時間観測 Time Study

とりあえず生産性を上げたい。それならまずは初めに時間観測をしましょう。時間観測をすれば、一番時間のかかっている工程が見つかるはず。そして工程間のばらつきも。どのプロセスで、どのくらい時間がかかっているのか、ほかの工程と比較してどうなのか、タクトタイムと比べていいのか悪いのか、それらを判定すれば次に取るべきアクションが見えてくるはずです。ということで、今回は「時間観測」とそれにまつわるお話をしていきたいと思います。

 時間観測 根まわし

時間観測は英語で「Time study」です。もしあなたが工程の分析を行うべく時間観測をしたいなら、「Let me do Time Study」と伝えましょう。ターゲットにしているラインやプロセスの皆さんには、目的をしっかり理解してもらわなくてはいけません。けっして、工程で働いている皆さんのことを責めるために時間観測をしているわけではない、むしろ、皆さんの負担を減らすための観測と分析である旨、しっかりと伝えましょう。基本的には、ラインの長となる方、それからそこを直接見ている方(Supervisor)にはしっかりとコミュニケーションを取ってから仕事を始めるようにします。そうしないと、観測することが作業者さんたちの負担になってしまうことがありますし、逆に注目されていることで、作業者さんたちがすごく頑張ってしまい変にすばらしい観測データが出てしまうということも十分あり得ます。

時間観測 用意

現場で時間観測をする際に準備しておかなくてはならないものですが、今ではスマホ一台で事足りてしまうかもしれません。Kusunoko-CIが初めて時間観測をした約10年前は、現場に2台のビデオカメラを持ち込みまして、バッテリーが弱かったものですから、1台をメインで撮影に使い、もう1台をバックアップというふうにしていましたね。撮影中の1台のバッテリーが切れかかったらもう1台を起動して続きを取り、その1台はまた充電にまわし、などという作業をしていたのを覚えています。

今はすべてがスマホで何とかなる時代ですよね。もちろん充電というのは今でも問題にはなりますが、ストップウォッチと紙による観測をしていた時代に比べれば雲泥の差となりました。テクノロジーの進歩は改善活動を本当に後押ししてくれています。

全体を撮る

「全体を撮る」とかすごくざっくり書いてますけど、結構な労力ですよね。お疲れ様です。私が初めてやった時間観測は、車の定期点検でしたが、1サイクルが2時間とか3時間、受付からカーウォッシュまで追いかけていましたので、それはそれは大変でした。いや、もちろんもっと大変な作業もあると思います。早いサイクルで回っている仕事なんかは、1日費やすと結構大量のサンプルが取れて、各作業の平均にも妥当性が出てくるのですが、長い作業だとそうもいかない。まして時間も限られているわけですし、ある程度は現実的な問題として仕方ないのかなと思います。「限られた時間の中で最良の選択をして行く」、これもbusiness の極意であると思いますので、がんばりましょう! できれば現場の皆さんと相談して、どの方が作業しているときが時間観測として、ある程度(あくまで予測の範囲ですが)正確そうかを吟味して実際の観測をした方がいいと思います。現場の賛同を得るというのは、改善の極意でもあります。

全体を撮った後

これまた非常に地味な作業です。携帯から自分のPCへと動画を移動、頭から再生してワークステーションごとに、一つ一つの作業とその始まりと終わり時間をあらかじめ用意したエクセルの時間観測シートに書き込んでいきます。これもエクセルがあるから本当に助かりますね。最初に公式入れて作っておけば自動的にこの作業は何分何秒、この終了時間が次の作業の開始時間になって・・・ということを勝手にやってくれますから、コンピューター様様です。

そして出てくるのは、作業(工程ごと)にかかっている時間の客観的なデータ。そのあと、作業者の一つ一つの作業を、Value-addingなのか、Non-value-addingなのか、あるいはNon-value adding but necessaryなのかをカテゴリ-ごと分けていきます。この段階で、これまたエクセルの機能を使えば、その工程ごと(あるいは∑)で何割くらいが価値を生み出してる作業か、それ以外かを積み上げグラフなんかで視覚化することができますね。だいたいは正味の価値生成時間の少なさにびっくりするわけですが。

ムダの排除

いずれにせよ、かなり多くの時間が、動作の無駄・探す無駄・移動のムダ・そもそもなくていい作業のムダ・重複してるムダなんかに分類されつつ、いずれムダであり付加価値を生んでないことが科学的にデータとして表されて行きます。この「データと共に」というのが非常に重要で、「なんかそう感じた」とか「そんな気がする」ではない客観的に誰もが納得するかたちで提示していけるというのが、現場の皆さんと一緒に足並みをそろえて改善していく重要なスターティングポイントとなっていくのです。トヨタでも、ベテランの作業者の方の動きをビデオにとり、それを観測者・被観測者一緒に見返すことで、そのベテランの方が「うん、これ俺無駄に動いとるね」なんていう言葉を引き出しその後の改善を進められたという話も残っております。大事なことはデータで語ることですね。

そして、一つ一つに無駄に対して、Countermeasureを打っていきます。この時はいわゆるECRSの原則(イーシーアールエスの原則)が基本的な考え方として有効になってきます。ECRSとはそれぞれ;

1.Eliminate:排除(無くせないか)

業務の目的をもう一度見直し、その業務は無くせないかを考える。

2.Combine:統合/一緒にできないか?

業務をまとめて一緒に処理することで、かかる時間を短くできないかを考える。

3.Rearrange:交換/順序の変更はできないか?

仕事や作業の順序を入れ替えることで、効率的にならないかを考える。

4.Simplify:簡素化/単純化できないか?

もっと省略したやり方で、同じ結果を生み出せないかを考える。

あとはよりシンプルに、作業者が何かを探したりしているなら視覚化(5S)の適用、運搬のムダなら間締やレイアウト変更など。そう難しく考えることもないのかなと思っています。経験上、だいたいは作業のムダを排除していくだけで、結構多くのNon-value-addingを取り除くことができるはずですから。もちろん次の段階として、作業者さんのスキルのことも視野に入れなくいてはいけませんが。

はたから見て、「こうしたほうがいいんじゃないか、ああしたほうが・・・」というのはあるとは思いますが、ここは現場の方々と一緒に考えてください。なぜなら、あなたが良かれと思って考えたやり方も、作業者の方が本当に「楽になる」と思わない限りは、結局使われないからです。機能しない。ですので、コンセンサスを取りましょう。あるいは、無駄を提起することで、現場サイドから良いアイデアが出てくることだって結構あるのです。チームワークで高みを目指しましょう。

ちなみに作業者さんたちの「探す、振り向く、しゃがむ」は基本としてあってはならない動きなので、その辺はよく注意して動作の分析を行うといいでしょう。Ergonomicです。あともう一つ、良かれと思っての話に戻りますが、作業者ではない人が「良かれと思って」一つ増やした作業を、作業者の方は100回、1,000回、10,000回/日とやらなくてはいけないかもしれません。改善は作業を増やす方向ではなく、いつも減らす方向で考えていってください。これはいわゆる「ポカヨケ」の考え方にもつながってきます

まとめ

さて今回は時間観測のかなり実践的な流れや注意点をまとめてみました。IEなどの理屈も大事ですが、こうした、実際に行うときの留意点もまた必要な情報になってくると思います。皆さんの時間観測作業が実り多きものになりまうように。Kusunoko-CIも近々やるので頑張ります! ちなみに観測してる最中、観測者の方も気を付けてくださいね。観測に集中してると周りが見えなくなりますから、事故など起こさないように!