動作意識(モーションマインドセット)とは!?

Photo by Shane Aldendorff on Unsplash
皆さんこんにちは! 今日もどこかでカイゼンサポート、Kusunoko-CIです。
さて現地現物ができない中、リモートで海外の現場改善のお手伝い。現地に行けなくなって早2年、それももうすぐ終わりそうな感じがしてきました。皆さんの状況はいかがですか?
ネットがあれば、遠隔地ともなんとかコミュニケーションが取れる時代になりましたが、それでも意思の疎通は難しい。こちらがイメージしていることがどこまで伝わっているのか、あるいは直接現場も見ずにどこまでのことが言えるのか。
海外だと、これに言語のバリアも加わりますしね。
そもそも人間は、互いに分かりあうことが難しいとは思うのですが、それでも現物を互いに見たうえで話を進めれば、相互理解は早い。まさに「百聞は一見に如かず」ですよね。
それができないのがこのコロナ禍でした。
こういうものなんだ、という理想形をなかなか実体験させてあげられない中での指導になることも、多くの会社さんで起こっていたのではないでしょうか?
早く現場に行きたい、でもまだコロナは怖い、そんな気持ちのカイゼンおじさんです。
というわけで今回は「動作意識(モーションマインドセット)」について、少し考えてみたいと思います。
TPS(トヨタ生産方式)生みの親、大野耐一さんは「問題がないというやつが一番の問題だ」と言われました。これは問題意識の話ですね。
カイゼンにおける問題とは、いわゆるムダに代表される付加価値のつかないこと。その排除は欠かせません。後はムリ・ムラなんかもありますね。
カイゼンには7つの(8つの)ムダ、という考え方があるのは、皆さんもご存知かと思います。
ここでは動きのムダに絞ってお話を進めますが、いわゆる「動作意識(モーションマインドセット)」。
動作意識とは、
複数の動作の違いを見分け、良い動作とは何かを判断できる感覚と意識を身につけること
です。
つまり何が良い=ムダのない動きで、何がムダなのかを、細かなところまでしっかり見極められるのかどうかということですね。
IE(インダストリアルエンジニアリング)の世界では、ストップウォッチなどによる計測は、最短で2.4秒程度まで観測可能とされていますが、最初は当然、そこまで詳細にムダを発見しようなどとはしませんよね。
あるいは「2.4秒よりも小さな世界があるんですよ」、とよりディープな説明も、いずれしてあげなくてはいけない。
それがいわゆる動作研究(モーションスタディ)における、PTS法(Predetermined Time Standard System)と呼ばれる考え方です。
こちらは
人が行うあらゆる作業を、それを構成する基本動作に分解し、各基本動作に、その性質や条件に応じて所定の時間価値を適用する方法
とされています。
ストップウォッチで測るのが難しいなら、あらかじめ定義した動きの時間を適用しようじゃないか、ということですね。ちなみにこのPTSという考え方は、1920年代からすでに始まっている手法で、全く目新しくもない。
PTSには7つほど異なった考え方が存在しますが、中でも有名なのがMTMとWFという手法。以前もご紹介しましたね。
今回はそのMTM((Method Table Measurement)法の、「腕を伸ばす」という動きに関しての表を用意してみました。


by Mikell P. Groover, ISBN ©2007 Pearson Education, Inc., Upper Saddle River, NJ. All rights reserved.
Aの動きは、純粋に固定した物を取る時に手を伸ばした際、動きの距離でどの位の時間がかかるかを定義したものです。
例えば10.1cmであれば、6.1 TMU (Time Measurement Unit)という時間値が与えられています。
MTM法の中で、1 TMUが0.036秒と決められていますから、10㎝ほど動かした際の所要時間は、約0.22秒ということが言えるわけです。
ちなみにTMUは、「通常の条件下で平均的な作業者が平均的な努力で要する時間」として定義されます。詳細なビデオ分析から、人の動きを1時間あたり100,000に分割して得られたのがこの1TMUです(1時間=3600秒、3600÷10万で0.036)。
1秒は27.8 TMU。
さらに下の最大作業域と正常作業域もあわせて見てみましょう。
ムダなく、作業者さんにもっとも負担のかからないレンジの中で作業できるようになっているのか。
先ほどのMTMの動きの表は、単純に手を伸ばしたものでした。ひじや肩が回転しなくてはできない動き、えてして正常作業域を超えた動きというのは、さらに時間も負担もかかるはずですね。
こうしたことを踏まえて、もう一度7つの(あるいは8つの)ムダ排除という観点に立ち戻って作業分析を行えば、おのずとまだまだやれることが見つかってくる。
だからこそ、今まで付加価値のついた、あるいは付加価値はなくとも必要であると考えていた動きにメスが入れられるわけです。その動きを産んでいるものが何なのかの真因を探り出して、カイゼン策を打っていかなくてはいけないわけですね。
そういうこともなしに、単純にラインバランシングに走ってはいけないよ、という話をもっと踏み込んで伝えていかなくてはいけません。
皆さんの現場でも、もしかするとムダを他の作業ステーションやプロセスに分配しているにすぎない例というのが、見つかるのではないでしょうか?
前回の標準作業とコモンセンスでもお話しましたが、「物事をいかにきめ細かく見ることができるか」。
その点において日本人は、世界で最も厳しい環境・お客様要件の中で育てられてきています。いいか悪いかは別にして。
ただこの環境があるかぎり、日本人はまだまだ世界で通用していくと思っています。またそれが、次世代が世界という市場で活躍するための変わらぬ要件にもなるのではないでしょうか。
学びというのは、世界を見るそのレンズの解像度を上げること、という言い回しを聞いたことがあります。MTMの1TMUまで体得させることが、動作意識の指導目標になるでしょう。
コロナも落ち着き(?)、もうすぐまた世界に飛び出せる時が近付いているのではと思います。日本の皆さん、がんばりましょう!
今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。
ではまた!
詳細です。