トヨタ A3の書き方 Proposal(提案) タイプ
皆さんこんにちは。今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
最近朝晩が、めっきり寒くなりました。南下してくる白鳥の鳴き声に、冬の到来を感じております。
さて以前、「トヨタ A3の書き方」と題しまして、改善における「A3」の在り方や、機能などをご紹介しました。
そこで今回からしばらく、このA3の具体的なタイプ別の書き方、書かれるべき情報についてご紹介してまいります。
まずは「Proposal A3」、いわゆる提案型から始めていきたいと思います。あなたの提案を、効果的に承認してもらうには!です。
提案型A3とは
こちら「提案型A3」というのは、何らかのアクション(企画やProject)の起点になるものですね。
何か現状問題点があって改善・改良したい、あるいは世の中の動きを鑑(かんが)みたときに、変えていく必要があるのではないか? というような意見がある時に使われるものです。
自分一人で働いているならいいですが、組織の中でアクションを起こすためには、それなりの準備が必要ですよね。
そこでこの「提案型A3」を書いて(描いて)、周りの賛同を得たり、上司の承認をもらったり、あるいは経理から予算の確約を取ったりするわけです。
その名の通り、何かを提案する際に使うA3になります。
提案型A3の書き方
さて早速「提案型A3」の中身(段落)ですが、これから説明するものが一般的です。
ちなみに大事なことなので先に書いておきますが、すべての段落において下記3つを常に意識してください。
- 文章をだらだら書かない
- むしろ文字よりも、写真・絵・グラフなどを使うこと
- 全ての情報は、本当に必要だ・絶対に外せない、というところまでしっかり取捨選択されている
それでは、各段落です。
背景(Background)
ここには、読む人が、状況を完全に理解するために必要な情報を書きいれます。
会社や組織が置かれている状況であったり、その製品やサービスを取り巻く環境の説明です。
もちろん社内で当たり前すぎることは書く必要はないですが、あなたがターゲットにした「読み手」に、前提として理解しておいてほしい「背景」はしっかり書いてください。
ここを前提にして全体の論が進みますので、ここが基盤として弱いと論全体が脆弱になります。
テーマを選んだ理由です。気合い入れて書きましょう(笑)。
現状把握(Current Situation)
ついで現状把握です。
そうした背景を踏まえたうえで、対象として選んだ事柄に、今何が起こっているのか説明する部分になります。
何かを変えたい、ないしは提案したいということは、目の前に何か「課題・問題」がぶら下がっているはずです。
顕在的であれ、潜在的であれ。
読み手が現在の状況を完全に把握できるよう、しっかり数字やグラフを使って「悪さ加減」を描き切りましょう。
1番の背景と相まって、論理の強力な「動機」になる部分です。
提案(Proposal)
ここが肝心の、あなたの「提案」です。
1、2の段落を読み進めてきたあなたの読者は、「変える」ことへの必要性をしっかり認識してくれているはずです。
あなたが描いている、その素晴らしいアイデアをここで説明します。
具体的には
- 何を変更、追加、削除しますか?
- どのような効果がありますか?
- そのアイデアは、根本原因に対処していますか?
- それは効率的ですか? コストとメリットの最適なバランスがとられていますか?
ということに留意しながら書きます。
夢のように素晴らしいアイデアも、「現実的」なものでなければいけません。
投資が必要ならなおさらです。
シビアに計算して、かつ最大限魅力的に描きましょう。
実行計画(Implementation Plan)
そして次が、実行計画です。
どんなに画期的なアイデアも、具体的な行動計画がなければ、まず実現しません。
あなたの提案を形にするために、
- どのようなアクション、それに付随するサブアクションが取られますか?
- それらは、どこで、いつ実行されますか?
- タスクの責任者は誰ですか?
- 関連部署は具体的になっていますか?
何を、どのように、誰が、誰といつまで、というアクションプランを書きます。
これは、他者の説得のためだけでなく、あなたやチームの皆さんが物事を実現するのためにもとても重要です。
ただあまり細かくする必要はありません。内向けの詳細な実行計画は、別途ガントチャートなど作って管理するのがいいでしょう。
細かすぎると、A3は見づらくなります。
確認とフォローアップ(Follow-up)
最後は進捗の確認や、その計測に関して項目です
具体的には
- 計画の成功を、どのように測定しますか? (Metric 測定基準)
- 計画を測定するために、どのような事実を使用しますか?
の2点です。
実際に提案がProjectになったのであれば、その進捗を管理し、是が非でも成功に導かなくてはなりませんよね。
何をもって成功というのか、具体的な数字を出しましょう。
売上ですか? コンバージョンですか? 歩留まりですか? 残業時間ですか?
目的を最も的確に表すものを選択しましょう。
KPIですね。
論理の流れを推敲する
以前も何度かお話ししましたが、「人は書いているときだけ考えている」とも言われています。
漠然と「ああしたいな」、「こうしたらよくなるのでは」というの気持ちやアイデアは、誰しも心にあるでしょう。ただこれを、実際に文書に書き起こしてみると、論理的にまとめることがなかなか難しいことに気づくはずです。
逆説的ですが、だからこそ書くのです。
そうすることで、自分の頭の中だけでぼんやりしていたものが、はっきりと形になっていきます。
当然、最初はうまくまとめられないと思いますし、独りよがりであったり、論理の飛躍が多々指摘されるのではと思います。
それを楽しんでください。
間違っても、「A3 1枚書いたから完璧」などと思わないことです。
こちらA3というのは、以前もご紹介しましたが、コミュニケーションやコーチングのツールであり仕組みです。
このフィードバックからの書き直しの中に、その真髄が隠されているといっても過言ではありません。
とにかく上司の承認が得られるまで、あるいはチームで書くならコンセンサスが得られるまで何度でも書き直してみてください。
私も数え切れないほどのA3を書いて、ずいぶん育ててもらったなという思いがあります。慣れてくると純粋に楽しいですしね。
まとめ
というわけで今回は、「トヨタ A3の書き方 Proposal タイプ」の具体的なご紹介でした。
私もサウジトヨタ時代には、本当によく書きました。
最初はエクセルで書いていましたが、今ではパワポが主流です。
ここに書かれている内容・段落は、一般的な項目にしぼりました。状況によっては、項目が足されたりすることもありましたね。皆さんの状況に合わせて、アレンジしてみてください。
大事なことなのでもう一度書きますが、情報は厳密に取捨選択したものであるよう心がけてください。
以前、私が実際に体験したProject A3の話です。
その書き手の方は、とてもいいアイデア(提案)があったのですが、彼はそのA3に大量のグラフやデータを書きいれてしまいました。おそらくすべての過程の。
きっとがんばったことを、えらい人に理解してほしかったのでしょうね。
それを役員の所に持って行ったのが私だったのですが、そのA3は残念ながら、ちらっと見られただけで読まれることはなく、当然アイデアも不採用となってしまいました。
他のA3達がきちんと読まれ、何件かは次の段階へと進んでいったのに比べると、対照的ですね。
えらい人は忙しいものです。本当に要点だけを絞って、聞かせてほしいのだと思います。
「過ぎたるは、なお及ばざるがごとし」。載せるべき情報の精査、忘れないでくださいね。情報の5Sと、見える化にも通じるものがある逸話でした。
今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。
ではまた!