RPA導入とカイゼンツール
皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
さて巷では最近RPA(Robotic process automation)というものがよく聞かれるようになってきました。導入を考えてらっしゃる会社さんも多いかもしれませんね。
そこで今回は、RPAの基本的な情報と、導入に当たって使えそうなカイゼンツールをご紹介しようと思います。
RPAっ何? どの業務に、どういう手順でRPAを組み込んでいけばいいのかよくわからない、という方に参考になること間違いなしです。
RPAで未来に投資していきましょう!
RPAは自働化ではない
RPAとは、Robotic process automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略です。
平たく言えば「ロボットによる工程の自動化」で、Autonomation(自働化)ではないのがミソです。
いわゆる自働化の、「不良が出たら機会が直ちに判断して止まる」といった、人が考えるような判断は問わず、今はただただ単純な作業を人の代わりにやる仕組みのものです。
ですので、RPAとAIの違いはと言われれば、AIには学習能力があって、指示された業務を(ある程度)自分で判断していくことが可能になる点と言うことができます。
RPAが自動化で、AIは自働化です。それが、AIとの大きな違いになります。
ではAIを入れた方がいいのでは、と思われるかもしれませんが、複雑な作業になるほど当然ながらシステムは高価になっていきます。
工場の機械と一緒ですね。カイゼン的視点では、小さく安価で、小回りが利き、単純な作業のために機械を導入する。簡便自動化というやつですね。
RPAへの誤解
- “RPAは人間の仕事を奪うのではないか”
- “RPAは本当にコスト削減に役立つのか”
というのはおそらく導入に際して誰しもが思うところではないかと思います。
“RPAは人間の仕事を奪うのではないか”
まず1番目の“RPAは人間の仕事を奪うのではないか”ですが、先にも見ました通りRPAには複雑な作業をこなす機能はそもそもありません。
つまり人間がわざわざ時間を割いて行う必要がない、単純な作業にしか使えないということです。
我々の事務仕事を見渡せば、そんな作業が山のように見つかるはず。そうした付加価値率の低い仕事をこのRPAにやってもらって、その分人間は業務カイゼン含め、よりクリエイティブな作業に集中する、ということになります。
目指すは協働です。
“RPAは本当にコスト削減に役立つのか”
このコスト削減に役立つのか、という問いですが、私の見た感じでは「正直そうでもない」というのが感想です。
もちろん定型作業が山のようにあるお仕事なら話は別です。それらに忙殺されて増えてしまった残業代や、外注費、アルバイトを雇い入れていたいわゆる変動費に当たるものは削減できそうですね。
ただ通常の作業の流れから、一部人間の判断のいらない単純作業を肩代わりしてもらった程度では、そこまで変動費は減らないでしょう。
むしろ導入と維持費(ランニングコスト)として出ていくお金に、びっくりするのではないかと思います。固定費になってのしかかってきますしね。
ですので、こうした短絡定なコスト削減の観点でRPAを見るのは、私は間違いではないかと思っています。
要は先述の、「人にしかできない仕事」に、人間がどれだけ時間を費やせるか、です。
ここにコストに関する考え方の基本姿勢が表れてくるのですが、いわゆる正社員を会計上どうとらえているのか。
変動費(=コスト)としてみているならば、いわゆるブラック企業のように、使い捨ての考え方ですからもう議論の余地はありません。会社としての資質が問われます。
ですがきちんとこの労務費を、固定費(=資源)としてとらえているならば、「いかに活かすか」を考えておられるはずです。
ここにRPA導入の意義が見られるのです。
「いかに人を活かすか」のため、単純作業を減らし、その分をトレーニングや自己研鑽に充ててもらったり、あるいはまったく新たな事業分野に進出したり。もちろんカイゼンに取り組んでもらうこともそうです。
RPAと人間が協働することで、人間にとってより良い、創造力発揮の仕事環境を作ることができるととらえるべきでしょう。
ちなみにRPAは、仕事のやり方が変われば、また教えなおさなくてはいけないですし、そういう意味では、単純作業にのみ専念してくれる安価な「ロボ社員」を一人雇い入れるようなものです。
福利厚生はいりませんし、残業もへっちゃらですが、適宜教育に割く時間・労欲と雇い続けるためのお金は必要です。
いずれにせよ、この変化の激しい時代に適応し生き残っていくため、新しいことへ目を向けていくことが必要なのは自明ですね。そのためのRPAであり、「未来のへ投資」になるかと思います。
RPA導入手順やカイゼンツール
上記のようなことを踏まえたうえで、RPA「ロボ社員君」を雇い入れることに決めたとします。
導入部署・業務の選定
導入部署・業務の選定ですが、一般的な工場などのカイゼン事始めと同じように、以下のような点は避けて始めていくのがいいでしょう。
- あんまりに変化・変更の多い不安定な業務
- 仕事量のばらつきが大きい
- 受け入れ部署に受け入れる気がない
です。
人は基本的に変化を嫌います。新しいモノ、特にこうした「自分たちの脅威になりかねない」(という誤解を生む)ものに対する拒絶反応は思った以上に大きいですから、成功する確率の高いところを選ばなくてはいけません。
そしてしょっぱなでこけると、後が続きません。「それ見たことか」というやつですね。なので上記の3ポイントは必ず確認してください。
そして残業代・アルバイト代が多くなりがちな部署ですとか、人数が多いと言ったお金に関わる視点からパレート図を作成して、上位に来るものを選びましょう。導入の費用対効果も大きくなりますので。コスト削減につながる可能性が大きい方がいいですしね。
協力的で、費用対効果も大きそうな部署を選んだら、今度はどの業務から手を付けるかになります。
- やるべき仕事全体の中で、占める割合が高い業務
- 管理職ないしは給与水準の高い人がかかわっているプロセス
などの視点から第2・第3のパレートを作成し、業務プロセスを選んでいきます。「80 20 ルール」ですね。
RPAへのカイゼンツール
よく聞く言葉に、「うちの業務には自動化できるものなんてない」という言葉です。
そもそもRPAが何に使えるのか、分かっているかさえ怪しいのですが、とりあえず否定されがちです。
まずはプロセスの見える化をしましょう。見えないからそういう意見が出るのです。
こういうオフィス系の業務カイゼンに効果を発揮するのが「情報とプロセスの流れ図」、通称Swim laneです。
Swim laneの作り方は以前ご紹介しましたので、そちらを参考にしていただければ幸いですが、プロセスに関わる全員で書き上げていけば、必ず「こんなことしてたんだね」という新たな発見につながります。
とかくオフィス系の仕事は、業務が人にくっついてブラックボックス化しがちです。これをみんなでわかるように書きだしていきます。
SIPOCの考え方で、仕事のインプットやアウトプットを明確にしましょう。ある業務のアウトプットは、次の業務(お客様)のためのインプットですから、これをプロセスに関わる全体が把握していくことはとても大きな意味があります。
時々「私の仕事には『お客様』なんていない!」という面白い意見も出てきますから、そういう時は「後工程はお客様」の考え方を、こんこんと説明してあげてください。
そうすると、何かの資料を毎回ダウンロードして、コピペして、メールで送って等々、様々な「判断がいらず、定型的である」作業が見つかってくると思います。
こちらの該当部署とRPA導入(IT)部署の皆さんで確認・検討してください。
もしかすると、RPAではなくマクロで行ける部分もあるかもしれません。そういう発見も含めて、業務の情報とプロセスの流れを見える化は、とても大きな効果があります。
PDPC法の発想で、あるべき姿の議論を深めていきましょう。
ちなみに、導入に関しては、ITに丸投げすると確実に失敗します。当然ながら該当部署が一番業務を理解していますよね。二人三脚でやることです。
また先述の通り、導入してそれで終わりではありません。
メンテナンスの部分も、業務に関わる全員である程度は知っておことです。
メンテナンス、あるいはアップデートも、手法をステップごとに細かく分けていきます。こういう業務のブレークダウンは、自工程完結の考え方です。
1から10までをITではなく、出来る部分を自分たちでやり、専門性の必要な部分をITにお願いするような仕組みを作っておくといいでしょう。
そうした際の取るべき手順・管理方法も、フローチャートないしはSwim laneできちんとマニュアル化して用意しておきます。
誰がやっても同じ結果が出せるようにする、それが標準化です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は「RPA導入とカイゼンツール」と題しまして、RPAの基本的な情報と、導入時に使えるカイゼン手法とツールをご紹介いたしました。
RPAはいまだ黎明期です。出来ることも限られていますし、おそらくそんなに劇的にコストを減らしたりもしないはずです。
それでも現時点からの導入検討をお勧めしたいのは、将来への可能性です。
今はまだ定型的な作業しかできなくても、いずれはAIとの垣根も低くなり、判断という機能を装備した次世代型へと進化していくはずです。
今からの導入は、そうした次世代型RPA導入への布石になっていきます。
そういう意味において、まさに未来への投資。
使う企業と使わない企業で、明暗を分かれていくでしょう。
国や、ところにより自治体でも助成金を出しています。制度もうまく利用して早期の導入を考えてみてはいかがでしょうか? (「RPA導入補助事業」に係る地方公共団体の公募)
今日も読んでいただきましてありがとうございました。
ではまた!
RPA導入サポートをしているコンサルの方が著者。かなり具体的です。