「後工程はお客様」の理屈 What is the logic of “Following process is your customer”
皆さんは、この「後工程はお客様」という言葉を聞いたことがありますか?
以前一度このブログでもお伝えしたのですが、これはこれで定着しすぎていて、危険な言葉なのかもしれないと思うようになったKusunoko-CIです。
そこで今回は、しっかり丁寧にそのLogicを一度検証してみようと思いました。こうした論理的な説明なしには、海外の人は特に受け入れてくれないですからね。
「後工程はお客様」
はい、恒例の英語で言うと“Following process is your customer”ですね。ただこれを言ってもほぼ間違いなく伝わりません。「お客様なわけないじゃん」って言われます。言われなくてもそう思ってます。
そして、例えばSessionとかやっても、そこに座ってるだけみたいな感じになります。そんなことやってもほんとに時間のムダ。我々は付加価値のついた意味のあるトレーニングをやっていかなくてはならない。
そして以前企業文化のところでもお話したかもしれませんが、分かりやすすぎる言葉も時に我々の考える機会を奪ってしまいます。
この「後工程はお客様」の言葉、Kusunoko-CIにとってはそういう言葉でした。ある時はたと思ったわけです、「なんで『お客様』なの??」。
資料作っててちょっと考え込んでしまったのですが、何でそういうのかという疑問に対する明確なロジックを、私自身持っていない。つまり考えていなかったわけです。
危ないですね。自分の中で論理的整合性がなければ、人を納得などさせられません。書いてる時だけ、人は考えている。書かないと、そう思いました。
後工程はお客様 理屈
ではこの言葉にどう納得できるLogicがあるのか、考えてみたのが以下のようになります。
お客様とは
お客様とは、我々の会社ではなく、外にいる会社さんだったり個人だったりが基本ですね。なので、同じ会社で働いている人は、厳密に言えばお客様ではないです。
お客様とはつまり、我々の組織の外側にいて、我々に注文を入れたり、来店したりして物を買って、品物を受け取り、そしてお金を払ってくれる存在のことです。
なので、我々はQDC(品質・納期・コスト)や私たちの企業の姿勢(環境にやさしいとか、社会貢献しているとか、順法精神とか、Branding・イメージとか)をカイゼンあるいは向上させて、そのお客様の求めるもの(あるいはそれ以上)をお届けしていかなくてはならないわけです。
お客様満足と口コミ
世の中には、競合相手がたくさんいます。
あなたも経験があると思いますが、そこのレストランの接客がひどい、あそこのお店は高すぎる、味がまずいなどなどの理由から、そのお店に行かなくなったことがあるはずです。
あるいは、なんか嫌な噂を聞いたとか、不祥事を起こした(法に背いた)ということで、商品を買うのをやめたことだってあるかもしれません。
つまり、お客様にはいくつもの選択肢がある。その「その他大勢」の中の一つが私たちの会社の商品やサービスですので、いつもお客様に満足していただくこと=次も選んでもらえることにつながっていきます。
現実には、様々な理由で次はないかもしれません(引っ越した、そのサービスが不要になったなど)。しかし、満足して我々の商品・サービスを「卒業」していかれるお客様は、必ずいい評判を社会に落としてくださいます。
「車買おうと思ってるの? だったらあそこのディーラーさんがいいよ。車持ってた時は、ずいぶんよくしてもらったから」とか、「歯医者さん? だったらこの辺じゃあそこの○○歯科が一番だね」、なんて経験は誰でもあるのではないでしょうか。
良い評判が、次のお客様・ビジネスチャンスを呼ぶのもよくある話です。
まして今や時代はSNS社会。どんな評判も瞬く間に世界中に広まります。その口コミや評判は、一度広まるとおいそれと覆すことはできません。我々は、お客様が求めるもの(良い商品・サービス)、きちんとお客様に届けていくことを常に求められていると言えるでしょう。
小さな会社・大きな会社
ここで会社やお店のサービスが、その規模によって変わってくるお話をします。
小さな会社の場合、だいたい社長・オーナーさんが、業務を全部やらざるを得ません。
仕入れたり、運んだり、お客様にそれを売ったり。自分が一人でやっていると、お客様の顔も見えやすく、「こんなものが喜ばれた」あるいは「こういうサービスは受けがいい・求められてる」なんてことも心で感じ取りやすいものです。
大変だけどこれは有利な点とも言えます。
しかし、組織規模が大きくなってしまうと、だんだんこうした特性は失われていきます。分業体制が敷かれるようになり、部署によってはお客様と直接かかわりのない業務に携わることも出てきます。
例えば経理の方は、数字と格闘することが仕事になります。お客様とはあまり話す機会はないでしょう。あるいは製造の方。いくつもあるプロセスの中で作業する従業員さんは、お客様と顔を合わせて話を聞きながら仕事を進めるということはまずないと思います。
これはこれで、組織が大きくなっていってる証ですから、多分に仕方のないことですね。
意識はどこへ向かうか
しかし、こうした分業化が進むにつれて、会社のほとんどの部署が、お客様と直接話をしない=だんだんと誰のためにその会社が存在し、その業務が発生しているのかが見えづらくなっていきます。
これも自然の成り行きで、だからだめだとかそういう話ではないです。
例えば、小さいころ大好きだった幼馴染の子のことも、普段は忘れてしまうのが人間です。今ある生活、心配事、健康の件、来週ある予定、今夜見たいあのYou tuberなど、我々の気持ちは今ある現実に結びついていて、そこにFocusするのは普通の現象ですよね。
ですので、工場の生産ラインで働いている方であれば、今日のターゲット、品質で気にしなければいけないこと、あの工具はどこにしまってある、手順は・・・と今目の前にある仕事を完遂するための情報に意識が向かっているはずです。
なので次第次第に、自分のことで手一杯、最優先すべきは自分のタスク、というふうになっていきます。特に忙しくなってくるとその傾向はどんどん強くなっていき、あまり他人のことまで気が回らなくなる。せいぜいラインリーダーさんや関わりある周りの同僚くらいまで気遣いできるかな、といった感じですよね。
後工程を見学
単純に、他部署のことまで気が回らない。ひいては普段会うこともないお客様のことを思い浮かべるはずもない。それだけ我々は忙しく働いているわけです。しかしながら、そうした無意識的にせよ自部署優先となってしまうところに、落とし穴は待っています。それが品質です。
基本的には、すべての部署が完璧な質のOutputを出してさえいれば、我々のお客様のところまで不良がお届けされることはないはずです。し
かし今述べましたように、我々は多くの場合、自部署の都合優先で動いてしまっています。「こうやって教わった」、あるいは「こうやってきて特に問題も起きたことはないし」というのが普通の考えで、それ以上を考えることは、忙しくて余裕がないかもしれません。
そこで一度、自分の後工程が自分のところで仕上がったものを使い、どういうふうに仕事をしているか、見学してみるのです。
これは自分の仕事を見つめなおすための、非常にいいチャンスになります。普段何気なくやっていたことが、後工程に追加の作業を生み出していたり、あるいはここまでで良しと思っていた仕事水準も、後工程で手直ししてから工程作業をしていたり、いろいろな発見があると思います。
そして、自分のところの仕事も考えてみます。ここがもっとこうなっていれば、仕事がしやすいのになー、ということは今までなかったですか?
実は工程にいるすべての人が、ほんの少しずつ不満やFrustrationを抱えながら、そうはいっても「言うほどのことでもない」あるいは、「言うと角が立つし」という思いを抱えながら働いているのかもしれない。そういった気付きを得られるいい機会になるはずです。
相手の立場
「自分のところで普通にやっていた作業が、こんなふうに後の人にひと手間かけさせていたんだ、自分が相手の立場だったら、いやだな」、こう思う気持ちが大事です。
自分の仕事のOutputは相手が求めているものでなくてはならない。つまり、相手(後工程)が求めるものが何なのか、それがあなたの部署の仕事や品質の判断基準になるということです。そこから判断基準を作っていくことができます。
そして、なぜそうした追加の業務や負担が発生していることが、自分達の工程まで伝わってこなかったのでしょう? あなたの部署はなぜそれを前工程に言えなかったのですが? コミュニケーションがもっと気軽に、もっと頻繁に取れるような仕組みを考えなくてじゃいけないと思うようになるはずです。
そしてあなたの部署も、100%OKなものだけを前工程から受け取るようにする。こうした、全員が自分の仕事を、求められている基準で完成させることで、お客様に届く品質が保証されていく過程が出来上がっていきます。
お客様の姿を後工程に見る
考えても見てください。後工程で発見できるような不良や基準未達ならまだましです。
しかしそれが、お客様に届いてしまったらどうなるでしょう? 言うまでもないことですが、お客様は非常に不愉快で取引をやめてしまうかもしれません。そして、その失われた信頼を回復するのに、どれだけの期間がかかるでしょう?
会社がこうむる損失ははかり知れないものになるでしょう。もしかしたらみんな職を失うかもしれない。
つまり、この「後工程はお客様」という言葉には、自分の仕事を受け取る側の人=「最終的にはお客様」を見据えた仕事をしていこうという思いが込められています。
最初に説明したように、後工程は厳密な意味ではお客様ではないです。ただ、そこへ仕事を届けているという気持ちの喪失は、「お客様に、お客様が満足できる製品を届けている」という意識をなくしてしまう確実な出発点になります。
だからどんな作業をしているにせよ、お客様を忘れた仕事をしない=後ろの工程をお客様と思って、完璧を届けようという気持ちを忘れないということですね。お客様の姿を後工程に見ながら仕事をする。あなたの完璧は、他工程の完璧とつながって、完璧な製品・サービスとしてお客様に届いているのです。
いかがでしょう? できればこうしたSessionの中で、みんなで後工程を見学する機会を設けるのがいいと思います。普段はみなさん、それこそ自分の作業場所ぐらいしか見ることなどないはずですし、言葉をいくら使ってみても、一回見ればいろいろ考え方も変わっていくはずですから。
そうです「現地現物」ですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回の後工程はお客様の理屈。自分が求められているものが何なのかが忘れ去られては、いいものはできません。
しかしそれは起こるのです。そうしたことを防ぐため、相手のある「仕事」というものを、我々はしているのだとうことを頭に描き続けなければならない。
そのために、まずは自分の後工程に良品だけを届けよう、後工程の満足のために仕事をしよう=後工程は我々のお客様なのだ、という論理になっていくわけですね。
わかったつもりになっていても、なかなか説明するのは難しい。それを痛感する言葉、それが「後工程はお客様」でした。
私のお客様は、読者の皆様。付加価値届くようにがんばります!