トヨタ A3の書き方 ステータスの更新
皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
以前2回にわたり、トヨタA3の書き方「Proposal(提案) タイプ」と「課題解決タイプ」をご紹介しました。
今回は、その3回目、ステータスの更新用(目標に対する進捗状況)の書き方のご紹介です。
Projectやらタスクに関して、周りの人たちに、その進捗を報告しなければならないような時も、紙一枚でまとめてしまうA3の書き方です。
効果的な報告にするためのフレームワークなっていますので、ぜひマスターして、周りをうならせる発表にしましょう!
ステータスの更新用にもA3
そもそもなぜ紙一枚で報告するのか、という疑問はあるかもしれません。
これに対しては以前もご説明しましたが、「より簡潔に、より分かりやすく」を追求した形ととらえればよいでしょう。
考えてもみてください。
選び抜かれた情報(のみ)が、効果的な絵やグラフと共に書き表されていれば、どれだけ分かりやすく、意思決定の時間も早くなるか。
長々と、何が論点かわからない割には、大事なことが伝わっていないような報告書は、致命的にビジネスのフットワークを悪くしてしまいますね。
パワポのような便利なツールで、進捗発表するのもいいでしょう。
私もパワポは大好き。
でもこうした限られたスペース(A3)の中に、凝縮されたエッセンスをいかに効果的につめ込むかの試行錯誤は、考え方や情報(思考)の5Sという観点からも本当にいい練習になります。
論点を絞り、正確に伝わるものを。
これも情報におけるJIT(ジャスト・イン・タイム)といえるのではと思っています。
「A3、1枚しか書けないなら何を載せるか」。
エッセンシャル思考でもありますね。
背景(Background)
まずはいつもの「背景」から。
こちらは、4タイプある全てのA3に共通して、まず真っ先に書かれるべきものです。
- 読者が完全な状況を理解するために必要な情報
- テーマを選んだ理由
の項になります。
このテーマが選ばれたことに対する、正当性を与えてくれる情報群。
しかしこの場合は、既存のProjectやタスクに関する進捗状況のアップデートになるわけですから、大きな概念としての背景に加えて、「前回の報告から何が変わったのか」を書き記すのがポイントです。
言うまでもないことですが、前回から何も変化がないのであれば、こんなA3は書く必要もないわけですからね。
大きな状況の何が変わり、そのProjectのどの部分に変化・進行が見られるのか。
あるいは、前回の報告の中で決定したアクションが何であったのかを、ここで踏まえておく。
そうすると、報告を受ける側も、すんなりとその後の「中身」に入ってきてくれるはずです。
目的(Objective)
途中経過の進捗であれ、一定の成果を収めてのクロージングであれ、残念ながら周りの人たちは、あなたの行っているProjectやタスクを、あんまり覚えていないでしょう(笑)
もちろん報告を聞きたいのですから、全く覚えていないわけではないですが、細かな点まで把握できているのは、多分当事者であるあなた達だけです。
そこでこの項で、
- 戦略または方針の重要なポイントは何であったか
- 目標は何なのか (改善Projectであれば、増加させるのか、減少・排除のどれなのか)
- 定量化可能な測定値(KPI)
を提示しておきます。
議論が進んでから、「何だったっけ?」という要らない手間を省くことも可能です。
あるいは、そもそも勘違いして的外れなことを言い出す人を、けん制することもできますね。
もちろん皆さんが、上記内容すべてをきちんと把握しているなら、報告の段では軽く触れる程度にしておいていいと思います。
アクション(Implementation)
ここは、どんなアクションが取られたか、です。前回の報告機会から、今回までの間に何をしたのでしょう?
- どんなアクションをとりましたか?(活動の説明)
- 何が達成されましたか?
- それはどのように機能していますか(評価)?
のような点にしっかり注目してください。
報告する機会を得ているわけですから、チームの皆さんで、何かを成し遂げたはずですよね?
何のために、どのような行動をとり、何が前回から変わっているのかなどをしっかり書いてください。
アクションとプロセスを書くことも重要ですが、その評価のポイントも忘れずに。
成果が出ていても、ネガティブな側面があるかも知れません。
結果として目標としているところは達成している(した)けれども、引き続き留意すべき点などはないですか?
例えば、目標としていたリードタイムは達成したが、コストの面で予想外の結果が出て折るなど。副作用がないとも言い切れませんよね?
プロセスに注意してください。そして多面的に状況を確認することを忘れずに。
この辺、シックスシグマの「測定基準」のところのお話とも絡んでくる内容ですね。
効果(Total Effect)
ここは現状、どんな成果を上げたのかの報告。レポートのメインになる部分です。
- コスト削減に関する分析
- グラフを使用して、アクションの有効性とどのように監視されたのか方法を明記
目標と、現在達成できたものを書きいれます。
視覚化できますか?
グラフはとても有効に働きます。
繰り返しになりますが、こうした限られた量の情報しか載せられないA3のようなフォーマットでは「どう見せるか」が、普通のパワポ以上に問われます。
その記述は
- 分かりやすいですか?
- みなさんの達成具合を、十分印象付けるものになっていますか?
- みなさんの努力や、これまでの推移が示されていますか?
残念ながら、思うような達成度合いが得られていなかったとしても、「見せ方」によって受ける印象は変わります。
全てにおいて、不必要に馬鹿正直である必要はありません。
ねつ造さえしていなければ、見え方の工夫で、「もう少し感」を演出できるかもしれませんよ。
「上手に見せる」、ということをいつも念頭においてください。
未解決ポイント・今後のアクション(Unresolved Problems/Future Action)
そして最後が、フォローアップを含む、「今後の指針」を示すコーナー。
- 将来のPDCAサイクルに、含める必要のある項目を一覧表示する
- 将来の改善のための、変更点やアイデアを一覧表示する
達成しているのであれ、「もう少しで」未達だったのであれ、今後のアクションは示されなければいけません。
改善活動には終わりがなく、それゆえトヨタでは、カタカナで「カイゼン」と描くことで継続性を示唆しています(カイゼン=継続的改善活動)。
今回のPDCAは、ここまで。
では次に何をしていくのでしょうか?
例えばこれが、何かしら改善のProjectや、タスクの現状報告A3であったとします。
ここに書かれるものが
- SOP(Standard operational procedure=標準作業手順書)を作ります、あるいはアプデします
- トレーニングと、周知徹底に努めます
しか思いつかないとしたらそれは、「この改善活動は、定着しません」と明言しているようなものです。
持論ですが、改善は、具体的なアクションよりも、「定着」に関する部分の方が、何倍も難しい。
未解決な部分があるなら、もちろんそれを書いて、Commitmentを明確にしましょう。
今後のアクションも「目標を確実に達成するために、具体的に何をするのか」が書かれていなければ、何も書かれていないのとほぼ同義です。
えてして軽んじてしまいがちな部分ですが、ここに十分知恵を絞っているならば、現状未達であることなど些細なことに過ぎないかもしれません。
ここに力を入れると、この発表報告は、かなり差異化されていきますよ。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 今回は「ステータスの更新、目標に対する進捗状況」タイプのA3書き方でした。
状況報告とか、たしかにめんどくさいですよね。
とはいえそれも「成果を発表できる場」ととらえるならば、最大限利用しない手はないです。
みなさんや、チームのがんばりを効果的に伝えてください。そのための考え方のフレームワークになっているのがこのA3の書き方になりますので。
くれぐれも、「ある情報をすべてつっこんだ」A3にならないように。情報の取捨選択はしっかりと行ってください。それがA3を書くこのとの意義でもありますからね。
ということで、今日も読んでいただきましてありがとうござました。
皆さんの取った行動や成果、存分に伝えてください。
ではまた!