息子へ、パパから伝えておきたいこと その5
To my son, things that Papa wants to tell you, Vol. 5
魔の2歳児
前回は君が2歳になる年の、2017年の出来事を書いた。日本から帰って、誕生日を迎えた君は2歳になり、だんだんと自我の芽生えが感じられ始めた。いわゆる魔の2歳児というやつだね。ちなみに2歳の誕生日は、Tahliya streetのマクドナルド。前回話したお友達がいっぱい来てくれた、とても楽しかったパーティーだった。アンパンマンケーキ頼んだんだ。よくできてて、パパ感動したよ。
それまではなんでもパパママの言う通りだったことも、自分でやりたくなってくるお年頃。そしてなんでもイヤイヤしたくなる頃。うーん、初めての経験だったから、パパママずいぶんびっくりしたよ。
なんというか、君も初めての経験だったろうから、自分自身でも戸惑っていたんじゃないかな。一時、午後になると急に機嫌が悪くなったりね。英語ではtantrum(癇癪)って言うんだよね。パパはオフィスにいたからね、正直どうということもないんだけど、ママがね、すごい苦労していたよ。
日本やフィリピンだったら、ママと2人でどこかお出かけして気分転換なんてこともできるけど、サウジだったからね。どこへ行くのも大変だった。カゴの鳥だったもんね。
でもこの頃から、ママは勇気を出してUber を使い始めた。君のために一生懸命だったんだよ。サウジの一般的なタクシーは、女性にはとても危ないものだったから、パパもママも最初、君とママ二人だけで出かけるなんて思いもしなかった。おかげさまで危険な目にも合わず、色々な所に行くことができた。だからパパUber はかなり印象深い会社になっている。ママの勇気にも感謝しないといけないよ。ママはいつだって君のために何ができるかを1番に考えて、それを実行してきたから。
学校
この時くらいから、君は幼稚園に行き始めたんだよ。
最初は夏の特別コースみたいな感じで、Morning star という学校だった。その後も少しだけ普通の学期通ったんだよね。初めてそういうきちんとした教育施設で学んでいる君は、家の中で缶詰めになっているよりずっと生き生きしてて楽しそうだった。今調べたらね、「閉業」って出てる。締めちゃったんだね。ちょっと悲しい。Expatsの子供が減ってきていていたから、これも仕方ないことなんだろうね。
その次は、Happy sunshine という幼稚園。この時はお世話になったTataiが運転手をやってくれて、随分助かったよね。アラブ系の子供たちに混ざって、純日本人顔の君が学んでいる姿は、とても可愛らしかったし、不思議な光景だった。
園のアクティビティでTobu を着たり、みんなでMakkah の聖地巡礼ごっこをしたりした写真が残っている。お国柄の出る面白い教育内容だったね。少しでも記憶はあるかな? あのバービー人形みたいな先生 Miss. Aya とか。
Tobu
Tobu と言えば、最後にサウジアラビアを離れるときは、パパと君用のお揃いのTobu 買ったんだよね。頭に巻く赤白のスカーフ、その上に乗せる黒い輪っか、サンダル、カフスボタン 全部記念に買ってきた。あのオバQみたいになるやつね。
日本に帰るんだって言ったら、いろんなサウジ人の人達がおまけしてくれた。安くしてくれたり、Tobuに合うお揃いの指輪をくれたり。一回なんかUber のドライバーが、料金タダにしてくれた。なんというか、優しい所にある人達だったなと思うよ。そしてパパが日本人であったというのも大きな理由だったね。希少種。
ちなみに、サウジサンダルは、タイで盛大にこけててから、封印しました。いいこと教えてあげるよ。ある程度の年になったら、サンダルは危ない。面倒でも滑りにくくてふんばりのきく靴を履こう。特に海外ではね。道が信じられないような段差になってたりするから。
希少価値 scarcity value
いい機会だから、希少価値について話しておこうと思う。
なんでパパや君が、サウジやエジプトで時々ちやほやされたかわかるかい? それはね、数が少ないからだよ。
価値というものは、絶対的でない場合が多い。特に何かを売ったり買ったりするときにはね。みんなが欲しければ、価値というものはどんどん上がっていくし、数が少なければもっとみんなほしくなる。そしてまたどんどん価値が上がっていくんだ。君もすごくありふれた物が、なんとしても欲しいとはあんまり思わないだろう? それと同じことだよ。
君もいつかお仕事をして、いろんな人に必要とされる人間になっていく。それが君のお仕事における価値だ。つまり君にしかできないことを誰かのために役立てられたら、君のお仕事の価値はどんどん高くなる。そしてそれがとても求められている所でなら、もっと高まって行くだろう。
これはとても基本的な、仕事に関してのstrategy だ。君が大人になる頃、シンギュラリティはもうすぐそこまで来ているはず。パパにはもう想像もつかない時代に突入していることは、まず間違いない。パパが考えていることが役に立つかどうかわからないけれど、戦略的にものを考えるようにしていくことだけは、強くお勧めするよ。
ちなみに今パパがここで言っているのは、「仕事」としてとか、品物としての価値の話であって、「君自身」の価値の話ではない。ここを一緒にしないように。君という個人は、どんな仕事をするのであれ、世界でたった一つの価値あるものだ。そしてみんなそうなんだ。だから自分も他人もしっかり尊重して生きていくんだよ。
戦略
戦略ってなに? って感じだよね。難しく考えることはないよ。目的達成の為に、どうするのが一番いいか考えるのが戦略だよ。
例えて言うなら、行きたい場所があって、そこにどうやって行ったら、一番楽で問題も少なく辿りつけるかということだね。簡単だろう?
パパが好きなのはね、昔の中国の偉い人で孫子という人の考え方だよ。この人はね、とてもシンプルに目的を成し遂げる方法を説明しているんだ。中でもパパが一座好きなのは、戦争に勝つ方法で、一番いいのは戦争しないこと、っていうお話ね。面白いだろう? これはね、闘っちゃったら、結局いろんなものを失っちゃうでしょ? だからなるべくそうはしないでやれる方法を探そうってことなんだ。
それから勝てない戦いはしないこと。これも覚えておいてほしい。勝てない分野で戦うことほど、戦略的に間違っている事はない。パパはこれを長い間やってしまった。おかげさんで、失敗という財産は得られたけどね。時間は取り戻せない。
それから、時々人はね、目的がなんだったかをすぐに忘れてしまうんだ。そうなるとね いらないことに時間をかけたり、しなくていい争いをしてしまったりするんだよ。だからね、そうならないように、時々立ち止まって、目的を確認する癖をつけてほしい。そして今やってることが、本当に目的を成し遂げるために一番良い方法かどうか考えてみるといいよ。
ちなみにシンギュラリティのことで、一つ。パパはこれに関してとても楽観的に見ている。一部の人はコンピューターに支配される世界なんかをイメージしているようだけど、パパは「共働」という道に向かうと思っているんだ。もちろん、今までのテクノロジーがそうであったように、いろいろと悪い面の物事も起きてくるだろう。でも、結果として人間は、もっと大きな可能性を手に入れていると思うんだ。そこで、君がというか人間がやっていけるのは、いかに人間にしかできないことをやっていくかだと思うよ。その分野がなんかのかはわからないけどね。あるいは、「ゴールドラッシュ時代」のアメリカ西部で最ももうけた職業=スコップやバケツを売る店、みたいなことも考えてみるのもいいかもね。
人生、特に若くていっぱい勉強できる時っていうのは、君が思ってるよりずっとずっーと短い。だから今ある時間やエネルギーを有効に使うよう努力してほしい。さっきも書いたけど、時間だけは取り戻せないからね。なんにせよ君が心から幸せなら、パパもママもハッピーだ。
いつかこういうの買って、パパとママと写真撮ろう!