かんばん枚数の計算の仕方
皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
最近トヨタの「かんばん方式」について確認することが多くなってきたのですが、いろいろなサイトを見ても、ちょっとわかりづらい。
計算方式が書いてあるのですが、あんまりすっきりしていないというか、なんか難しいのですよね。
そこで今回は、一番シンプルだと思われるトヨタ生産方式の、かんばん枚数の計算方法を表してみたいと思います。
備忘録です。ちなみにかんばんの種類や、かんばんの回し方などは今回触れておりません。
かんばん枚数 計算の仕方
かんばん枚数計算の考え方は、以下のようになっています。
- 1枚の「かんばん」を振り出してから、それが欲しい部品と一緒に戻ってくる間に、どれだけその部品が必要になるかを把握(リードタイム:LT)
- その部品数が、かんばん何枚分に相当するかを算出する
です。
簡単ですよね。
1のほうは、要するに「A部品を作って、ください」というシグナル(これがかんばんの役割)を、部品をくれる部署(前工程)に送ってから、それが届くまでどのくらい時間がかかるのかをはっきりさせるということです。
そこがはっきりすれば、その間に自工程で必要なA部品数ももちろん計算できます。
さて、車関係の工場では一般的に「通い箱」で部品が運ばれてきます。
この通い箱一つに、何個の部品を入れて運ぶというのはあらかじめ決まっていて、その通い箱には1枚のかんばんがくっついています。
モノとかんばんは常に一緒です。
ですから、その通い箱一個に入ったA製品が何個必要か、つまり、通い箱で何個分必要かわかれば、その分のかんばん枚数を用意すればいいということになりますね。
数式で確認してみましょう。以下のようになります。
かんばん枚数 計算の仕方 具体例
文章で説明されてもよくわからないですよね。
具体的な例を見てみます。
今私たちの工程ではA部品が、1時間に10個必要です。これは1日に何個生産すればいいのかがわかっていれば、出てくる数字になります。
A部品は通い箱に5個入って運搬されているとしましょう。
またA部品を生産するのに必要なリードタイムが把握できていないといけませんね。
いまA部品生産には2時間かかることがわかっています。
そして運搬時間ですが、これは、A部品を運んでくるまでにかかる時間と、それを作るための材料調達の時間も入れなくてはいけないかもしれません。
いずれにせよ運搬に懸かってしまう時間、今回は運版全体で2時間かかるとしました。
それらをすべて式に突っ込みます。
そうすると分子が40で、5で割って8枚。
ここから、今かんばんは8枚必要ということが分かりました。
「部品が欲しいです」とかんばんを振り出してから、戻ってくるまでの時間が4時間。その間に必要なA部品の数が40個。それを容れ物(通い箱など)の入数で割る。
シンプルです。
ただこちらの状態では、出てくるのは非常にタイトな数字になっていますから、最初からこれを目指さない方がいいですね。
工程の安定がどのくらい安定して生産できるかを加味して安全在庫を少し足して計算するのがいいでしょう。
あんまりタイトにして、生産できないとなっては大変ですし。
最初は少し甘めに設定し、工程のカイゼンを進めながら徐々に枚数を減らすというのが定石です。
ただ、「お前ら安全在庫なんて言ってるうちは、絶対カイゼンできないと思え」という大先輩の耳の痛いお言葉もありますんで、覚悟とか危機感持って、迅速に工程カイゼンに努めないといけませんね。
かんばん 前提条件
ここで、かんばん運用に関しての前提条件を上げておきます。これらがないままかんばん方式を導入しても、うまくいきませんので、まずはここからです。
①繰り返し生産品であること
毎日生産することなく、たまにしか生産しない製品や1品生産ものには使えません。
②平準化されていること
製品の種類と生産量が平均化できているか。
かんばんは微調整の道具です。これで生産自体をコントロールしているわけでわけではないですし、そもそもできません。
全体としての生産数と種類(お客様の要求)を、今月はどういう順番と順序で、日当たり何個生産するのかという計画がなければいけません。
これが出ているからこそ、この工程で使う部品はこれこれで、1時間当たり何個必要ということが把握できるわけですしね。
③工程が安定していること
製品の不良率は低くなければなりません。
いつも止まっている、ばらつきが大きいというのも時間当たりの生産数があいまいですから、かんばんなんて使えません。
④「かんばん」は微調整として使うこと
先にも述べましたが、需要変動の大きな製品や生産方法には対応できません。そこは平準化という計画段階の話です(対応する特殊例もないことはないですが)。
一般にトヨタの平準化では、生産の振れ幅をプラスマイナス10%程度に抑え込む努力がなされています。
こうした生産の予測が立つからこそ、現場はカイゼンが行えるのであって、このことなしに現場にカイゼンを押し付けても成果は出ません。激流の中、遠泳しろと言っているようなものです。
⑤スーパーマーケットを設ける
スーパーマーケットとよばれる「ストア」を各工程の後に設けます。後工程はそこから、必要なものを必要な時に、必要な分だけ「引いて」行くことになります(ジャストインタイム:JIT、後工程引き取り生産)。
⑥荷姿、容器を設定し、収容数は小さくする
ラインは1個流しを出来る限り目指すこと、そして運搬の単位を小さくします。
結局のとことは、「流れ」で作ることを目指しているわけです。
工程がどうしても離れてしまっている、あるいはサプライヤーさんなどから仕入れているという状況では、すべてが流れている工程を作ることはできませんよね。
それをいかにして、「あたかも流れているかのように」生産するために考え出されたのが、かんばんです。
流れと共に、JITを実現する機能を果たしていますから、究極的には一個で流せることを目指すのは当然です。
また荷姿も、作業性・品質や積載効率に関わってきますね。「流れる」ためには、こうした部分の「ムダ」も排除していかなくてはいけませんね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、「かんばん枚数の計算の仕方」を説明してみました。
ネットにある説明は、どうやらサプライヤーさんなど他工場を想定し、かつすでに運搬の頻度(と時間)が決定されているときの式のようですね。
こちらでご紹介した式は、まずは自分たちの工程・工場で使える計算になってますんで、ここから部品供給の在り方や頻度、あるいはレイアウトまでいろいろ試行錯誤して、あなたの会社の生産方式を積み上げていってみてください。
こうやれば必ずうまくいくというセオリーは存在しないでしょう。
作っているもの、産業形態等々で状況は変わっていきます。そこを理解しカイゼン出来るのは、そこで働いて、オペレーションを理解している皆さんだけです。
ぜひコンセプトを吸収したのち、何度もトライして、全体最適のカイゼンを目指していただきたいと思います。
今日も読んでいただきましてありがとうございました。
ではまた!
かなり詳しいです。でも絵がなんとなくわかりづらいんだよなぁ。