VSM 仕掛かりの滞留時間 計算方法について

皆さんこんにちは! 毎日お疲れ様です。今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。

さて今回は、ご質問をいただきました。

外資系通販のオペレーション部門を担当していらっしゃる、「MST」さんという方からです。いつも読んでいただきまして、ありがとうございます。

ご質問は、「現在、生産工程に基づく改善活動を行なっておりVSMの作成をしているのですが、仕掛かりの滞留時間の計算が分からず、困っております。」とのことです。

そんなわけで今回は、「仕掛かりの滞留時間の計算方法」について、お送りいたします。

仕掛かりの滞留時間の計算方法

さてさっそく、「仕掛かりの滞留時間の計算方法」です。

こちらは以前VSMの書き方シリーズの、「『モノと情報の流れ図 (VSM) 』 アイコンの説明3『時間線』編」というところでも取り上げました。

計算方法は、基本的には以下のようになります。

「DOS=Days of supply」という呼び方をしたりしますが、一日に必要な量の何倍の仕掛かりが工程間に眠っているのか、を計算しています。

製品(ファミリー)の選定

まずは、今回VSMのターゲットにする商品(製品)を絞りこみましょう。

色んな製品がラインで作られていると思いますが、一度にすべてを網羅したVSMというのは描けません。

パレート図などを書いて、例えば

  • 金銭的に最もインパクトの大きい製品群
  • 生産量が一番多い製品群
  • 将来のビジネス予測が拡大傾向にあるもの

等という視点から、VSMで取り上げる製品(ファミリー)を確定させます。

なにが優先なのか、ビジネス全体の様子から判断してください。

その後、改善でうまくいった新しいやり方を、新標準として、他の製品やラインに展開していきます(ヨコテン)。

一日に生産する量の把握

VSM Demand 例 ReserchGate

そうしましたら、その製品の「一日に生産しなくてはならない量」というのを計算してください。

お客様Demand、あるいは生産計画として、月当たりどのくらい生産するのかという目標数値があるはずです。

それを例えば月22日稼働であれば22日で割って、「一日に生産する量」を求めます。

仮に今、月当たり1,000個、ラインは22日の稼働であったならば、日当たり45.5個≒46個の生産量が求められています。

ラインが2シフトあるなら、1シフト当たり23個、というふうに適宜実情に合わせて計算を進めます。

仕掛かり実測

Photo by Clay Banks on Unsplash

VSMでProjectを進めるに当たり、ラフに描いたVSMと共に、チームの皆さんでラインを歩いて観察したことでしょう。

そして、サイクルタイムや「実際の仕掛かりの個数」というのも実測されているのではと思います。

工程間にある仕掛かりの数は、もちろん日によっても変わるでしょう。

繁忙期であったり、何らかの事情で部品供給が止まった場合などもあって、なかなか正確な数字は取れないかもしれません。

この辺はざっくりとした平均値などでも構いませんので、例えば3日ぐらい観察して、「おおよそこの工程間にはこのくらいたまりがちだ」という概算値をつかんでください。

ちなみに、VSMは「見える化」のツールで、問題を顕在化させて、改善していくためのものです。

ですので、これを完璧に美しく仕上げても、一銭にもなりません。

ある程度ざっくりとした数値でもいいから、まずは描いてみて、「個々の改善」というアクションで付加価値をつけることを重視してください。

たまに、VSMの完璧さにこだわるあまり、いつまでたっても改善のアクションが取れない、というチームが出てきたりしますが、何事も「適度な妥協」というのは必要ですよね。

時間線

時間線 ReserchGate

実測した工程間の仕掛かり数と、一日に必要な生産量がわかっていますから、割り算して計算していきます。

それらをVSM下段にある、いわゆる「時間線」に書き込んでいきましょう。

へこみ部分にサイクルタイム(ないしはリードタイムと併記)、凸の上部分に滞留時間を書き込んで、一番右端で上下それぞれ足し算します。

上にLT、下にCT

そうすると、その製品が工程を抜けるのにかかる時間(生産リードタイム)と、実際に付加価値をつけている(であろう)時間(サイクルタイム)の比較ができます(%)。

付加価値時間が計算できる ReserchGate

多くの場合は、付加価値時間のあまりの割合の低さに驚かれるのではないかと思いますが、今ようやく問題が見えるようになったのですから、これを第一歩として改善を進めていってください。

問題が見えれば対処できます

Leanを目指す

現場を見ていないので、現地現物の精神に真っ向から反対していますが、一般論として聞いていただければと思います。

「MST」さんのケースですと、おそらく各工程のバランスが取れていないのではないでしょうか。そのためいくつかの工程間で、仕掛り滞留が発生しているのではないかと思います。

まずは、タクトタイムを求めて、工程の生産能力が目指すべき目標時間をはっきりさせます。すべての工程が、そのタクト内に収まっている状態があるべき姿ですね。

そして、

  • すべての工程の作業要素を洗い出す(時間観測)
  • ムダな作業を取り除く
  • 作業要素の山崩しで、工程間のバランスをとる

というのが基本的なやり方になります。

また工程間の距離(運搬・移動のムダが発生する)を「間締め」することも必要かもしれません。動線分析もおすすめです。

いずれ改善が進めば、生産指示の一元化とPull生産ということも、考えていけるのではないでしょうか?

まずは問題点の洗い出しと、優先化です。

そのためのVSMにもなりますので、ぜひ未来図まで書いて、継続的なVSMにしていっていただければと思います。

まとめ

今回は、いただいたご質問に答える形で、「仕掛かりの滞留時間の計算方法」についてのご説明でした。

「MST」さんの意図したご質問に、きちんとお答えできているといいのですが。

また、メールにありました、仕掛の計算式ですが、私は今のところ、おっしゃられているようなやり方を見たことがありません。

いずれそういう情報を得られたら、また検証して記載してみたいと思います。

皆さんも、改善で何かご質問がありましたら、フォームからお問い合わせいただければ、分かる範囲でお答えしていきますので、ぜひどうぞ。

今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。皆さんのVSMとカイゼン活動が、うまくいきますように。

ではまた!

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