『平準化』するとは? すべてはトップの覚悟

Heijunka.

皆さんこんちにちは。今日もどこかで改善お手伝い、Kusunoko-CIです。

以前「一個流し」や、「ジャストインタイム(JIT)」についてお話ししました。

それらを実現するために、すべての土台として持っておかなくてはいけないのが、この平準化です。

逆に言うと、この平準化なしには、「一個で流す=流れで作る生産」も、ジャストインタイムも機能しない。

いわゆる、TPSハウスにおける、「最高の品質、最短のリードタイム、最小のコスト」という、製造業存続のための、目指すべきターゲットを掲げることができなくなります。

改善において、「人づくり」と同じくらい重要な、この「平準化」について、今回は説明したいと思います。題して、「『平準化』するとは? すべてはトップの覚悟」です。

これを読み終わることには、平準化って何? というところから、その構築までの仕組みが見えてくることと思います。

平準化とは?

平準化とは。「平にならす」ことを意味します。英語ではLeveling。Levelが「水平」なので。

平準化には2種類あります。

  • ラインに流れる「量」を、ならすこと
  • 流れる「種類」をならすこと

当たり前の話ですが、毎日作らなければならない量が、とんでもなく多かったり、とんでもなく少なかったりしたら、生産の計画ができません。

とんでもなく多い時は、残業続き。とんでもなく少ないときは、逆に作業者さんもやることがなくて、ずっとボーとしている、などというのは避けたいですよね。

いっぺんに大量の生産が入ってきて、自分たちだけでは処理出来ない。ということで、外注に出したりすれば、それもまた更なるコストです。しかも、量は予測のつかない増減を繰り返しますから、そうした外注先にも「予測のつかない」注文を出さざるをえません。

外注先も予測のつかない量に対応するため、「受注単価」を挙げて対応しようとするでしょう。

まさに悪循環

あるいは、種類の平準化もそうです。生産種類の予測が立たないと、過剰に在庫を持つようになります。ご存知のように、過剰な在庫は、「金食い虫」。場所も、お世話する人手も必要ですし、時間がたつと、最悪の場合、もう使えないというケースさえ出てきます。

種類の平準化に関しては、家庭の例を見てみましょう。お米を毎日食べるなら、それなりの消費量を見越して、定期的に買うことになりますね。

でもこれが、今種類の予測がつかないとしたら、どうでしょう? 今日からしばらくパスタ、次にはパン、そしてしばらくはナン・・・・、と思ったら突然お米がいい、とランダムな献立。

どの食材もある程度の在庫を、まんべんなく持っておかないといけない。予測がつかないと人は、「念のため」、多めに持っておこうと思い始めます。

しかも、賞味期限が切れる可能性もあるので、こまめに状態をチェックしないといけない。保存する棚も必要だし、それに付随する食材も買っておかないといけない。

突然の献立変更で、スーパーに走っても、コンスタントに買ってないので、品切れ。別のいろんなスーパーを走り回って手に入れますが、結局、時間も労力もコストも高くついてしまう。

平準化は、一日当たりの生産量をならし、種類もある程度、規則性を持たせることによって、生産・部材供給や管理をコントロールしようとする行為になります。

なぜ平準化が基盤になるのか

豊田通商さんのホームページから.

ここまで読むと、だいたい想像がつくかと思いますが、この平準化なくして、JIT(ジャストインタイム)というコンセプトは実現しません

JITは、後工程が「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」、部品や資材を、きちんと用意する、という仕組みづくりでした。

平準化とは、量と種類をならして、規則性を持たせること。つまり、生産計画をしっかり持って、当面の間(1か月~)、何をどのくらい作るのかのコントロールができるようにする、ということです。

何を、どのくらい作ればいいのかが見えれば、どの部品や資材を、いつまでに、どのくらいの量、買っておけばいいのかがわかります。

そして、例えば向こう1カ月間、何人の作業者さんが、(残業時間も含めて)どのくらい生産に携わればいいのかも分かります。人員の管理も容易になりますね。

部材供給のサプライヤーさんも、「予測のついた」種類と量を、用意して売ってくれることが可能です。安定供給を、少なくとも以前よりは、実現することができます。

能力を超えて外注、という先ほどの例でも、「このくらいの種類のものを、このくらいの量外注する」という計画が見えてきますので、安定した発注をかけられますね。

このように、計画が立てば、その計画に沿って「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」用意できるのです。

JITは、平準化あって初めて成立するものであることを、覚えておきましょう。もちろんTPSの要、「一個流し」もですね。

平準化導入にあたって、知っておきたい例

悪循環

平準化ができない最大の理由は、私の経験上、工程能力を考えない受注量と納期で、仕事が入ってきてしまうことにあることが、多いようです。

もちろん、売上あってビジネスですから、いっぱい生産量があって、いっぱい売り上げがあるというのはとても大事なことです。

例えば、無理な納期に間に合わせるため、作業者さんは、残業続きで働いて対応したとします。一過性のものなら何とでもなります。しかし、それがずーっと続くとしたら、どうでしょうか?

生産過負荷が続けば、結局のところ、どこかで納期変更をお願いしなくてはならない場面が出てきます。

新たに人を入れて対応しますか? 人の採用にもコストがかかりますし、安定した品質が出るようになるまでにも、一定の時間や訓練が必要になるでしょう。

こうして、不慣れな方から、フロアのリーダーさん、管理者さんまで総出で、何とか生産を回すようになると、おろそかになるのが「管理」です。

管理して、品質を確認し、問題があるようであれば直ちに手を打つ、といういわゆる「CAPDサイクル」は、全く機能しなくなります。そうです、当たり前ですが、忙しすぎる状況は、品質に影響が出るのです。

まして皆さん、いっぱいいっぱいで仕事されてますから、おのおのの作業における、品質に関する注意も、徐々に散漫になっていきます。

納期の入れ替えや、飛び越し調整は、部品の供給に影響を与えます。先ほども説明した「急に言われても、用意できないよ」状態ですね。また納期変更です。

こうなるとあとはもう、場当たり的に、都度発生する問題に対処していくことになります。

管理者は、問題解決に追われ、現場での対応などできなくなります。

おそらく不良品も、客先まで流れていっているのではないでしょうか。

そして、さらに悪いことに、こうしたキャパオーバーの状態を続けていると、生産量が減ったときに、「過去に改善した積み上げや、そのノウハウも、すでに失われてしまっている」ことに気づく点です。

怖いですね。

ですので、受注量・納期はできる限り、最大で±10%程度に収まるようにしなくてはいけません。

平準化の幅

「お客様だから、交渉なんて無理」という固定観念は捨てて、量や納期の相談をしていきましょう。

さもないと、結局のところ、納期や品質でお客様にご迷惑をかけることになります。あるいは、ビジネスが終わるということにだって、なりかねません。

平準化は、最上流(受注量・納期)のコントロールから始まります

まとめ

そんなわけで今回は、平準化に焦点を当ててみました。

平準化は、なかなかハードルが高いかもしれません。特に季節性の高い商品などを扱っている場合は、大きな受注量の増減が定期的にやってきますしね。

ただ、強いコスト体質を作るためには、かなり有効な手段です。

今は、トヨタの方が書かれた多くの本も出回っていますし、TPSを実際に牽引された、コンサルタントも存在します。

繰り返しになりますが、大事なことは、できないという「固定観念を捨て」、チャレンジすることです。

そして、社長さんや工場長さん、トップの皆さんが、どこまで強い覚悟をもって、活動を引っ張っていけるかにかかっています。

特に大事なのは、改善活動を始めて4~5年たってから。以前ほどの結果が、出てこなくなってきたときが、本当にトップの改善スピリットの真価を問われるときですよ。

頑張ってください!

今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。

では!

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