やってみた! ゲージR&R(計量値)with Minitab

皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。

最近自分のシックスシグマ プロジェクトを終了させたのですが、その中でゲージR&Rを行う機会がありまして、今回のエントリーはそのご説明です。

ちなみに今回使われているデータ関連の資料はすべて、統計ソフトMinitabで作られたものです。

背景の説明

Photo by Sigmund on Unsplash

コロナ禍で現地に出張できない私たち。そのような中、ネットを使ったバーチャルの改善ワークショップは欠かせない方法になりました。

現地現物ができないので、なかなか厳しいのですが、そこは現地の皆さんと協力してビデオを撮ってもらったり、現場から携帯カメラで中継してもらったりと様々な取り組みを行っています。

カイゼンと言えばムダ取りですが、そのための時間観測は毎回のように機会があります。全くやり方がわからないチームには、送ってもらったビデオの時間観測を、お手本としてこちらで行うこともよくあります。

ビデオ内の作業を分解、付加価値(VA)・付加価値なし(NVA)・付加価値なしだが必要(NVA but necessary)に分類分けして、ムダの取り方や他の工場での好例を紹介したりですね(ヨコテン)。

ということで、「リモートで同じビデオを閲覧しながら、時間を観測する」という作業の正確さというのはどうなのだろう? というのが今回のゲージR&Rのテーマになったわけです。

普段何気なく行っている作業の、繰返性(Repeatability)と再現性(Reproducibility)は信頼に足るものなのか。

実験環境説明ですが、

  • Googleフォルダに置かれた2つの短いビデオ(AとB)
  • それを二名の計測者が、Googleチャットのシェア画面で見ながら
  • それぞれが持つ携帯電話のストップウォッチ機能で計測した
  • ビデオAとBに対してそれぞれ10回ずつの観測結果で確認

のような感じになっております。

ゲージR&R おさらい

Photo by Charles Deluvio on Unsplash

ゲージR&Rに関しては以前もご説明いたしました。

取っているデータ、解析するものそれ自体が、おかしな数値になっていると、解析自体に意味がないものになってしまう。

「Garbage in, Garbage out」(ゴミを入れてもゴミしか出ない)というやつですね。

このように、現場で使っている測定そのものの「正確さ」を問うのが「測定システム解析(MSA=Measurement System Analysis)」と呼ばれるものです。測定する機械そのものの正確さを確認するためのものでしたね。

正確性の確認の中で、特に偏り、直線性、安定性の3つをまとめて、「校正(calibration)」、測定する人によるズレをチェックするのが、繰返性(Repeatability)と再現性(Reproducibility)ということになります。

この測定する人に関わる二つを、ゲージR&R(Gage R&R)と言うのでした。R&Rは、両方のR(RepeatabilityとReproducibility)の頭文字を取ったものでしたね。

実際のゲージR&R

それでは早速、Minitabを使ったゲージR&Rの今回のケースを見てみます。

手順の確認

まずは、何を明らかにしたいのかということで、今回のゲージR&Rのやり方を確認しました。

大まかな環境については先ほどご説明しましたね。

また「適切に分析を行うためには少なくとも3人の測定者が必要である」(Minitab)とありますが、「実際に測定システムを使用する測定者が3人未満である場合を除き」(同ページ)ということで、今回は私と私のメンターとの二人での計測になっています。

我々が実際にこうしたビデオ時間観測サポートをする場合は、二人で行うのが常ですから問題ないでしょう。

ビデオA(1分半程度)とビデオB(1分程度)の二つの「部品」を、二人で10回ずつ測定することになります。

ビデオのスタートからエンドまでを、Googleチャットの通話で見ながら、携帯のストップウォッチで計測。合計40回(10回x2ビデオx2計測者)やることになりました。

ワークシート作成

ということでまずはMinitabワークシートの作成です。

統計→ゲージ分析→ゲージR&Rのワークシート作成を選んでいきます。

ポップアップ画面で、「部品数」「測定者数」「部品名」「測定者名」「反復数」が聞かれますので下図のように記入。

そうすると下のような方法と、実際に移入するワークシートが生成されます。

これが実行手順になりますので、このワークシートの書かれた順番でAとBのビデオを観測していきます。

ゲージR&Rの実施

無事計測が終わったら、実際のゲージR&Rの計算ですが、先ほどの手順と同様に進み、今回は「ゲージR&R」(交差)を選択します。

こちら「すべての測定者が全ての部品を測定する場合に、測定システム内の変動を評価します」との効能書きがありますね。

こちらを選択するとポップアップ画面が出てきますので、部品、測定者とデータのありかを記入。

より正確な分散分析法を選んでいます(後述)。

ちなみに先ほど見えた「枝分かれゲージR&R」は、すべての測定者がすべての部品を測定できない場合、また「拡張ゲージR&R」は、例えば付属部品によって部品間変動があるかなどを見たいときで、特殊な要因を考慮する際の分析になります。

オプション記入

さらにオプションで上下規格の幅を「30」と入れておきます。平均(CL)から、上下15秒の振れ幅にUSL(上側規格)とLSL(下側規格)を設定。こちらは、「この方法が、時間観測における30秒の差を確認するのに適切な測定方法かどうか」を調べることを意味しています。

結果発表

とここまで入れると分析は一瞬です。

二元配置の分散分析(交互作用ありとなし)の結果の表示と共に、下記の結果が得られました。

見るべきは、まずは分散成分の寄与度。

今回合計ゲージR&Rの寄与度は0.22%と極めて低く、さらに「繰り返し性」(同じ測定者が、同じ測定機器で、同じモノを複数回測定し、同じ値を取得できるかどうか)の部分でのみ、かすかな変動が見られるという結果を得ました。

部品間の変動は、当然AとBという長さの全く異なるビデオを使用してますので、当然大きな寄与度になっています。

いずれにせよゲージR&Rには、大きな問題はないことがわかります。

工程交差(許容範囲)には、先ほどの30秒の差の「30」が記載されています。

そして下段のゲージ評価。

注目すべきは%基準変動(%SV)と%公差(SV/交差)の2点。こちらは以下のような判定基準で確認します。

30秒という上下規格の幅を考慮しないのであれば、%基準変動は10%未満でOK。上下幅30秒(%公差)は30%未満ですから、許容されるかを判断しなくてはいけません。

書かれているように測定に重要性やコストを考慮した結果、「Gドライブ上にシェアしてもらったビデオを、携帯電話のストップウォッチで時間観測」というやり方をOKと判断いたしました。そこまでシビアな測定は求められていないですからね。

とういうわけで今回の結論です。

2測定者が撮影したビデオを、ネット通話上の環境で、携帯電話のストップウォッチ機能を使用して計測する際、

%基準変動(%SV)<10%, %公差 <30%, 識別区分数>=5、30秒の差を見るのに、この測定器と測定方法が正しいことを確認できたので、このゲージは許容できる

となります。

ちなみにこれが航空宇宙や自動車産業であれば、こうはいきませんね。人命にかかわるものですから、%公差も「10%未満」であることが求められます。もちろん計測する対象にもよるでしょうが。

識別区分数のガイドライン

それから最後の「識別区分数」(number of distinct categories)ですが、日本語では「知覚区分数」と訳されたりもしますが、今30という数字が出ています。

こちら製品の実際の変動と係数をかけて、測定システムの変動(ゲージR&R)で割ったもの(日科技連)ですが、よくわからないですよね。

Automobile Industry Action Group(AIAG)が発行した測定システム分析マニュアル1では、5つ以上のカテゴリがあれば、許容できる測定システムであるとされています(Minitab)。

ということで、私も深く理解することは放棄しています(笑)。

とにかくゲージR&Rの分解能を示すもので、小数点は切り捨て、5より大きければよし、と機械的に判定。今回の結果は全然大丈夫ですね。

ちなみにMinitabは、こちらのようなグラフも用意してくれますので、一個ずつ読み取るのもなかなか興味深い作業です。

いろいろな分析方法

ちなみに、MinitabのゲージR&Rの交差では、二種類の分析法が使えます。

一つは今回使った分散分析、もう一つは「Xbar-R」。

分散分析

分散分析(ANOVA)法を使用して分散成分を計算します。分散成分は、測定システムに起因する変動のパーセントを推定するものです。通常、分散分析法により分散をより正確に推定し、交互作用に関する情報をより多く得ることができます。

Xbar-R

ある測定者のある部品の測定値の各セットからのサンプル範囲を使用します。サンプル範囲は繰り返し性の平均範囲を計算するために使用されます。Xbar-R法では、測定者と部品の交互作用の分散を計算することはできません。

以上Minitab helpからの引用ですが、分散分析のほうが情報量が多い分正確であると理解しています。

今回の測定を両方で検証してみましたが、分散分析のほうがより厳しい数字になっていることがわかりますね(↓)。

まとめ

いかがでしたか?

今回は「やってみた! ゲージR&R(計量値)with Minitab」ということで、実際にビデオを使った時間観測の、計測方法についてゲージR&Rで確認してみました。

ちなみに、この方法を公差10秒で確認すると、&公差が71.67%とでまして、「測定システムは許容出来ない」と判定されることになります。

つまりこの方法では、10秒の差は測れないということです。面白いですね。

ネット通話という環境を変えれば、また結果も変わってくるのかもしれません。いずれ検証してみたいと思っています。コロナが落ち着いて、出張できるようになってからですね。

また今回は、計量値に関するゲージR&Rでしたが、そのうち計数値についても実際にMinitabでやってみたいと考えています。

正しい計測で、正しいカイゼンをやっていきましょう!

今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。

ではまた!

 

IATF 16949のための統計的品質管理: SPC・MSA・抜取検査・多変量解析

これはいい本です。Minitabでのやり方から、分析結果の見方まで詳しい。絶対買いの本です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA