ファーストガンダム ナレーションに見る背景の書き方 A3番外編2

皆さんこんにちは! 今日もどこかでカイゼンサポート、Kusunoko-CIです。

すでに何回か、トヨタの「A3」のレポート技術をお伝えいたしました。

提案やカイゼンProjectのレポートなど、必要・重要な情報をコンパクトにまとめ、紙1枚で相互理解や効果的なアクションを達成するのが、この「A3」の特徴でした。

そしてこの考え方は、会議のAgendaなんかにも効力を発揮しますよ、というお話しもいたしましたね。

とはいえ慣れるまでは、なかなかうまく書けないのもこのA3の特徴。

最近また改善ワークショップをお手伝いしておりますが、冒頭の「背景」に関するところが書けないケースが多々見受けられました。

そこで今回は、「ファーストガンダムに見る背景(Background)の書き方」と題しまして、ガンダム第1話のナレーションに見るA3「背景」部分の書き方です。

「背景」と「現状」が分けられず、まくまとめられないという方は必見です。

A3はPDCA

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トヨタで生まれたA3というレポ―ト方式は、単なるレポートの枠を超えたコミュニケーションのツールとして機能します。

メンター(基本的には上司・先輩)の指導をもらい、内容を何度も推敲していく中で、自分に足りないものが見えてきます。

そうした部分を特に調べてまとめていき、自分の中にそのテーマに対する理解が深まっていくのが分かる、そんな仕組みになっていました。

これはまさに、A3を書く過程で、

  • 現状把握:何がわかっていて何が分からないのかを、客観的指摘を受けながら「見える化」する。
  • 目標設定:経験豊富な先輩や上司に、足りない部分を埋めるための方向性や、達成すべきレベルの助言をもらう。
  • Gap Approach:現状と目標がはっきりしたので、そこを埋めるためのアクション(調査・熟考・書きなおし)をとる。

といった最も基本的な問題解決・課題解決の手順を踏んでいることになります。

つまりA3を何度も書き直していくことで、PDCAを回しているということができると思います。

背景が書けない

さてこのように、上手に使えばなかなか威力を発揮するA3ですが、冒頭にある「背景」が書けていないケースが非常に多いです。

そのカイゼンProjectや課題を選ぶにあたっての根拠になる部分が、この「背景」なのですが、多くのケースで、

  • 何が言いたいのかわからない(Project選定の理由になっていない)
  • 次の「現状」とごっちゃになっている(解決すべき問題点を書いてしまっている)
  • 解決策を記入してしまう(解決策は真因を見つけてから)
  • 異様に長い(読めない)
  • 記入出来ない

という悩みにぶち当たっているようです。

指導する側としても、言葉を尽くして書き方を教えているのですが、なかなか手が回らない。ワークショップなどでProjectの数が多いと、1Projectにかけられる時間も限られてきますので、しっかり話を聞いて、一緒に書いてあげるということもままならないのです。

ファーストガンダム「背景」

最近のカイゼンワークショップのお手伝いで、多くの方が悩んでいるのを見まして、「何かいい説明の例えはないものか」と考えていました。

そこでふと、ファーストガンダムのナレーションに行き着いたわけです。これはブログに書けるなと(笑)。

おっさん世代で知らない人はいない、子供向けアニメとしては異例の存在であったガンダム。いまだ根強い人気です。

私もこれで育った人間ですが、冒頭のナレーションは「背景の説明」として本当によくできているな、と今になって感心してしまいました。

「A3」にぴったりじゃん。

どういうものかといいますと、

人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして、死んでいった。

宇宙世紀ダブルオーセブンティーナイン(0079)、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。

この一ヶ月あまりの戦いでジオン公国と連邦軍は、総人口の半分を死に至らしめた。人々はみずからの行為に恐怖した。

戦争は膠着状態に入り、八ヶ月あまりが過ぎた。

です。

懐かしいと思われる方も多いのではないでしょうか。

それでは早速分解して、エッセンスを学んでいこうと思います。

全体の大きな流れ

まずは冒頭の2つのセンテンス。

人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして、死んでいった。

の部分です。

ガンダムのストーリーが置かれている舞台の「状況説明」。このナレーションの場合、冒頭でこのファーストガンダムの世界観を、余すところなく伝えていますよね。

視聴者が「なるほど、この世界では、人間はすでに宇宙ステーション(コロニー)のようなもので生活するのが当たり前になっているのだな」と理解するのに十分な内容です。

特にこの「人々はそこで子を産み、育て、そして、死んでいった」という描写によって、この状況が、何世代にもわたっていることをしっかり説明できていると思います。

カイゼンProjectで言えば、そのProjectの選定至るまでの経緯を、大きな視点から書き表すのがこの部分の役割です。

製品やサービス・組織の置かれた状況に、どういう背景(社会的ニーズ・消費者動向・技術革新など)があったのか、事実に基づいた記述をします。

これから話をする、このA3の課題の置かれた状況ですね。

「転」に当たる記述

続いて、先ほどの「世界」に変化が現れます。

宇宙世紀ダブルオーセブンティーナイン(0079)、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。

このように何世代にもわたり人類が築いてきた平穏な社会が、突然戦争という騒乱状態に叩き込まれたことを記述しています。

この第1話のあと43話(企画時52話)まで続くストーリーの根幹を流れるのは、言うまでもなく、ジオン公国と地球連邦政府間の「戦争」、そして主人公たちが巻き込まれてしまったこの「戦争」であり「戦闘」でした。

つまりここが、ファーストガンダム全体のストーリーの「流れ」を決定づける情報になっているのです。

「必然」を生んでいるわけですね。

カイゼンProjectなどの例で言えば、先ほどの「製品・サービスが生まれた・おかれた背景」の中、この課題を取り上げることことになった、重要なきっかけとなる事象です。

例えば、

  • 新規参入により、新たな局面を迎えた
  • 需要が増え、生産体制の見直しが迫られている
  • 品質問題に悩まされるようになった

などなど。

背景の説明を受けて、テーマの方向性を示すことで、なぜこの問題を取り上げなければならないのか、組織にとっての重要度がどのくらいなのかを説明することができます。

定量的に記入

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そして最後は、「どのくらい」という規模のお話しです。

この一ヶ月あまりの戦いでジオン公国と連邦軍は、総人口の半分を死に至らしめた。人々はみずからの行為に恐怖した。

戦争は膠着状態に入り、八ヶ月あまりが過ぎた。

この2文の中からは

  • 初期の戦闘が1か月以上続いた
  • 双方の総人口の半分が犠牲に
  • その後8カ月、大きな戦闘はないものの事態は改善していない

ということが見て取れます。

1番2番で、我々が置かれた「背景」と「課題・問題選定の必然」を説明しました。

ここでは定量的なデータを示し、何がどのくらいの状態にあって、どのくらいの期間に計測されていることなのかを、根拠と共に明確にします。

課題に取り上げる製品やサービスに対して

  • 何時から何時までのデータで
  • 生産量・品質などがどういう状態なのか(%)
  • したがって今後どうなるのか、どうしていかなくてはならないのか

などが、具体的に盛り込みたい情報になってきます。

上記1から3までの説明で、記述すべき情報はすべて網羅されましたね。

おさらいすると

  1. どんな背景で
  2. テーマ選定の必然を示し
  3. 状態を定量的に説明

ここまで書けば、かなり分かりやすい背景(background)が書けていること間違いなしです。

問題点を洗いだす(Break Down the Problem)

さてこうして背景は説明されたわけですが、課題・問題解決の場面ではもう1文欲しいです。

それが「問題自体をはっきりさせる」ということ。

これは残念ながら、ファーストガンダムのナレーションにはない部分になりますが、今回解決すべき課題・問題を絞り込めているかの確認にもなります。

こちら以前、TBP(トヨタ・ビジネス・プラクティス)のところで詳しく説明いたしましたので、ご参照ください。

もう一度簡単に説明すると、「どこで、いつ、何に対して、どのような課題・問題が、どのくらい起きているのか」という、1文になります。

ちょっと背景の3番ともかぶりそうな感じがしますが、あそこで説明したのは全体の置かれた状況の定量化。

ここでは、今回の課題・問題のスコープをよりクリアにするという違いがあります。

例えば、「Aラインのセクション3、夜勤シフト中に、製品Aの左側下部に傷が発生する事案(全体の33%)」と設定したとしましょう。

ここまで明らかになると、目標の設定もまた自ずとはっきりしてくる。

今回の目標は当然、「Aライン・セクション3、夜勤シフト中の、製品Aの左側下部に傷をx月x日までに0%にする」となるはずです。

問題が具体的になるということは、やるべきこともはっきりするということですね。

またここでもう一つ注目してほしいのが、課題設定における「全体の33%」というところ。

つまり、このA3の書かれたProjectを解決しても、残りの67%の問題は、まだ残っているわけですね?

それらに関しては、もちろん次その次と、継続的にPDCAを回していくことで解決していきますが、今回のスコープは、あくまでのこの33%の部分。

チームの実力や、割ける時間などを加味すると、現実的に今回対応できるのはここまでと判断した、ということです。

この「スコープ決定」というのは、思うよりもずっと重要で、コンセンサスのないまま始めたProjectは、後でチーム内で揉めたり、あるいは広がりすぎて収拾がつかず完遂出来ないという状況に陥りがちです。

戦略とは「何をやらないかを決めること」とも言われていますね。

ここからここまで、今回のテーマの中身です。それ以外は今回は手をつけません、というのをはっきりさせましょう。揉めるといろいろ「削られ」ますのでね…。

ファーストガンダムは「問題・課題解決」ではないですから、このような部分はナレーションには必要ありませんね。我々は問題、そして目標に関する部分を具体化して、取り掛かりましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は「ファーストガンダムに見る背景(Background)の書き方」と題しまして、ガンダムのナレーションを例に、A3の背景の書き方をご説明いたしました。

「世界の描写」という大きなものから、どんどん情報が狭まり、取り組むべき課題という身近なところへ落とし込まれていく過程が見えてきたのではと思います。

行き当たりばったりではなく、根拠があってこの課題・問題に取り組んでいるのだということが示せれば、上長の承認も得やすくなります。

あるいは、こうした課題・問題の「背景」というものは、組織の示す「方針」と合致しているはずです。

カイゼンの世界において、Projectは、会社が掲げる重点目標を達成するためのアクションです。テーマ選定の段階からここを意識しておくと、背景描写はそもそもそんなに難しいものではないのかもしれませんね。

そして「なんでこんなことをわざわざ書かないといけないのか」、という向きもあるかもしれませんが、この資料はいずれ誰かのためになるものです(ヨコテン)。

どのような状況で、こうした課題・問題に取り組むことになったのかを示しておくことは、情報の受け手がそこからヒントを得るためにとても重要になってきます。

資料を「死料」にしないためにも、ぜひ読んで状況が理解できる背景作りを心がけてください。

ファーストガンダムも、重厚な人間ドラマを描き出しつつ、おもちゃを売りたいという方針(戦略)がありました(笑)。そのためのストーリー展開が、いまではこんなに大きく育ったわけです。素晴らしいヨコテン事例になっていると思いませんか?

あの有名なナレーションは、今日のガンダムシリーズの成功を産むために、よく機能したのではと思います。

その後40年以上も続くガンダムシリーズの趨勢を、ここで決定付けたといってもいいかもしれませんね。狙ったとしたらすごいですけどね。

今日も読んでいただきましてありがとうございました。

君は、生き延びることができるか。ではまた!

ファーストのファンなら、ぜひ読んでおかなくては! 「安彦」ガンダムです。

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