もったいないを訳してはいけない! 英語で改善、もったいないと言いたいとき
Mottainai.
皆さん、今日も一日お疲れ様です。
英語で改善活動を指導していると、伝えたいことがうまく言えないことがあります。
私にとってその代表的な言葉が「もったいない」です。
確かに、英語で訳せる。でも何か違う気がしてならない。
そんなわけで今回は、「もったいないを訳してはいけない!」理由を考えてみました。
もったいない 意味
もったいない、とネットで検索して一番先に出てきたgoo辞書さん。
いつもお世話になります。
- 有用なのにそのままにしておいたり、むだにしてしまったりするのが惜しい。「捨てるのは―・い」「使わないでおくには―・い人物」
- 身に過ぎておそれ多い。かたじけない。「―・いおほめのお言葉」
- 不都合である。ふとどきである。もってのほかである。
3番みたいな意味もあるんですね。初めて知りました。少なくとも私は、人生の中で使っている場面に出くわしたことはありません。
今回は、1番の意味です。
まだ使える、価値があるにもかかわらず、それが活かされていない状態や、行かされない状態にしてしまうような行動や態度に対して使います。
このもったいないの類語ってどんなものがあるのか、
まだ使える ・ 捨てるにはまだ早い ・ まだ使いきっていない ・ 粗末にするな・(所持していてもその真価を発揮できないさまとして)宝の持ち腐れ
こんなのがWeblioさんで見つかりました。
価値があるのに活かされていない(ようにしようとしている)。
これがキーです。
もったいないの英語
で、これを英語にしますとWhat a waste=何という浪費だ!→「もったいない!」
What a waste; 日本語の「もったいない」の一言に最も近い表現の仕方になります。
日本語と同じように、決まり文句としてよく使われます。
とのこと(Hapa Eikaiwaさん)。
何かまだ価値があるものを捨てようとしていたり、価値に見合わない使い方や無駄遣いをしている、こういう場面では確かにあってますね。
ただ、これがなんか私的にはしっくりこないんですよ。
例えば改善活動のお話ししていて、私がこの「もったいない」が使う場面って、浪費にスポットが当っているとは必ずしも言えず。
例えば、
- すでに以前のワークショップで改善策が考えだされていて、ヨコテンも可能だ。
- なのに、チームリーダーさんは、ゼロから改善案を考えようとしている。
- 熱意も知識も経験もある人を指導しているわけですから、もっとこのリーダーさんのつけられる付加価値を最大化してあげたい
こんな場面で、あなたがやっていることはとてももったいないので、この過去の改善例を見てみませんか? とかいう場面での使い方なんですけれども。
何という浪費だの「もったいない」が、誰かの行動に対して責めている感があるとするならば、私の言いたい「もったいない」は、可能性価値(Opportunity value)の提案ないしは認識に焦点が当たっている。
これは人でもモノでも時間でも、対象は何でもいいんですけれども、それらが持つ真価に対するRespect(尊重)の気持ちから、「もったいない」という言葉を発したいのです。
つまり、最初に述べた価値があるのに活かされていないことを、その対象に対する尊重を示したうえで、更なる可能性をもたらしてあげたい。
なので、「浪費しないで」と、今のアクションを注意するような言い方を、私はしたくないんですね。
“Waste”の持つ響き
改善活動の場合に、Wasteという英単語を使って真っ先に思い浮かぶのが、「7つのムダ」(7 waste)です。
これ最近では、8つのムダと言われるようになっていまして、「活用されていない才能や能力」(Unused Talent)が付け加えられています。
この活用されていない才能・能力にしろ、職場で「活かしていないのは誰か」ということです。
上司ですね。
トヨタの改善の中で学んだのは、人間の可能性を見出し、伸ばしていくことが、人を育てるということ。それが上司の役目であると。これがトヨタの「人間尊重」です。
私は、改善インストラクターですので、別にチームの皆さんの上司でも何でもないですが、それでもそういう責任はあると思っています。
コーチングの在り方としても、いかに自分の可能性に気づいて伸びていってもらうかということが問われると思うんですね。
こういう考え方に立って、もう一度「What a waste=何という浪費だ」という言葉を見直してみると、そこにほら、何とも違和感がわいてくるのです。
人は自分自身では、自分のやっていることをそんなに客観的には見られません。
まして、初めて改善活動なんかにトライしようとしている中では、なおさらです。
なので、私たちがツールとか方向性とか、過去の事例なんかをお伝えして、お手伝いをする。
そのような作業の中で、「時間の無駄だから、このプロジェクトの事例を見て先に進めようよ」とは絶対言えないし、言いたくもない。
むしろ彼らが時間を浪費しそうになっているんだったら、それは指導する側の落ち度、つまり我々ですね。
そうした文脈の中では、訳があっているからと言って使えない、使ってはいけないのが、この「What a waste」になると私は感じています。
もったいないを言葉に
ということで、訳があっていても、必ずしも伝えたい意味が伝わるわけではない、というお話なのです。
じゃどうやってるの? と聞かれると。
「こういうケースだったら、以前こういうプロジェクトがあったよ。ちょっと見てみましょう。どうですか? 使えそうですよね? 「車輪を二度発明するな」という言葉もあります。使えるものは何でも使って、もっと先へ行く改善にしましょう。
日本語には「もったいない」って言葉があります(「もったいない」説明)。あなたの価値ある時間も「もったいない」、過去のチームの努力も「もったいない」ことになるので、何でも利用していきましょう。」
という感じに言ってます。
英語で言うとこんな感じです。
「In such a case, there was a project like this before. Let’s take a look.
How is it? It can be useful, right?
There is also the phrase “Do not re-invent the wheel.” Use whatever we can and make our Kaizen go even further.
In Japanese, there is a word “Mottainai” (「もったいない」説明). Your valuable time will be “Mottainai” and the past team’s efforts will be also ” Mottainai “, so let’s make the most of whatever available.」
まとめ
実はこの「もったいない」という日本語、知る人ぞ知る的な英語になってます。
この言葉を世界に広めたのは、ケニアの環境副大臣の後、2004年にノーベル平和賞を受賞した、ワンガリ・マータイさんという方。
マータイさんは、ノーベル賞を受賞した翌年に初めて日本を訪れ、「もったいない」の精神に感銘を受けたといいます。そして、環境を守るための国際言語「MOTTAINAI」を作り、世界中にこの概念を広める「MOTTAINAI キャンペーン」を始めたとのこと。
残念ながら、2011年に亡くなられています。
この最後のインタビュー、なかなか心に来ますので、貼っておきます。「もったいない」の意味がうまく説明されていると思います。
残念ながら辞書には載っていないので、Kaizenみたいに誰でもわかってはくれるものではないですが。
持論ですけれども、その単語が文化に根付いていればいるほど、一対一訳というのは難しくなっていきます。改善(カイゼン)や、これにまつわる言葉というのは、日本人の文化に関わっているところも多いです。
敢えて訳さず、意味や背景を説明する時間を惜しまない方が、結果的に深く理解してもらえる。そういうこともありますよ。
時間がもったいないと思わず、伝える努力をしてみてください!
今回も読んでいただきありがとうございました!
では。