課題解決に! マトリックス・データ解析法1(新QC7つ道具)

皆さんこんにちは! 今日もどこかでカイゼンサポート、Kusunoko-CIです。

さて以前にも何回か新QC7つ道具についてご説明いたしました。

言語データを取り扱う際に有効なのが、これらの新QC7つ道具でしたね。

今回は、その中で唯一数値データを扱う「マトリックス・データ解析法」に焦点を当ててみたいと思います。

今回の記事では、このツールの概要やカイゼン活動を行う際のヒントをお伝えしています。とりあえず、どんなものか知りたいという方は必見です。

マトリックス・データ解析法は主成分分析

生徒と各教科成績のマトリックス(『多変量解析がわかる』より改編)

このマトリックス・データ解析法、英語では「matrix data analysis」と訳されますが、英語での記事や説明は、ググってもほとんどヒットしません。

私もカイゼン活動に関わる人達とずいぶんお仕事してきましたが、英語でこの名称を口にしている人を見たことがない

それもそのはず、このマトリックス・データ解析法の手法はそもそも、多変量解析における「主成分分析」の事だからです。

主成分分析は「Principal component analysis:PCA」で、こちらは当然山のように情報がヒットしますね。

ではなぜ「主成分分析」と言わずに、敢えて「マトリックス・データ解析法」と呼ぶのかですが、いわゆるもう一つの新QC7つ道具「マトリックス図法」で整理したデータを使うことが多いからなんですね。

特にマトリックス(Matrix:行列)の数が多くなると、要素が多くなりすぎて、相互の関係性を理解することが難しくなります。その見通しを良くする(後述)方法が必要なために加えられたようです。

マトリックス(行列)でまとめたデータを解析する、「マトリックス・データ解析法」ということですね。

新QC7つ道具は「課題解決」

海外では、いわゆる我々になじみの深い「QC」という概念があまり浸透していません。なので当然そこで使われる、QC7つ道具などもあまりそれをメインで取り上げるということはしないです。

もちろんこうしたQCツールも使ってはいますが、それを何か特別なツールの「くくり」としては認識していないようですね。

特に「新QC」に関しては、この傾向が強いです。それ自体の認知度も低いのかもしれないと感じます。

1970年代に入って、QC活動が製造業以外のサービス業などに拡大していったときに、それに対応して新QC7つ道具がまとめられました。この「マトリックス・データ解析法=主成分分析」も、その一つとして組み込まれております。

従来の7つ道具が、「再発防止」のためとするなら、新7つ道具は自ら課題を発見し「より良い状態を目指す」ためのもの。

以前ご紹介した、方針管理の目標設定に仕方「Event type」と「Setting type」に似た考え方ですね。Gap Approachです。

新7つ道具はこのように、割と漠然とした状態からの課題抽出(いわゆる言語データ)を扱います。もちろん製造業などでも使える手法になります。

こうした新QC7つ道具の中で、唯一数値データを扱う統計的データ解析法が、 マトリックス・データ解析法です。

ただ残念ながらこのマトリックス・データ解析法(主成分分析)を、カイゼンの世界で使っている人を今まで見たことがないです。かなりレアです。

ネットの情報も、マーケティング絡みのものが大半ですしね。

単純に他のQC道具に比べて、ちょっと難しいのは否めないですし。

でも知っておくと、かなり便利なツールではあります。先ほども述べたいわゆる「課題解決型」のカイゼン活動では、かなり力を発揮する考え方です。

覚えておけば、あなたの優位性が高まること間違いなしです!

マトリックス・データ解析法(主成分分析)と見える化

Photo by Kiana Bosman on Unsplash

マトリックス・データ解析法(主成分分析)の考え方は、簡単に言うと「少なくして見えるようにしよう!」です。先ほど述べた「見通し」ですね。

皆さんもご経験があるかもしれませんが、物事に対処しなくてはならない時、単純に数が多いというのはそれだけでもう混乱のもとです。

例えば何か整理整頓しなくてはならない時、だいたい同じようなグループに分けてそれを表すラベルを張って管理するのではないでしょうか?

例えば「お薬」と貼った薬箱、あるいは「旅行」と名付けたPCのフォルダーをイメージしてください。

マトリックス・データ解析法はこのように、多くの変数に、ある種のまとまりを持った上位のカテゴリーを与えて図上(マトリックス)で見やすくし、その後の行動を決めようという統計的な手法になります。

このマトリックス・データ解析法(主成分分析)を説明するのに、よ―く使われるのが、上にも掲示しました「学生のテスト結果」の例です。

国語・英語・社会・理科・算数の点数から、「文系型・理系型」のような上位のカテゴリーを考えだして、A君は理系寄りだ、とかB君は学力も高くバランスの取れた子だ、などという推察を行うことは、割とイメージが付きやすいのではと思います。

考え方だけを取ってみると、以前ご紹介した「親和図」にも似ていますね。

「物がいっぱいあって見づらいから、整理整頓して作業しやすくしよう」というのは、カイゼンにおける「5S」や「見える化」の基本的な考え方です。

問題が見えるようになれば、人はアクションが取れるようになります。

マトリックス・データ解析法(主成分分析)は、このように、新たな指標(これを合成変量といいます)を作り出して、個々のデータを比較しやすく「見える化」する手法です。

テストの例に戻ると、みなさんも学生時代、単純な合計点で判断してきたことが多かったのではないでしょうか。

ですが言ってしまえば、個々の点数を合計することに何か特別な意味があるのでしょうか? 合計点は、国語や数学といった個別科目の成績情報も、関係性も埋没させてしまいます。つまり「見えない」のです。

主成分分析は、例えば合計といったあまり根拠のない合成変量ではなく、より合理的に比較する理屈を、見える形で与えてくれるものになります。

マトリックス・データ解析法 留意点

統計ソフト「Minitab」で出した主成分得点プロット

こちらのマトリックス・データ解析法も、エクセルのソルバー機能やMiniabのような統計ソフトを使えば、解析データを得ることは簡単です。

QC黎明期、PCなどがなかった頃は、多くの品質統計の手法が、現場で使うには難解すぎる机上の理論であったようです。この点我々は、本当にいい時代に生きていると言えますね。

ただ現在でも、出てきたデータを類推し、そこからカイゼンアクションのためのストーリーをひねり出すのは、我々人間=データ解析者です。

そしてやってみると分かるのですが、マトリックス・データ解析法、ここが一番難しい。

主成分分析の数学的な部分ももちろん、難解で、私も完全には理解できません。線形代数の知識などが必要です。

ただ先ほども述べた統計ソフトは、そういう部分を「えいやっ!」と片付けてくれます。

しかしながら便利なPCも、出てきた新たな判断軸たち(主成分といいます)を、どう理解していくのかまでは教えてくれません。

このためには、一般的な常識の上に、調べたい対象に対する深い造詣があることが望まれます。

ネット上の主成分分析の情報は、もちろん例ですから、数値もわかりやすく、とてもきれいな説明がなされていますが、現実はそんなに甘くないです。

「何じゃこりゃ?」とか、「この主成分はどう判断すればいいんだ?」なんてこともよくあります。ええ、ありますとも…。

ですので注意点としてまずは、変数の数が多いのに、それぞれのサンプルサイズが十分でない場合には、評価項目(変数)を減らしてやってみることも必要になってきます。この時、目安はサンプルが変数の3倍程度あるかどうかです。

そして何度か、こうした変数の「入れ替え」を行ってみることも必要になるでしょう。

手間はかかりますね。

なので解析者としては、当たり前ですがデータを正確に取ることを心がけ、上記のような点に気をつけながら手間を惜しまず解析に当たることが必要になります。

新QC7つ道具は「見える化」ツール

Photo by Wilhelm Gunkel on Unsplash

先ほどもお話ししましたが、見える化の最大の恩恵は、「問題が見えやすくなる」こと。

そして我々人間は、問題が見えれば解決策を考えることができます。

逆に言えば、問題を問題だと気づけないうちは、解決なんて絶対にできないということですね。当たり前だけど。

TPS(トヨタ生産方式)の生みの親の一人である大野耐一さんは、「問題を問題として見れないやつが、一番の問題だ」と言ったといいます。

なので問題というものは隠すものではなく、積極的に見つけに行って解決(カイゼン)し続ける。問題は「金の卵」。

そしてこうした継続的活動を繰り返すことで、どんどん現場や組織、もちろん個人が向上していくというのがカイゼン活動の在り方です。

ざーっと新QC7つ道具を思い浮かべてもらうとわかるのですが、すべてが図示していく方法が取られていますよね。チームみんなで分かり合えるよう意図されて、まとめられているツール群なのです。当然ですが、その後の「アクションが取りやすい」ように。

マトリックス・データ解析法も、「変数の集約」をし、物事を比較しやすくするわけですが、これだけでは当然なんの解決にもならないですよね。

VSMSwim laneなど、他のLeanツールもしかり、見えるようにしてから問題・課題点を見つけ出してアクションにつなげていくことが重要です。

これらの行動を起こすことで、物事をいい方向に変化させていく(カイゼン)という付加価値が付くことになります。

大事なのは正しい解析とアクションが、「対」になっていることなのですね。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は「課題解決に! マトリックス・データ解析法1 (新QC7つ道具)」と題しまして、こちらのツールの概要や、カイゼン活動に適用する際のヒントをまとめてみました。

今回は数学的なことには触れず、このデータ解析手法の歴史的背景や、目的・注意点などのご説明でしたね。

本文中でも述べましたが、残念ながら私個人は、カイゼンの世界で使われているのを見たことがないのです。シックスシグマでも、メインで取り上げることはしないですね。かなりレアです。

ですのでこのかわいそうな手法に、陽の目を当ててあげようと思いました。結構使えそうなツールだと、皆さんに思っていただけたら嬉しいのですが。

先にも述べましたが、マーケティングの世界や、最近では画像処理技術の分野でも効果を発揮しているこの手法。

皆さんもぜひマスターして、実務に活かしてほしいと思います。具体的な処理についてはまた機会を改めて説明したいと思います。

課題へのチャレンジも見える化から!

今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。

ではまた!

主成分分析を、かなり分かりやすく説明しています。

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