほぼ正規の場合」と書いてありますね。あんまり心配しなくても、きちんとデータをランダムに取っていればこの「ほぼ正規」を満たします。
出てきたポップアップウィンドウに必要事項を記入します。
今みたいのは作業日数の計算結果です。サンプルサイズに「62」と入れました。
日数なので下限は「0」、ここがLimitになりますので「軸」にチェックを入れています。これ英語表記だと「Boundary」で、「境界線」みたいな雰囲気なんで理解しやすいんですが、日本語で「軸」とか言われても、ちょっとよくわからない。
たまに日本人に優しくないのがMinitabです。
上限はこの例では20日をアッパーリミットにしていたと仮定して、「20」を入れます。
OKをクリックすると以下のような結果を得ました。
Cpkが「-0.29」というなんとも悲惨な結果になっています。これは何とかしないといけないですね。
何と言うか、作業に関してはとても簡単なのがお分かりになるかと思います。
データさえそろっていれば、この結果を得るのに10秒かからない。楽だなー。
改善後
このようにデータで、そして特にヒストグラムで視覚的に見せつけられると、これが喫緊の問題であることがいやおうなしに理解できます。
チームの皆さんで、「ここ最優先だね」というコンセンサスも取れ、おそらく経営層も納得してGoサインをくれる結果になっていることでしょう。
改善のスタートです。
まずはビデオを撮って、時間観測。要素作業を洗い出して、いわゆるムダな作業の徹底排除です。
付加価値のついた作業だけになるよう、可能な限り手を尽くします。
工程のレイアウト(間締め含む)、ワークステーションのデザイン、冶具や部品の配置もサイクルタイム短縮のために見直します。
山積みチャートでボトルネックの洗い出し、ムダどりの後にラインバランシング(Line Balancing)を行いました。
工程のドロップ オフ レイト(DOR)も、すべてタクトタイム内に収まるようになっています。Leanな工程になってまいりました。
ということで、製造のリードタイムは著しく短くなったようですが、工程能力は果たしてどうなのでしょうか?
改善後のデータを取りまして、分析いたします。
改善後には43個のデータが取れましたところで、同じワークシートに入れました。
先ほどと同様に、工程能力計算に必要な情報を記入して、OKをクリック。
そうすると一瞬で以下の結果が出ました。
Cpkは「2.47」でちょっと出来すぎたくらいの結果になりましたね。工程能力指数の見方について、こちらの記事もご参照ください。
ちなみに図中に見える「Ppk」は長期Cpkのことです。
ここで得られたCpkの結果というのは、いわゆる状況の「スナップショット」。長期的には、だんだんとばらつきが大きくなることがあるかもしれませんよ、という数値です。
つまり写真ではなく「ビデオ」でずーっと追いかけると、工程能力が必ずしもCpkで得られたように制御下にあるわけではない、ということを教えてくれます。
今回は同じ数値になっていますが、長期的にはそういう結果も予想されますので、当然管理図などを使って、工程を見守っていかなくてはなりませんね。
Ppkは短期の標準偏差の代わりに、長期の標準偏差を使用する以外はCpkと同じように計算されます。
ちなみに、「Minitabアシスタント」というガイド機能で工程能力を得ることもできますよ。
こちらだと正規性検定(左下)もやってくれています。出てくるデータはPpkになっていますね。
工程能力注意事項
以下、工程能力の算出に当たり、気にしておきたい部分を少しまとめてみました。
- サンプルを十分にとる
サンプル数が少なすぎると、Cpkの値は正しくない恐れがあります。統計的に有効に表現するためには、少なくとも50個のサンプルを集めましょう。ということで、今回の例の「改善後データ数43個」は不十分です(笑)
- データは個別で
50個のサンプルを得るために、同じ製品を50回、または10の製品を5回ずつ再試験しても、ばらつきの正確な画像を得ることはできません。ちゃんとやりましょう。
- 能力分析を行う前に、機器のゲージR&Rを行う
測定データが信頼できるものであり、全体のばらつきのごくわずかな要因にすぎないことを確認しておく必要があります。「Garbage in, garbage out」になっちゃいますからね。
ビデオでの時間観測の場合も、何が付加価値をつける作業で、何が付加価値を生まないのかの認識合わせをきちんとしておかないと、得られたデータがおかしなものになるので、注意が必要です。測定前にトレーニングをしておきましょう。
ということで、ほぼほぼデータの取り方の話になってしまいましたが、ここがおかしいと計算自体が全く意味なくなってしまうので、気を付けておきたいですね。
まとめ
というわけで今回は「工程能力を統計ソフトで算出してみた」でした。
以上のようにとても楽なので、是非何かしらの統計ソフトを導入されるのがいいと思います。
その分浮いた時間を、ほかの付加価値のつく作業に回してどんどんカイゼンするなり、人を育てるなりしていかれるのが得策です。
導入検討されている方がいらっしゃいましたら、日本語のマニュアルが充実したものを選ぶといいですよ!
今日も読んでいただきましてありがとうございました。
ではまた!
お高い、が辞書のように使用。