ジョン・コッター チェンジマネジメント の8段階に見る改善導入
The 8-Step Process for Leading Change
どうも皆さんこんにちは! 今日もどこかでKaizenサポートKusunoko-CIです。
以前、「どこでも、何かを変えていくことに対しては、苦労している」というお話をしました。Change management という方法論で、こうした変化への抵抗を少なくしていこう、という考え方でしたね。その時は、「ADKARモデル」をご紹介しました。
「改善活動を取り入れたい」、と思っているということは、多くの場合ですでに「なんとかしないといかん」、という状況にあるからではないかと思います。
なんとかしないといけない。ただ効果的にやらないと、気持ちばかりが空回りして、改善や変革がついてこないということも、よくあります。
そこで今回は、「ジョン・コッター Change management の8段階に見る改善導入」です。
この記事で、組織への改善導入のプロセスを、学んでしまいましょう!
ジョン・コッターのChange management の8ステップとは?
まずは、ジョン・コッターさんという方のご紹介ですが、
マサチューセッツ工科大(MIT)とハーバード大を卒業した後、1972年からハーバード・ビジネス・スクールで教鞭を執りました。33歳の若さで正教授に就任。当時、最年少の教授就任となり、その栄誉を讃えられた人物です。コッターの研究テーマは「リーダーシップと変革」です。(ジョン・コッターの「変革の8段階プロセス」)
コッターさんの100社を超える、企業変革の事例研究。そのノウハウから生み出された、「変革の8段階プロセス」が以下のようになります。
改善導入のケースと、併せて見ていきましょう。
1. 危機意識をもつ(Establishing a Sense of Urgency)
危機意識を高め、問題や機会に関して、「何とかしなければ」という話し合いが始まるようにします。
変革を最初からつまずかせる、「不満や不安、怒り」を抑えなくてはなりません。
改善活動で言えば、「なぜその改善をしなくてはいけないのか」という、根本的な意識が、組織に芽生えているか、とういう部分ですね。
俗にいう、従業員も「経営者のマインドを持つ」、ということになります。
2. 変革を推進するチームを編成する(Creating the Guiding Coalition)
変革を主導できる、適正と権限を備えた人材を集める段階。互いが信頼しあい、結束して行動できるようにします。
チーム結成です。
これは、「改善活動推進室」を設ける感じですね。
改善活動を進めていくために、トレーニングやワークショップを開催したり、事例展開(ヨコテン)を推奨したりと、改善に関わる様々な活動をサポートしていく部署です。
大事なことは、経営層の後ろ盾がきちんとあること、そして「推進室」の役割や活動内容が、しっかり定義されていることになります。
3. 変革のためのビジョンと戦略を立てる(Develop the Change Vision and Strategy)
計画の立案や、予算の策定を促します。変革を主導できる「わくわくするビジョン」を掲げるとよいでしょう。
大胆なビジョンを実現するため、変革推進チームが、大胆な戦略を描けるようにします。
具体的には、改善を進めていってどうなりたいのか、まずは「あるべき姿」を描くことです。
そしてそこに到達するのに、何年位かけるつもりなのか。「カイゼンロードマップ」があるといいでしょう。
そういう大きなVisionから、年単位・月単位でやれること、やるべきことを計画していきます。
4. ビジョンを周知徹底する(Communicate for Understanding and Buy In)
変革によって何を目指すのか、明確で確信が持て、しかも心に響くメッセージを伝えます。心の底から支持されるようにすれば、それが行動に反映されていきます。
言葉で示し、行動で示し、新しい情報技術を活用するなどして、コミュニケーションのチャネルを整理し、混乱や不信感を取り除くことが大事です。
こういうコミュニケーションは、とても重要です。
一般的に言って、会社の偉い人たちが思い描くものは、そのままではまず100%現場まで届いていません。
様々なコミュニケーションの方法で、理解される努力を怠らないことです。
その一部を担うのが、改善の要「方針管理」になります。
5. 自発的な行動を促す(Empower the Others to Act)
ビジョンや戦略に、賛同する人たちの障害になっているものを、取り除きましょう。組織の障害とともに、心の障害が取り除かれれば、行動が変化していきます。
改善を妨げる心理的・物理的障害は、もちろんないほうがいい
そして、ここでも大切なのは、「人の心」です。
やりたいと思えば、人はやります。
ではどうしたら、その「やりたい思い」を芽生えさせることができるのか。これもまた「コミュニケーション」が、そしてリーダーシップが問われてきます。
6. 短期間で成果を上げる(Create short term win)
短期間で成果を上げて、皮肉や悲観論、懐疑的見方を封じ込めましょう。
これで変革に勢いがつきます。とりわけ目に見える成果、明確で、心に訴える結果を生むように心がけます。
まずはやる気になっている人たちにと、改善Projectをやってみてください。成果が出そうなところを選ぶのがいいでしょう。
まずは、成功する喜びを感じさせるのです。
そして、褒めましょう。なんか楽しそうにしていることには、人は興味を示していきます。
「天の岩戸」の神話みたいな感じですかね。
7. 間を空けずさらに変革を進めていく(Never Letting Up)
ビジョンが実現するまで、変革の波を次々と起こします。
危機意識の低下を、容認してはいけません。人の心など、変革の難しい部分を避けず、不要な仕事を削り、変革の途上で燃え尽きるのを防ぎます。
間髪入れず、勢いで推す、というのも大事です。
「こういうことが恒常的に続くのだ」というメッセージにもなります。
改善イベントや、ワークショップをたて続けに起こして、行動する機会を増やしましょう。動けば動くほど、人はフットワークが軽くなる生き物ですからね!
8. 変革を根付かせる(Incorporating Changes into the Culture)
行動を企業文化に根付かせることによって、伝統の力で過去に引き戻されるのを防ぎ、新たなやり方を続けていきます。
研修や昇進人事、感情の力を利用して、集団の規範や価値観を強化します。
改善活動を文化のレベル(カイゼン=継続的なもの)にまで昇華させるには、時間と仕組みが必要です。
- 改善マインドと、スキルのある人を育てましょう。
- 全員が、改善に参画できる仕組みを作りましょう。
- 成果が、昇給・昇進などにつながることも大事です。
そしてステップ3で決めた、「カイゼンロードマップ」に沿いつつ、時間をかけて、しっかり定着させていきましょう。
そもそも変革のための「チェンジマネジメント」とは?
そもそもChange Management (チェンジマネジメント)とは。
私もこれを会社の研修で学んだ時、当初はその必要性があまり感じられずに、疑問を持ったことを記憶しています。日本ではまだあまり知られていない、マネジメントの手法と考え方です。
Change Managementは、個人やチーム、組織、社会を「現在の状態から、望ましい将来の状態へと、変革させる際に必要となる手法」です。
主に人間の心=「変革に対する抵抗感や、その取扱い」について述べた方法論になります。
特にビジネスの場では、大規模な業務改革といった新しい変化に、社員さんが対応しやすくするため用いられます。
組織は常に、新たなビジネスプロセスや、技術革新を導入しなくてはならない。生き残りのためには当然です。
「カイゼン活動」もその一つ。
しかし多くの人は、急速に環境が変化することを好まないため、何らかの改革を推進しようとすると、必ず抵抗が生じます。
正しく変革を成功させるには、それに関わる全ての人々の、参加と関与が必要となります。さらには、ただ変革するだけではなく、変革を定着させることがもっとも重要となってきます。
Change Managementは、そのような「変革の人的側面を扱う枠組み」を提供する考え方です。
私はこちらPROSCI社の提唱する、「ADKAR (アダカー)モデル」というものをメインに学びました。
コッターさんの変革8ステップ推進時にも、この「ADKAR」も踏まえつつ、「人の心を取り扱う」のがいいでしょう。
「人の心の、変革への抵抗感」。これだけで一つの学問になってしまっているわけですね。
変革に、どれだけの準備や理解・労力が必要になるのか、感じていただけるかと思います。
変革は”リーダシップ”のなせるワザ
いかがでしょう? ジョン・コッター氏による8つのステップは、「カイゼン活動」のような変化を実施する際にも、非常に有効なプロセスを示してくれています。
大きな変化であれ、小さなものであれ、基本的に踏むべきステップは一緒です。
もちろんかかる労力や、時間は変わってきますが。
ですので、こうした「踏むべき」ステップを知っているか知らないかは、事の成否を大きく分ける要因になってきますね。
いずれにせよ、大事なことは、リーダーシップです。
もちろん改善もそうですが、変革は、その組織やチームに関わる全員でおこなっていくものになります。
ただ、この件のリーダーが、どのように人を導いていくか、活動にエネルギーを注いでいくかということが問われます。
以前もご紹介しましたが、トヨタ生産方式は「経営哲学」です。
「トヨタ生産方式は、国の、車の左側通行を右側通行に変えるくらいの大仕事」という例え。変化や変革は、これほど大変ということですね。
ちなみに、コッターさんは、一番の「危機感の醸成」において「75%」という数字をあげています。組織の75%が、積極的に変化しようとする気持ち=「危機感」をもっていなければ、変革はいずれ失敗するということです。
8割弱の人間が、同じ気持ちを共有出来るようにするのが、言ってみれば、「カイゼン活動」導入の際の「リーダーの役目」になります。
まとめ
今回は、「ジョン・コッター Change management の8段階に見る改善導入」と題しまして、変革・改善活動導入における、踏むべき8つステップをご紹介しました。
人間が、会社という大規模なグループに所属し、かつ現在のような急激な時代の変化に対応しなくてはいけなくなったのは、おそらく有史以降初めての事ではないかと思います(「緊急対談 パンデミックが変える世界 〜海外の知性が語る展望〜」)。
AI、IoT、5G、とか、あとはコロナ禍なんかもそうですね。
ここ最近の世界の目まぐるしい変化と、情報量の拡大は、見ていてくらくらしてくるほどです。
マーケットや産業構造は大きく変わり、既存のビジネスモデル「ライフサイクル」回転も、一層加速していくように思います。
生き残るには、柔軟な対応が必要です。「変化」です。
Challenge to change.
最後に、「進化論」で有名な、ダーウィン先生のお言葉です。
『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。』
皆さんの改善導入が、成功して「カイゼン活動」になりますように。
今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。
ではまた!