アイデアのつくり方 How to Create Ideas
皆さんは、職場でアイデアを捻り出さなくていけないことがよくありますか? 開発の方や宣伝の方だけではなく、お仕事をしている限りは、けっこういろいろな場面で新しいアイデアを求められたりしますよね。どうですか、得意ですか? 私 Kusunoko-CIは、苦手です。苦手なもんですから、今回は、「いいアイデアってどうやって出すんだろう」と勉強した結果を書いてみたいと思います。
アイデア 苦手
改善活動は、やっぱりアイデア勝負ですよね。問題に対してどういった解決策を出して実行していくのかはもちろん、プロジェクトの始め方だったり、今後のCI活動の方向性を考えていったりとアイデアが問われる機会は多々あります。私 Kusunoko-CI、問題点をトヨタの「なぜなぜ」を使って物事を深く掘り下げていくのは結構得意なのですが、横へ広げていくのが苦手なんです。これがですね、結構致命的なんですよ。この横への十分な広がりがないと、せっかく深く考えても可能性や潜在性という意味での、それこそ広がり・多様性がなくなってしまうため、最終的に出てきたアイデア群にごっそりとした抜け落ちが起きてしまったりするのです。

今回参考とした本は、津田久資さんという方の『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか 論理思考のシンプルな本質』です。津田久資さんはフレームワークをチェックリストとして捉えるという考え方で、この致命的“抜け”をいかに減らしていくかに焦点を当てております。そしてシンプルに、かつ物事の本質を掴もうということをおっしゃっています。たいへん深く、また実用性の高い内容です。
津田久資さん キャリア
東京大学法学部卒(!?)、博報堂、ボストンコンサルティンググループ(BCG)などを経て、現在はご自分の会社でコンサルティング業務を行ってらっしゃるということです。素晴らしい経歴ですね。このような方でも、時代を生き抜きキャリアを形成するために、本の内容のような努力を続けてこられたのだなーと思うと、私なんかよっぽど努力していかないといけないと思わされますね。
このような方ですら、いくつもの挫折や壁にぶち当たってきた経験があるということですが、本書でもいくつか紹介されています。ご自分のMBA取得の際のお話です。講義の課題として与えられた、しかしあまりにも少ない情報量を使っての討論クラス、事前の準備学習(情報収集)で用意してクラスに参加しますが、結果は惨憺たるもの。全く発言できない、津田さんの人生においても最もみじめな体験の一つであったと紹介されています。
ここで私が考えたのは、やはり人は失敗・挫折の経験というものを、必ずどこかの段階で経験しなくてはいけないのだな、ということです。もし、すべてが順風満帆で(あるいはそう見えて)まったく苦渋も味わわなかったとしたら、いわゆる「危機感」が芽生えてこないのでは、と。この危機感があるからこそ、ひとは変わろう・何とかしようと思っていくわけですね。私も数知れず失敗と挫折があり、「このままじゃいかん」ということで、こうした形のアウトプットを始めています。

ビジネスのフレームワークとチェックリスト
さて、この本の中では、先ほども述べましたように「フレームワークとチェックリスト」という考え方が紹介されとります。例えば本書でよく取り上げられるマーケティングの4P、3C分析やSWOTというのも思考のフレームワークですね。もちろんFish bone(特性要因)図なんかもそうだと思います。これらはすべて、「思考の漏れをいかになくすか」ということを少しでも向上させるためのいわばツールである。そして、漏れがない思考・あるいはカテゴリーの表出結果(要素)をもとに、それを基礎・フィールドとして解決策・新商品・課題を考えていこうということになると思います。ちなみに、このフレームワークを知っているということ自体は、今やさほど優位性をもたらしてはくれない、それはただの「高級ルーティンワーク」すぎないとも述べられております。なぜなら情報そのものは、すでにコモデティ化されてしまっているからです。肝要なのは、いかに自分だけのオリジナルのフレームワークを考えていけるかだと。それが「思考する人間」であり、すなわちこの情報が溢れかえった世界を生きぬくためのヒントであると津田さんはおっしゃっています。

ミーシー (MECE)
ミッシーとも呼ばれるこの手法が、この本の中ではメインのフレームワークとして紹介されています。BCGで開発されたこの考え方、英語では「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」と書きます。「ダブりなく漏れなく」という意味らしいですが、正直分かりづらいですね。
ちまたにこのフレームワークの使い方も随分情報があふれかえっていますが、使えるんでしょうか、あれを見て。Kusunoko-CI、全然わかりませんでした。具体的にどうやるのという感じで、情報読んでもイメージがわきません。その点この本では、MECE(正確にはMECEではなくロジックツリーであるかもしれませんが)を使っていかに、ダブりなく(いやあってもいい)漏れなく(こっちはないことが求められる)チェックリストを作り上げるかを、具体的な例を使って説明されております。

論理思考ステップ(MECE)
ここで本に書かれている内容を、Kusunoko-CIなりに考え、フローを構築してみました。
1.対象物の言語化・顕在化
津田さんおっしゃる通り、何事も定義が必要です。言葉を使いつくして、今我々が取り組むべき課題を本質の徹底した理解にまで落とし込みます。そして共通概念化させて議論をスタートさせる。いわゆる「結論仮説」の構築でもあると思います。
2.軸の選定
Kusunoko-CI 思いますに、ここはマインドマップかあるいはKJ法を使うのがいいかと。とにかく多くの「属性」をひり出す。そしてできる限り上流に位置する「軸」を見つけ出すかがキーではないでしょうか。ここが重要ですよね。この最上流の軸選定で、その後のツリーは大きく変わってしまいます。
3.ロジックツリー
そこからロジックツリーを始めていけば、けっこうこの「バカの壁」=凡人の色眼鏡を避けられるのではないか。もちろん完璧はないでしょうが。
ここでいう「バカの壁」は、いわゆる我々凡人が見落としてしまいがちな、物事の「軸」。そしてこの最上流での軸の見落としが、先ほども述べましたが、往々にして致命的なアイデアの欠落を生み出します(私よくやります)。
4.アイデア
MECE的に考えられた要素群はそのまま、チェックリストになります。これをフィールドとして、アイデア(解決策など)を作り上げれば、少なくとも「しまった! 他社(者)にしてやられた!」という状況は避けられるかもしれません。

こうしてできたチェックリストと、直感だけ(例えばマインドマップ)で作ったリストを比較して、ロジックツリーを使ったアイデア群のほうが大きな広がりを持っているならば、そのアクティビティは成功であったといえる、と述べられています。
個人的にはこのフロー、Leanの考え方にある「Broaden→Narrow down→Broaden→Narrow down・・・」のやり方によく似ているかなと思いました。広げて、フォーカス、広げて、フォーカスという考え方のサイクルです。
我々は、本書で述べられている三島由紀夫のような天才ではない。ただそれを嘆いていても一生その差は埋まらないわけで、なにか具体的に少しでもその差を埋める努力をしていかなくてはならない。私は、まずは巷にあふれるフレームワークを学んでいくことも大事かなと思います。使えるなら(ここ大事ですけど)、ツールはいっぱいあった方がいい。ただ、「思考のプロ」でありたいのならば、これを統合し、自分流にアレンジしたものを作らなければいけないのではと思います。私が改善でご一緒させていただいているコンサルの先生も、「買ってきた道具をそのまま使うんじゃない。みなさんはプロなんだ。プロは市販の器具装置を、自分たちで考え変化させ、調整して唯一無二のもの作っていかなくてはならん」とおっしゃっておられました。それはひとえに対象や作業への深い洞察と、熟練から導き出されるもの。モノは違えど、目指すところは同じなのかもしれませんね。

まとめ
さて今回は我々凡人がいかにアイデアの抜けや漏れを排除し、「限られた時間とResourceの中でベターなアイデアを出していけるか」というお話になりました。
私が最も感銘を受けたのは、こうした思考の精錬を、井上ひさしさんの言葉を借りて、「無限の無秩序連続体に言葉でもって切れ目を入れていく行為」と説明されていたところでした。言葉というものは侮れません。本当に「言霊」ですね。
そして私、実はこの本を読んだそばから、最上流の軸を忘れる大失態を犯してしまいまして、危うくProjectがとん挫してしまうところでした。危なかった。皆さんすみません。そしてリカバリありがとうございました。なんでもそうですが、学んだあとは実践しなくてはいけない。そこで知識が知恵となり、また知恵は他の知恵と結びついて、我々独自の、より高次のフレームワークを作っていけることでしょう。使って、練習して、がんばろう。Trail & Error!!