工程で必要な作業人数を計算しよう! 省人化から少人化を目指す

皆さんこんにちは! 今日もどこかでカイゼンサポート、Kusunoko-CIです。

さて工程をデザインしたり、作業改善をしていて、このプロセスに必要な人数って何人なんだろう? と考えることはありませんか?

作業人数というのはかかるコストにダイレクトに響いてきますから、雇い入れるにせよ、配置するにせよ、慎重に行きたいところですね。

そんなわけで今回は、作業に関わる時間から適正な作業人数を計算する方法です。そこからトヨタ生産方式における、作業改善(ムダどり)の進むべき姿、省人化や少人化の考え方も導き出していくことができますよ。

作業人数計算 「CT÷TT」

タクトタイム

一番単純な方法は、作業全体でかかる時間を基準となる時間(タクトタイム:Takt Time)で割って求める方法です。

もうちょっと詳しくみてみます。

作業にかかる時間というのは、各作業者がその1つの作業を終わらせるのに必要な時間、つまりサイクルタイム(Cycle time)のことです。

10分/個:1個作るのに10分かかる、のように考えます。

では工程全体でどのくらいの作業時間が必要になるかというと、各作業のサイクルタイムを足し合わせることで、全体としてかかるトータルの時間(リードタイム:Lead Time)が出てきます。

式で言うとこのような感じです。

その完成品アウトプット(製品や、書類でもいいです)を出すのに必要な、すべての要素素作業は何か、そしてその要素作業一つ一つは何秒(何分)かかるのか。

それらの集積されたものが、そのアウトプットを完成させるのに要する時間、つまりすべてのサイクルタイムの合計ですね。全工程にかかるリードタイム

それをお客様の要求数から割り出したタクトタイム(Takt Time)で割ることで、必要な人数が出てきます。

例えば今ピザを作る要素作業が10個で、それらを合計すると30分だったとします。タクトタイムが10分/個であったとするならば、この工程では、30÷10で3人必要ということになりますね。

作業人数計算 算出ロジック 

理屈を少し考えてみましょう。

今タクトタイムを計算したところ、10分で1枚ピザを作らないといけないことがわかっています。

ということは以前説明したピッチ タイムないしはドロップ オフ レイト(Drop Off Rate:DOR)は10分に1枚ということなりますね。

ピザ1枚の全工程に30分かかり、一人で全作業を行っているとするならば、この時点でのDORは30分です。工程の最後に立っていると、30分に1枚のペースで、完成品ピザが出てくる。

しかしこれは、お客様要求数を満たせない状態ですね。

ピザは30分に1枚、工程から出てくる

タクトタイムは10分で1枚ということになっていますから、それが目標値です。単純に基準値である10分で、全体工程にかかる時間を割ってやると、「3」という数字が出てきます。

ここに3人配置すれば、お客様要求数を満たすことができることになりますね。それぞれが10分に1枚ピザへの処理(要素作業)を完了し、次工程に渡せるようにライン バランシング(Line balancing)も考慮します。

各工程は10分に1枚生産できる

あるいは、後半の工程は分割できない作業の連続であるので、2人配置して、1人は20分に1枚ピザを完了させ、それが二人で2倍になるのでDORが20分に2枚、つまり10分に1枚のタクトタイムを満たすようにするということもあるかもしれません。

以前もご紹介しましたが、大事なことはドロップ オフ レイトが、タクトタイムより短くなっているかどうかです。

B工程は20分に2枚=10分1枚を達成

作業標準とカイゼン

ものづくりをするの当たり、最初に決めておかなくてはいけないのが、こうした要素作業の順序とかかる時間です。

まずは標準となる時間は作業単体でこのくらい、全体でこのくらい、という「作業標準」が必要になりますね。

それをもとに作業指導書であったりが作成されて、作業者さんはそれに従ってその製品作りを始めることになる。

ただし当然ながら、このように決めた作業標準は実際にオペレーションを動かしてみると、改善の余地が多々あることに気づくわけです。

あるいはその通りに行かない作業も出てくるかもしれない。

ですのでこうした作業標準を、どんどんカイゼンしていかなくてはいけないわけですね。いわゆる8つのムダに代表される、付加価値のつかない行為・行動を取り除いていく。

ビデオを取って作業を客観的に確認します。

標準作業として決められたことに沿って作業しているのか見ることも当然ですが、作業者さんが、

  • ものを探していないか
  • しゃがんで何かを取っていないか
  • 振り向いてする作業はないか
  • 手は「ストライクゾーン」内で動いているか(肩より手を上げない、身体の幅より腕を伸ばさない)

というのは、動きのムダの中でも見逃しがちで、「ちりも積もれば」で結構な効果になります。

また作業者さんと機械のシークエンスを最適化するなら、以前ご紹介した「標準作業組合せ票」を使って組合せの分析を行うことも必要です。

改善後は「標準作業票」で標準作業を見える化し、異常の確認に努めてください。管理のCAPDの始まりです。

省力化、省人化と少人化

省力化

省力化

上記のピザ工程も、こうした時間観測やムダどり、品質向上で3人必要な作業が、2.5人分まで減らせるようになるかもしれません。

計算としては、トータルでかかる作業時間が、カイゼンによって30分から25分になった感じですね(25÷10=2.5人)。

これが省力化です。

省人化

省人化

しかしこの2.5人作業というのは、結局のところ「3人」必要になってしまいますよね。

ですので、徹底的にムダを取り、どんどん改善を進めることで「一人」分を削減することが目指すべき姿になります。

いわゆるトヨタ生産方式(Lean)で目指すべきところは、いかに「真」の生産性を上げていくか。お客様の需要に合わせ、必要なものを、必要な時に、必要なだけ(JIT)作る作業を、出来る限り少ない人数で行う。ピザの例で言うと2人でもできるようにする。あるいは究極的には一人とか。

これを省人化といいます。「作業者()を生産ラインから省く」ので省人化です。

ちなみに人を省く時は、その工程で最も優秀な人から、というのがカイゼンの鉄則です。逆をやると著しくモチベーションが下がります。

優秀な方には、もっと高いレベルが求められる仕事についてもらいましょう。

少人化

少人化

それに対し少人化は、お客様の要求量の変化に応じて、作業者さんの数をフレキシブルに増減させることで、生産性を維持できるようにすることです。

注文が多いときには人を増やし、少ないときには人を減らして、一定の生産性を保つやりかたを少人化と言います。

少人化は、売上げ増でも売上げ減でも利益を出すための方法であり、トヨタ生産方式の生みの親の一人でもある大野耐一さんが、「限量経営(げんりょうけいえい)」と呼んだ考え方から生まれたものです。

限られた経営資源でいかに「やりくり」するかを、究極的に昇華させたものですね。トヨタも資金繰りに四苦八苦した時代があって、いいものをいかに安く作るかに知恵を絞り続けた結果、こうした方式にたどり着いたわけです。

ちなみにこの少人化、英語で「Labor linearity」と表現されたりもします。需要の変化に対すると生産者人数をかなりのレベルで線形(linear)化することができることからのようです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は「工程で必要な作業人数を計算しよう!」と題しまして、タクトタイムを使った必要人数の算出方法をご説明しました。

計算で人数が求められるというのは、ありがたいことです。ざっくり何人くらい必要なのかが分かりますからね。

とはいえこうした計算というものは、あくまで「机上の理屈」に過ぎないことも忘れてはいけません。

ますはこうした計算で人数を出すことも必要ですが、標準は改善のための一里塚

時間観測やムダどりを行って、その標準自体をどんどん変えていくことが必要になります。それがいわゆるカイゼン(継続的改善)活動になります。

省人化するその先に、少人化を目指すこと。でなければ利益の出せる体質にはなっていきません。

今日得たカイゼン結果をベストだとは思わない。それをまた「最悪の状態」とみなして、次のカイゼンに着手することが必要だと、先述の大野耐一さんはおっしゃっています。

以前も何度かこのブログで取り上げまして、大事なので何度も言いますが、これを現場の皆さんにそのまま強要しても、行動も起きなければ、良い結果も生まれては来ません。

経営者の皆さんは、まずは自分から始めましょう。「やって見せて」の精神です。そして現場がカイゼンできる環境を整えてあげること。

そして何があっても続けること

トヨタ生産方式は、右側通行であった国の車道のルールを、左側通行に変えるほどの大きな変革です。「やれ」といったから出来上がるものでも、一朝一夕にできるものでもありません。

競争・変化は激化しています。生き残り、勝ち残りたいなら、覚悟をもって徹底して続けていくことがマストですね。

今日も読んでいただいましてありがとうございました。

ではまた!

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基本的な考え方は全部詰まってます。

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