課題設定型TBPを具体例とともに

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皆さんこんにちは! 今日もどこかでカイゼンサポート、Kusunoko-CIです。

以前TBP(トヨタ・ビジネス・プラクティス)という、トヨタの問題解決手法をご紹介しました。

こちらQCの問題解決ストーリーとよく似ていますが、ところどころ異なった考え方で運用されております。

そこで今回は、新たな課題を見つけてチャレンジしていく「課題設定型」のTBPストーリーを、具体的な例を交えながら考察してみたいと思います。

問題解決も課題解決も、どちらもTBPでやってしまうわけですが、とはいえ、取り組んでいる「問題」の質が違います。若干考え方を変える必要は出てくるはずで、そこ辺QCストーリーを参照しながら、確認してみたいと思います。

ちなみにQC検定を受けたくて、QCの課題解決型ストーリーを学びたいという人は、この記事を参考にするとおそらく点数を失いかねませんので、あしからずご了承ください。

課題解決QCストーリーとTBP

一般に言われている課題解決QCストーリーの形は以下のようなステップです。

  1. テーマ選定
  2. ターゲットエリア(方向性を絞る)
  3. ターゲットを設定する
  4. 成功までのシナリオを描く
  5. 具体的な施策を立案(計画)
  6. 実施
  7. 標準化・管理の定着
  8. 反省・今後の活動

で、TBPで行う順番は以下のような感じです。

1.問題を明らかにする

2.問題点を洗いだす

3.ターゲットを設定する

4.真因を見つける(問題解決型)→成功へのシナリオを描く(課題解決型)

5.改善策を考える

6.改善策を実行に移す

7.結果とプロセスの両方を検証する

8.標準化しヨコテンする

ただ4番は、QCと同様、まだ見ぬことへのチャレンジですから「真因」を考えるというのは少しおかしい。

そこで、QC同様「成功へのシナリオを描く」ところと読み換えてみました。

また、特に7番8番のステップがQCとTBPでは違うことに気づかれたかと思います。この辺問題に対する取り組み方・考え方の違いが表れていて興味深いですね。後述します。

TBPで「課題」に取り組む

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ではさっそく、TBPの課題解決手順を見ていきましょう。

1 問題を明らかにする(テーマ選定)

まずは現状取り組むべき課題を選びます。今組織がより良くなるために、取り組まなければならない課題は何でしょうか。

  • もっと売り上げを上げたい
  • 認知度が低く、これを改善したい
  • ブランドイメージを上げたい
  • 環境(技術・法令など)変化に先んじて、適応のための改革を行いたい

理想としては、方針管理でもってその会社や組織の進むべき道筋がすでに示されているのが望ましいですね。

組織の長期的な方向性に沿うものをテーマとして選定することになります。

課題がまだ漠然としていて大きすぎるのなら、どこに焦点を当てるのか、親和図法などでブレインストーミングしてみてもよいでしょう

今回は例として、お客様からの会社や商品の認知度が低いということが、テーマとして挙げられたとします。

2 問題点を洗いだす(ターゲットエリア)

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進むべき方向性が明らかになったら、ターゲットエリアを明確にしていきます。

先ほど「認知度が低い」ことが課題だとなっていました。

マーケティングに力を入れたい。広告媒体など、今あるものが果たして効果的に活用できているのか、現状弱いところでテコ入れが必要なのは何なのかを考えていきます。

パレートや、マトリックス図で重点を探ってみましょう。

今回は、ウェブページがその役目をきちんと果たせていないという課題が浮き彫りになってきたとしましょう。

ターゲットエリアが明確になったら、今度は現状把握です。今回のケースではお客様の声を集めてみました。

お客様は、現在のウェブページにどのような不満を感じているか。また部内でも実際にウェブページを訪れ、見た目や、操作性、検索性から注文までの流れを試してみました。

それによって新しいウェブページの総合的なあるべき姿が見えてきました。両者間にあるGapが、今回の課題ということになります(Gap approach)。

3 ターゲット設定

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「何を、どのくらい、いつまで」というターゲットを決め、具体的に取るべきアクションを決定します。

また全体的な活動計画を作成するのもこの段階です。

今回のウェブページ作成であれば、企業の持っているイメージや、取り扱っている製品・サービス、ターゲット層へのアピールの仕方など様々な面を考慮に入れたデザインでなくてはいけません。

系統図法・親和図法などでブレインストーミングです。

また肝心の機能の部分も、現状把握で出てきた課題点をきちんと解決出来るものになっているかがポイントになります。以前ご紹介したCTQ(Quality to Quality;クリティカル トゥ クオリティー)というフレームワークが役に立ちます。

今回は、「202x年の12月までに、会社のウェブページデザインをより使いやすいものに刷新する」というターゲットを決めたとしましょう。

全体活動計画作成します。

  • 新しいウェブページのデザインや機能を明確化
  • ベンチマーキング
  • コスト計算と予算承認
  • 業者選定
  • 企画・設計とすり合わせ
  • 制作・実装と進捗確認
  • 公開・運用
  • 分析・改善

ざっくり以上のような段階を経ることになりました。

 

4 成功へのシナリオを描く

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ここでは、効果的に改善策を実現させるための道筋を明らかにします。

出発点から目的地に着くまでには、様々なルートが考えられますね。まずはPDPC法で最も楽観的なルートを描いてみます。そして問題が直面した際に、どう対応するのかを考えておくといいでしょう。

ブレインストーミングで、抜け・漏れなく可能性を出来る限り網羅します。系統図法で課題達成の手段を深堀してみるのもお勧めです。

複数の選択肢があるならば、マトリックス図で比較してみましょう。選択肢の評価指標としては、一般的に実現性・効果・期間・コスト・リスクが挙げられます。

皆さんで納得して行動するため、チーム全員で評価付けをしてみます。

リスクについてですが、関係各所に与える影響や、安全面・環境面も考慮しなくてはいけませんね。

基本的にSetting typeの課題解決は、今までやったことがない新しいチャレンジのはずです。このリスク評価は慎重に実施し、上長への報連相も忘れずに。これは後々結構効いてきます。

ウェブページの例で言えば、依頼する会社の良し悪しなどのほかに、実行時に不測の事態が発生したときにどう対処するのかを考えておくと良いですね。

5 改善策を考える

具体案を細かくステップごとに書き出していきます。

ガントやアクションプランを作ってProject管理です。

ステップ3の「クリティカル トゥ クオリティー」で、お客様が求めることを深堀した結果、会社として取るべき具体的なアクションが見えてきています。

それぞれのアクションは、より詳細な行動に分解されていくはずです。

成功へのシナリオステップのPDPCで考えた対応なども見越して、余裕のあるスケジュールにしましょう。

誰が、何を、いつまでにやるのか、進捗を測るKPIは何なのかを明確にします。

当然この後の実行段階に入ってからは、これをもとに定期的な会議を持ち、進捗をしっかり確認してください。

6 改善策を実行に移す

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いよいよアクションアイテムの実行です。

ここまでの準備がしっかり出来ていれば、実行はかなりスムーズなはずです。

先ほども述べましたが、走り出してからきちんとチームで進捗をモニターすることです。遅れが出ていたり、問題が発生しているのなら、PDPCに沿う形で解決策を検討・実行します。

予想しなかった問題が発生するかもしれませんが、そのような時もいわゆる問題解決手法にのっとって真因を洗い出し、改善策を打ちます

ウェブページの作成で言えば、社外の作業が発生するでしょう。こうした部分はチームの手の届かない部分になってしまいますが、だからこそ業者選定の段階で、評価をきちんと行っておくことです。評価基準の「リスク」ですね。

そうすることで、実行時にムダな労力や時間・コストがかかることを避けることができます。

7 結果とプロセスの両方を検証する

さて、すでにウェブページの公開・運用もなされたことでしょう。

ここは活動の取り組みによる成果を確認するステップです。

対策をやりっぱなしで、なんとなく効果が出たと感じて活動を終了させるのではなく、しっかりとメンバー全員で、振り返ることが必要です。

うまくいったものでも必ず、ネガティブな面はなかったのかの確認をしましょう。最初に設定した、会社や部署の目標や方向性と照らし合わせてみて、いかがでしたか?

  • お客さん(後工程)の視点から見ていかがでしょう?
  • 自分自身の成長に関して、いいProjectになっていましたか?

うまくいったにせよ、行かなかったにせよ、その検証はとても重要です。

トヨタの問題解決手法は、一般的なQCストーリーとは異なり、標準化・ヨコテンの前にこの「結果とプロセスの両方を検証」をするステップが来ています。

標準化する前に結果とプロセスをきちんと確認して、つまり反省も含めて標準化・ヨコテンしようという考え方になっているのですね。

失敗部分も含めての知識共有が、トヨタの強みの源泉になっているのかもしれません。

8 標準化しヨコテンする

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活動で実施した対策の効果を維持継続するための重要なステップです。

標準化では、作業標準書・周知・教育・ルールなど、管理の定着については、指標やその頻度をどのように監視するかを5W1Hでまとめていきます。

ウェブページの場合で言えば、公開するのがゴールではなく、公開してからが本当のスタートですよね。社内でも運用チームを設けて、アクセス解析・分析していくことが、効果的な更新・運用につながります。

まとめ

Event type と Setting type

いかがでしたでしょうか?

今回は「課題設定型TBPを具体例とともに」と題しまして、TBP(トヨタ ビズネス プラクティス)の課題解決型を確認してみました。

以前も似たようなお話をしましたが、問題解決のQCは「再発防止」のため、課題解決のQCストーリーは、自ら課題を発見し「より良い状態を目指す」ためのものと言えます。

問題(課題)がないのであればそれを作り出す、つまり現状のあるべき姿にGapを設けて更なる高みを目指すのが、企業活動のあるべき姿ということですね。まさに方針管理で目指すべきところです。

問題解決のステップ4 「真因発見」が、問題発生原因を探るために下へ下へと掘り下げていくものであるならば、課題解決のステップ4は、現状からあるべき姿の間の道筋を丁寧に明らかにしていく、上に向かうための作業になります。

「Why」ではなく「How」を突き詰める形と言えますでしょうか? 系統図法は、よく見てみるとなぜなぜ方式にもよく似ていて、問題解決も課題解決も、やるべきことのコンセプトに大きな差はないことが理解できるのではないかと思います。

生き残りのためには、こうした新たなことへの挑戦が不可欠です。ぜひこの課題解決型のTBPをマスターして、業界ナンバー1企業を目指してください。

今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。

ではまた!

誰でも同じ結果が出せるというのが標準化の意義ですね。

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