サプライチェーン全体カイゼンと管理会計

皆さんこんにちは! 今日もどこかでカイゼンサポート、Kusunoko-CIです。

さて以前、カイゼン プロジェクトのお手伝い中に、経理部の方と分かりあえないことがったお話をしました。

財務会計や管理会計の違いについて、もう少しはっきりさせたいと思ったわけですが、今回とても分かりやすい管理会計の本、「生産現場をカイゼンする『管理会計』」を見つけましたので、その内容の一部ご紹介したいと思います。

それと合わせて、全体カイゼン活動のあるべき姿とツールのお話を少し。

これでもう少しスマートに(笑)、経理の方と話し合うことが出来そうです。

サプライチェーンのカイゼン

サプライチェーン(SCとは、製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れを指す言葉です。

最近時に感じるのが、従来の財務会計の考え方をしていては、効果的な全体カイゼン活動が行えないということ。

効果的な全体カイゼン活動とはすなわち、「やって意味のある」活動。

限られた人員や時間の中でせっかくワークショップやプロジェクトをやるのですから、きちんとコストが改善されて、経営体質が良くなるもの=会計的にもやってよかったことが証明できるものにしないといけません。

コスト改善です。

ただこの言葉は非常に危険な言葉で、使い方を間違えるととてもネガティブなインパクトを与えてしまいます。

みなさんも「人員削減」というイメージを持たれたのではないかと思いますが、そうではないのです。

この辺も従来のカイゼン活動や、財務会計の仕組みの限界から来ていると言えます。

サプライチェーン(SC)のコスト

Supply Chain =Value Stream

モノづくりにおけるサプライチェーンをざっくり見てみると、

  • 銀行からお金(運転資金)を借り入れる
  • そのお金で材料や部品を買う
  • 工場内で加工する
  • 必要であれば外注先で加工
  • 完成品をお客様に届けする
  • 売上代金を回収する
  • 借り入れていたお金(運転資金)を銀行に返済

という一連の活動になります。

生産が増えるということは、このSCをどんどん回すということであり、回るお金がどんどん増えていくことを意味します。作れば作るだけ増えるのですからこのSCに関わるお金はすべて変動費(=コスト)と考えられます。

従来のカイゼンでコストを削減していたのは、この工場内での部分のみ

もっと他にもカバーすべきところがあるのは、パッと見てもご理解いただけると思います。

財務会計の「見えない化」

以前も、カイゼン結果をPL(損益計算書)に書けるのかどうか、という視点が必要というお話はしましたが、この言い方で、従来の財務会計にどっぷり浸った頭に誤解を与えてしまいました。

それはそもそもコストの定義すら、分かりあえていないからでしょう。

ここでためしにトヨタのPLを例に見てみますが、コストと呼ばれるもの(変動費)が、どこにどう配分されているのかちっともわかりません。

先ほどのモノと情報の流れ図を見てもわかる通り、

  1. 材料費
  2. 労務費・仕掛かり・燃料費など
  3. 外注加工
  4. 外注物流
  5. 運転資金の金利

と、サプライチェーンを回せば回すほどかかるお金、いわゆる変動費(コスト)はいたるところにあります。しかしながらどこに計上されているのか、PLからは、はっきり見えてきませんね。

ちなみに上の5区分で言えば、

  • 1.2.3の工場内でかかっているコスト、すなわち製造費用が「売上原価」
  • 「販売費および一般管理費」には製造以外の費用4が
  • そして5の金利が「営業外費用」のところ

にそれぞれ計上されています。

これだけならまだしも、従来の財務会計では、下記の表が示すように

「生産現場をカイゼンする『管理会計』]より

コストとして「減らすこと」を考えなければいけない変動費と、資源として有効活用を目指さなくてはいけない「固定費」が、一緒くたにされてそれぞれの科目に放り込まれているのがわかります。

これではカイゼンの第一歩である「見える化」はできず、問題が何なのかを判断してアクションを取ることなど到底できませんね。

会計スタイルがカイゼンの方向性を決める

変動費は、先ほどもお話ししましたように製造すればするほど、つまりサプライチェーンを回せば回すほどかかるお金でこれは、いわゆるコストになります。

コストですから、どう減らすのかを管理の目的にしていかなくてはいけない。

では固定費は何なのか。

先ほども書きましたが、これはビジネスを運営していくための「資源」=「ヒト・モノ・カネ」という会社の大切な財産です。

この違いが全く分かっておられないのでは、と思われるマネジメントの方も多々おられます。

もちろん不必要な投資であったり、ビジネス規模にあわない人員を抱えているという場合は、削減を考えるということは必要でしょう。

ですがこの固定費=資源をむやみにカットしてしまっては、今後のビジネスの存続すら危ぶまれてきます。

私の知っている、ある会社のお話しです。

「コスト削減」を掲げて大量の「人切り」を行いました。その結果、PLで製造費として引かれるお金は減りました。それは当然です。引く分を減らせば利益が出るという、財務会計上の引き算は正しい。

ですがその後、あまりに人が少なくなりすぎて新規のビジネスを受け入れる体力をなくしたことに気づいたという、本当に悲惨な状態になってしまったのです。ジリ貧です。

もちろん失われてしまった知識や経験も大きい。これらを回復させるのに、人を新たに雇って、いったい何年かかるのでしょうか?

悲しいかな、おそらく変動費(コスト)と固定費の違い・取り扱い方がわからなかったのでしょう。従来の財務会計上、正しいことをしていたわけですしね。

我々は、好むと好まざるとにかかわらず会計の指標に動かされてます。

ビジネスである以上、「儲かった」か「儲かってないか」というお金による判断は常について回りますよね。

たかが会計のやり方で?、と思う向きもあるかもしれませんが、結局のところ我々は測定された指標に基づいて行動を変えてしまうのです。

従来の財務会計が、変動費も固定費も一緒くたに「コスト」としてしまい、減らせ減らせというのであれば、残念ながら人はそのように動いてしまいます。

先ほどの例も、実際には資源である人を減らすことが会計上良しとされてしまうがゆえに、起こった悲劇ですね。

新しい会計と管理

そんなわけで、従来の財務会計が企業を強くするカイゼンの役に立たないのであれば、新しい会計の仕方を作ればいいのです。

管理会計は私的な会計です。

どのように作ろうと、会社の中で使う分には何も問われません。

大事なことは変動費と固定費をきっちりわけて考えること。

変動費(サプライチェーンでかかる費用)は減らす、固定費(資源、サプライチェーンに関わらずかかるお金)は、資源の有効活用という視点でとらえます。

稼働率ではなく可動率で。

そのように考えると、以下のような会計のスタイルになっていきます。

「生産現場をカイゼンする『管理会計』]より

問われるべきは、

  • 下げるべき変動費(コスト)を、サプライチェーン全体の中で把握し削減に努める管理をすること。
  • 資源となる固定費は、有効に活用されたかを管理・判断し、むやみやたらに削らないこと。

というのが見えてくるはずですね。

会計を「カイゼン」しましょう。

コスト削減とカイゼン活動

Photo by Kirill Pershin on Unsplash

このように削るべきコストがどこにあって何なのかがはっきりすることで、手の打ち方がまるで変ってくるはずです。

会計の見える化です。

資源である固定費でどれだけの付加価値を生んだのか、またムダな変動費は何なのかをしっかり考えて生産性向上を目指すことですね。

この時も「後工程はお客様」という視点を、ぜひ追加してサプライチェーン全体を眺めてほしいと思います。

それぞれの部署で行っている業務には、必ず「お客様」がいます。自分たちの作った仕事の結果を使って仕事を行う、「後工程」の皆さんです。

サプライチェーンマネジメントという概念は本来、SCの全体を捉えて最適化を行うという「崇高」なものであったはず。

それがむしろ、サプライチェーンの一部(えてして工場)に負荷をかけるだけの代物になってしまってはいないでしょうか?

工場の生産性やコストだけを見ていれば、競争に勝てた時代では、もはやありませんよね。

管理会計で全体最適を常に考えましょう。そのためのサプライチェーンマネジメントです。

モノと情報の流れ図は「Value stream mapping」と言いますが、このValue streamとは、「お客様から注文を受けてから、情報処理・生産を経て、お客様に完成品をお届けするまで」のエンドツーエンド(EtE)の事を指します。

まさにサプライチェーンです。

モノと情報の流れ図を有効活用しましょう。その時に、先にも掲載した新たな管理会計の視点でもって、SC全体に散らばる「ムダ」を排除していくことが成功のカギになっていきます。

まずは御社の会計スタイル、見直してみませんか? そのうえで、効果のあるカイゼンにしていきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は「サプライチェーン全体カイゼンと会計」と題しまして、「生産現場をカイゼンする『管理会計』」という本の一部のご紹介と、それを踏まえた上でのあるべきカイゼン活動の進め方のお話しでした。

こちらの本は、会計の知識が多少必要ではありますが、分かりやすく管理会計の在り方を示してくれています。また設備投資に関するNPVやIRRの考え方も出ていますので、一読の価値ありですよ。

カイゼンがわかっている方が読み込むことで、かなり力を発揮できると思います。逆に言うと、カイゼンの進め方を知らないと、どう手を付けていいかわからないかもしれませんが。

そんな時は、このブログの他のエントリーを読んでくださいね(笑)。

ともあれカイゼン活動をサポートしていると、こうしたSC全体の最適化を見据えたケースというのが稀であることに気づきます。

だいたいは生産サイドと、オフィス系がきっちり分かれてしまっていて、流れが生まれていません。またこうした管理会計の考え方も、きちんと把握されていないことが多いです。

マネジメントは今一度、会計とそれぞれのお金の管理の仕方を明確にして、全体最適のカイゼンや、経営管理のかじ取りをしていってほしいと思います。

今日も読んでいただきましてありがとうございました。

ではまた!

内容は「生産現場をカイゼンする『管理会計』」とややかぶりますが、より深い内容になっています。

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