製品が工程を経て 1個1個が出てくるその「時間間隔」をどう呼ぶ?

Photo by carlos aranda on Unsplash

皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。

皆さんの工程改善やムダどり、いかがですか?

このブログでも何回か、改善活動に有効なツールの使い方をご紹介いたしました。

活動の進め方は、まず全体像を把握、悪さ加減を皆さんで分かるように「見える化」する。そしてその後、個々の問題をインパクトでもって優先化して解決していく、という流れになるかと思います。

まずはVSMや「情報とプロセスの流れ図」なんかを描きます。

その時サイクルタイムや、仕掛かりを現地現物で実測していき、データボックスに書きいれていくのでしたね。

さて今回はそのサイクルタイムに関しての、ちょっと小ネタになります。それは「ある製品が、ある工程を経て、1個1個が出てくるその時間間隔を何と呼ぶか」です。

何と呼びますか?

今回は、意外と知らないこの呼び名、この「間隔」のお話です。

ラインから製品が出てくる時間間隔

現場の方と一緒にVSMを描いていると、この「製品が、ある工程を経て、1個1個が出てくるその時間間隔」をどう表現するのか、難しさを感じることがよくあります。

何と呼ぶのか。

人間というものは、概念がわかっていても、固有名詞を与えてあげないと、なかなか伝え切れない、あるいは分かりあえない厄介な生き物です。

これが現場で一緒に描いているのなら、まだ身振り手振りや「お絵かき」でなんとかなったりするのですが、Web会議で、しかも英語で、となるとかなり厳しい。

名前というか、この「言葉」という存在が、分かり合うために本当に便利なものだというのがわかります。

いろいろ調べてみた結果、日本語では「ピッチタイム」と呼ぶことが多いようですね。

ただこちらのサイトでも、「=サイクルタイム」という表現をしているのが、少し気になります(理由後述)。

あるいは、こちらのPDFでは「実績サイクルタイム」と名付けているようです。実際にラインから出てくる実績としてのサイクル(間隔)の時間という、意味がわかりやすい名前になっていますね。しかもサイクルタイムとは、やや違うものだという差異化も図られております。

どちらでもいいとは思うのですが、社内では統一しておきましょう。でないと同じ名詞を使っているのに、違うことを話していたという、笑えない話になってしまいますので。

英語では「Drop off rate」

Photo by Kent Pilcher on Unsplash

ところがこの「ピッチタイム」とか「実績サイクルタイム」、英語訳ではそのまま使えません。

まずは「ピッチ」ですが、これはLeanやVSMを描く際、英語圏では全く違うものを表す言葉です。

この「ピッチ=Pitch」というのは、「出荷時のコンテナ入数 × タクトタイム」で計算される「時間(の管理)単位」のことであり、生産管理や、そのためのカンバンの仕組みなどを考える時、とても重要な概念になってきます。

詳しい話はまたいつか触れるとして、このピッチというのは、ですので「ラインから製品が出てくる時間間隔」を表すのに適切ではないのです。

まさに同じ名詞を使っているのに、全く違う概念をイメージしているという危険な状態になってしまうわけですね。

あるいはこの「実績サイクルタイム」も敢えて訳せば、「Actual」とか、「Result」とか、「Performance」サイクルタイムみたいな感じになるのでしょうが、伝え切れるかとなると、ちょっと考えてしまいますね。

特にサイクルタイムの説明では、「実測された時間」(Actual, measured time)というような説明をしますんで、これとどう違いを持たすのか、説明しづらい。

じゃ英語では何と呼ぶのか、ずーっと探していたのですが。

長いサーチの末に「Drop off rate」と呼ばれているのを、「Getting Started with Value Stream Mapping」というPDFで発見しました。

ただあんまりよく使われる単語でもないようですね。どちらかというと、デジタルマーケティングで、使われている言葉でしょうか。

「サイトを訪問したけれど、購入行動につながらなかった人の割合」という意味の方が多いみたいです。Google AdSenseのサイトでも説明されていました。

なぜこの「間隔」が重要になるのか

実際の生産現場では、同じ工程が複数人の作業者によって行われていることが多々ありますよね。VSMを描いていると、「ここはラインが二つになっていて」という場面によく出くわします。

例えば今、1ライン(1作業者)のサイクルタイムが5秒だったしましょう。

この時、このサイクルタイムとピッチタイム(実績サイクルタイム・Drop off rate)は同じです。

今ラインは一本、各工程5秒おきに一個完成 (Gifer)

ではこれが、2ライン(2作業者)になった場合は、どうでしょうか?

サイクリックな標準作業が達成されていたとして、両ライン(2作業者)から5秒に1個ずつ、計2個製品が排出されるならば、このインターバルは2個 / 5秒、つまり平均して2.5秒当たり1個となります。

サイクルタイムは変わらず5秒ですが、時間間隔あたりの生産数は2倍になっています。ピッチタイムは2.5秒で一個です。

工程改善をしていて、機械の能力上どうしてもタクトタイムを達成できない場合など、マシンの数を増やして対応するというのも一つの方法です。

一つの機械のサイクルタイムは現状5時間かかるけれども、台数を増やすことでお客様要求のタクトを満たした、ということも現実にあります。

このような時、純粋なサイクルタイムではなく、「製品が、ある工程を経て、1個1個が出てくるその時間間隔」というのが、議論の的になるわけですよね。

その際にこうした事象に名前がないのは、とても不便なのです。

「何秒に(何分に)つき一個出てくるの? それじゃタクトに見合ってないよね。何とかしないと…」というような話の流れになったりするわけです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、「製品が、ある工程を経て、1個1個が出てくるその時間間隔」についての小ネタでした。

何度か申し上げていることですが、社内でコンセンサスが取れていて、お互い分かり合えるなら何でもいいとは思います。

もちろんサイクルタイムとか、直行率とか、世間一般で定義がしっかりしているものはそれに従った方がいいですよね。

ただ今回のようにそうでもないもの、あるいは特殊すぎて一般的には使われていないようなものは当然、カスタマイズしていってもいいのではないでしょうか。

大事なのは、全体を見える化して、実際の「改善行動を起こす」ということですからね。あんまりに言葉や概念で悩みすぎず、行動で付加価値をつけていってください。

今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。

ではまた!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA