実験計画法 Minitabでやってみた!
皆さんこんにちは! 今日もどこかでカイゼンサポート、Kusunoko-CIです。
さて前回は、実験計画法(Design of experiments: DOE)という実験の効率化を図る方法の全体的な流れをご説明いたしました。
基本となるのは「ランダム化」と「分析」でしたね。
ランダムにして、系統誤差を減らしていくのがポイントになっていました。そして代表的な分散分析、とくに多元配置のエクセルでのやり方もご紹介いたしましたが、ちょっとたいへんになってきてましたね。できれば統計ソフトが欲しいな、という感じで締めくくっていたのでした。
そこで今回は、私が使っているMinitabという統計ソフトで、こうした実験を行うとどうなるのかを見ていきたいと思います。
「実験計画法 Minitabでやってみた」です。統計ソフトの便利さが御理解いただけるのではと思います。
Minitab
まずはさらっとMinitabというソフトのご説明ですが、Wikiさんによれば
Minitabは、1972年にペンシルベニア州立大学の当時研究員だったBarbara F. Ryan、Thomas A. Ryan、Jr.、Brian L. Joinerにより開発された統計ソフトウェア、及び、開発会社名である。
とかなり歴史の長い統計ソフトであることが分かります。
言葉で説明するより、映像を見た方がイメージも涌きやすいと思いますので、動画へのリンクを貼っておきました。
私は特にこちらの会社さんと関わりがあるわけではないので、「これが最高のソフトウェアです!」などとアピールするつもりもないですが、便利です。
慣れるまではちょっと「???」なところが多いのも事実。でも全部を理解する必要もないわけで、計算機と同じで、使うところのやり方を把握しておけば、特に問題はありません。今のところは。
こちら販売している構造計画研究所のホームページには、
シックスシグマやQCサークルのような品質改善活動や、あらゆる製造業の皆様の設計開発、生産技術における実験計画と解析、品質管理における統計的品質評価に使用されています(構造計画研究所)。
と説明されており、カイゼン活動をサポートすることが主な目的になっているのがわかります。強い味方ですね。
実験を計画してみよう with Minitab
ということで、早速Minitabを起動して、実験計画を立ててみましょう。
今回は猫の体重増加(g)の変化を見るための実験です。現在子猫を飼っていて、みなさん元気に育っていただきたい。8匹も(笑)。
この場合の因子ですが、「えさ、ミルク、温度」の3種類で、それぞれ2水準で体重増加の結果を見ることにいたしました。
3因子・2水準。
- えさ:かりかり / 缶詰
- ミルク:牛乳 / 猫用粉ミルク
- 飼育温度:15℃ / 25℃
因子が3で水準が2ですから、総当たりで「2×2×2」の8通りの実験を行うことにしました。子猫8匹に、それぞれ異なった条件を与えることになります。
前回のお話にもあった、系統誤差をなくすため、ランダム化しなくてはいけない、ということも念頭に置きながら、実際にMinitabを使って実験計画を出してみましょう。
実験計画
まずはMinitabの「統計」から「実験計画法」→「要因計画」→「要因計画の作成」に進みます。
2水準で、因子数は3ですから「3」を選択します。
次にオプションから、総当たりなので「完全要因実施計画」を選びます。
続いて「因子」を選択し、それぞれに名前を入れていきます。「えさ、ミルク、温度」の3種類でしたね。この時、下限値上限値をテキストにするか数値にするかも選べます。今は分かりやすいように、それぞれの水準をダイレクトに入れてみました。「かりかり、缶詰」とその以下の部分ですね。
さらにオプションで、「ランダムジェネレータの初期値」を「1」に選択しておきました。これでもし皆さんがMinitabで同じことをやっても、同じ結果が見えるようになります。
で最後に「OK」をクリックすると、以下のような実験計画が出ます。この組合わせ実験すれば誤差を排除した、ランダムな結果が得られるということですね。
ということで無事実験計画が手に入りました。
実験から分析
以下、実験計画に従って、実験をし分析をするセクションです。
自由度が足りない
実験自体は、Minitabはサポートしてくれません。当たり前ですが(笑)。
なので地道にやる。
ということで、8種の異なる条件下の子猫たちは、それぞれ元気に育っています。データを集めてみましょう。以下のような結果を得ました。シートに記入しています。
ということで次に行いたいのは、どの因子が一番成長に効いているのか? ということですね。
実験計画→要因計画→要因計画の分析を選びます。
で結果を得ますが、何ということでしょう! P値が全く出てきません。
詳しい話は避けますが、今回の場合だと、計算に必要な誤差への「自由度」が足りなくなってしまってるため、MinitabがP値を出せなくなっているのです。
ここはもう1段階作業が必要になります。
こんな時は、先ほど一緒に生成された「効果のパレート図」に着目します。
このパレート図は、各因子と交互作用の効果の大きさを示しています。赤く見える点線を超える大きさのものは、いわゆる「統計的に有意である」と判断されるものです。
それ以外の、点線より小さいC・BC・ABC・ACは、今有意な差があるとは言えないと判断されるので、分析から取り除いてしまいます。
ABは「ボーダー」っぽいですね。後で効いてくるかもしれません。ちょっとまだ残しておきましょう。
不要なものは取り除く
先ほどと同じく、実験計画→要因計画→要因計画の分析を選んで、今度は「項」を選択し、今不必要と判断した因子と組合せを取り除きます。
Aえさ、BミルクとABのみ右側のボックスに残りました。
また更に、グラフの「一覧表示」と結果の「拡張表」を選択して、OKをクリック。
とうことで、今度は無事以下の分散分析の結果を得られました。
分散分析の結果
えさ、ミルク、えさ×ミルクいずれも、統計的に効果があることがわかりましたね(P値<0.05)。
ちなみに実験計画→要因計画から「要因計画のプロット」というのを選ぶと、以下のようなグラフを得ることもできます。
えさは缶詰にして、猫用粉ミルクを与えた方がいいことが視覚的に判断されます。
私の過去の飼育経験上もそうでした。
良く育つ、そしてよく肥える(笑)。
肥満を気にするなら、逆にこうした組合せは避けた方がいいのかもしれませんね。ほどほどにするとか。こうした判断は人間ならではかもしれません。
Minitab その他気になるところ
今回は2水準・3因子という、かなり基本的な組み合わせで実際にMinitabを使ってやってみました。
当然ですが、因子をどんどん増やしたり、あるいは水準の数が一定でないものも、きちんとランダム化した実験計画を出してくれますので、ご安心ください。
また、これだと結局2×2×2の8通りを総当たりでやっているので、あんまりありがたみが感じられないかもしれませんね。ですがMinitabはいわゆる直行表も、もちろん作成してくれます。
今回は触れませんが、構造計画研究所さんのこちらの記事で詳しく説明されていますので、直行表や線点図に詳しい方は、参照して使われてみてはいかがでしょうか。
ちなみに気になる価格ですが、3年契約の場合で年175,000円。初年度はプラス60,000円となっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、「実験計画法 Minitabでやってみた!」と題しまして、3因子2水準の基本的な実験計画の立て方と、分析、データ表示までをまとめてみました。
知っていないとできないところも多かったと思いますが、一度覚えてしまえば、こんなに簡単なことはない。
特に私はあの分散分析のあたりがお気に入りです。楽だから。
というわけで皆さんも、何かしらに統計ソフトを導入して、めんどくさい計算部分などはやらせてしまい、もっとクリエィティブな部分に力を集中させるようにしてみてはいかがでしょうか?
それがコンピューターやいわゆるAIと共に働く生き方になるのでは、と思います。当面のところは。そのうち逆に指示されるかもしれませんけどね(笑)。
今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。
ではまた!
出てきた数字の意味するところなどが、具体的に説明されています。