今度の革命は「ブロックチェーン」『お金の流れでわかる世界の歴史』
History and Money.
皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
さて、先日「Amazon Kindle Unlimited」に申し込んだのですが、月に定額料をはらうと、「Unlimited」に登録された本は、何冊でも読めるという、読書好きには天国みたいなこのサービス。
もっと早く申し込んでおけばよかった。
開始3日で、すでに10冊くらい読んじゃいました。
その中の1冊、「お金の流れでわかる世界の歴史」。大村大次郎さんという方の本のご紹介です。
題して、「今度の革命は『ブロックチェーン』だ 『お金の流れでわかる世界の歴史』」。
「お金で世界史を追う」研究である本書のご紹介と、Kusunoko-CIなりの未来への考察を交えてお送りしたいと思います。
お金ほど面白い歴史の切り口って、ないかもしれない、とまで思ってしまいました。
お金のいびつな流れが、国を亡ぼす
古代エジプト、ローマ帝国、イスラム、オスマントルコといった国の趨勢、フランス革命やナポレオン、さらには近現代史に至るまで、「お金」という視点で歴史を見つめていくと、そこに一定の法則が見いだせるという、なかなか鋭い考察。
私は小・中学校・高校の教員免許を持っておりまして、専門は歴史。学生時代はかなり多くの歴史関係の本を読んできました。いちおう研究目的で。
ずいぶん前の話になってしまいますが、私が学生時代には、こういう視点で世界史の趨勢を捉えたものはなかった気がします。
「特権階級による租税回避と中間層以下への厳しい課税」、それに加えて、不正による「中抜き」が行われるようになったとき、歴史上多くの国が、内部からの崩壊、あるいは外部からの侵略で滅んでいったという点。
国という仕組みの中に「特権階級」が生まれると、必ずそこから「いびつな富の集中」が生まれるようになる。
富を持つものが、また富を持つ。彼らの行うことは、そうした既得権益を守るための体制強化。どんどん不透明、かつ不公正になっていくお金の流れ。格差の拡大。
不正を働く特権階級の存在は、本来国に徴収されるべきであった相当額のお金の流れをも変えてしまいます。単純に言って、政府にお金(税金)が入らないのに、民衆は高い税金に苦しんでいるという、なんとも悲惨な状態。
当たり前ですが、こういうことが続けば、人の心には、国や政府・そしてそうした特権階級に対する不満・うっぷんがたまっていきます。
そうして、これを是正ないしは破壊しようと動き始める。それがフランス革命時の動きであったり、古代エジプトやローマ帝国崩壊の原因であったりしたわけです。
なかなか示唆に富んだ内容ですし、語り口も平易で、とても面白く読める本でした。
Kindle Unlimited で今なら無料です。
新自由主義は「革命前夜」

The New York Public Library on Unsplash
この著者、大村大次郎さんという方、元は国税局調査官だったんだそうです。官僚として実際に、この国で税金の徴収に携わっていた方。
「特権階級と税の不正」という視点から、有史以来の国の興亡を追いかけるというのは、なかなか有意義な試みであると感じました。
ちなみに、この「特権階級による租税回避と、中間層以下への厳しい課税」、そして貧富の差の拡大という図式、どこか思い当たるふしないですか?
そうです。今現在の世界、まさにそのものなんですね。
本書の終わりは、現在のこの世界が、危険な崩壊への道をたどっていることを、危惧して締めくくられています。
2017年、いわゆる「パナマ文書」と「タックスヘイブン」という言葉が世間をにぎわせましたね。
この文書をめぐっては、マルタ共和国というところで、人死にも出ています。事件を追いかけていた女性ジャーナリストの、ダフネ・カルアナ・ガリチアさんという方が、車に仕掛けられた爆弾で殺されるという事件です。映画化なんかでよくあるようなことが、現実で起きたのですが。
背後で大きな力が働いているのでは、などということも噂されましたが、その後パタッと何も聞かれなくなりましたね。
なぜでしょう?
現在世界規模で、いわゆる特権階級が、税回避のため資産をこうした「租税回避地」へ移動させる。国は取れない税金を、中間層=我々みたいなフツ―の人たちから取れるだけ取ろうとする。
大村さん曰く、まさに「フランス革命前夜」というのが、今の私たちの世界のありさまです。
歴史的に見ても、行き過ぎた不公平というのは必ず、「揺り戻し」が来る。
それが本書ではよく理解できるのですが、はたしてこの末期の資本主義社会に、どのような「揺り戻し」が来るのか。
ちょっと楽しみな気もしたのです。
ブロックチェーンが革命の引き金?
なぜか。
私が読んでいて、ふっと頭に思い浮かんだ「揺り戻し」が、「ブロックチェーン技術」による「情報やシステムの分散化」と、そこから発生する新しい世界でした。
ブロックチェーンに関しては、前にご紹介しています。
この「ブロックチェーン」という技術、「分散型台帳」などと呼ばれたりもしますが、情報の偽造や改ざんがきわめて困難という特徴を持っています。
これを利用することで、あらゆる記録が安全に保管でき、かつ複数の当事者(ないしは企業)の間で共有するすることを可能にするのです。
「誰でも参照でき、記録内容を信頼できる台帳」です。
また「ブロックチェーン」による分散型システムは、大きな政府や企業を必要としません。
例えばこれまで、海外へ送金したり、様々な場面で身元保証をしてもらうには、政府や企業といったところになんらかの「ID」という形で、「信用」をお願いする必要がありました。「クレジットカード」もそうですね。だから取引に時間がかかったし、そこに企業の儲けである、手数料も発生している。
それが、情報をこの「ブロック」に記録・集積し、解読がほぼ不可能な暗号形態で守る「ブロックチェーン」が一般的な形になれば、どうなるのか。
大きな政府や銀行・信販会社などに頼らざるを得なかった、多くの取引・オペレーションが「当事者」のみで完結することになる。
すべては、この鎖状(チェーン)のように連なった「ブロック」により、確認され、伝達され、承認されていくことになるのです。
しかも安全で透明に。
お金や情報というものが、より安心でより速く、そしてより透明であるならば、人は旧来のシステムではなく、当然この新しい仕組みに流れていくことでしょう。
そしてこういう変革は、いわゆるアメリカや中国のような「大きな国」よりも、小回りのきく「小さな国」で起こる。なぜなら大きな組織は、意思決定に時間がかかりすぎること、そしてなにより、旧来の「既得権益」を守りたい人々が山ほどいるからですね。
現在のエストニアが、そのいい例です。
企業家というべきか、イノベーターというべきか。
彼らの、不公正な仕組みを嫌い、透明・公正な新しい形の「経済圏(コミュニティ)」をつくろうとする試みは、きっと加速していくでしょう。
そこでは、信頼(Credit)が、世界中どこにいても、「ブロックチェーン」によって確認できる。ネットを通じて、日本にいる私と、ジンバブエにいる若者が、お互いの「信頼情報を確認」しあって、新たなプロジェクトを立ち上げたりすることもあるかもしれない。
「正しい」お金の使い方をしている人たちが、その蓄積記録と共に成功をつかんでいくようなコミュニティ。
国籍に対する考え方や、物理的な距離感も大きく変わっていく世界。
本当の意味で「地方分権」が進んだ「小さな政府」の持つ経済網と、「ブロックチェーン」技術による、新たな経済圏が折り重なっていく社会。
IT革命が為しえなかった、真のグローバリズムがそこにあるのではないか。
ブロックチェーンというと、今はまだ「仮想通貨」というイメージが強いですね。でもこの技術革新は、そんなものだけでは終わらない、世界に情報とネットワークの「革命」をもたらします。
「お金の流れでわかる世界の歴史」で示唆された、「革命前夜」の今の世界には、こうした「爆発」への十分すぎるほどのパワーが、すでに蓄積されていると感じるのは、私だけでしょうか。
まとめ
そんなわけで今回は、「お金の流れでわかる世界の歴史」という本のご紹介でした。
何度も言いますが、とても読みやすくて、歴史とか経済ってよくわからない、という方も十分楽しめる内容になっています。
若い頃、一生懸命歴史の本を読んでも、なんとなーくすっきりしなかったのが、「国が起こり、消えていく」、その背景にあるはずの「なぜ?」でした。
本書はそれを、「税金やお金の流れ」という切り口から説明してくれる、かなりの良書です。
そしてこういう歴史の繰り返しを、台頭してきた新しい技術がどういう形で促進するのか。今、いろいろな意味で我々は転換点に立っているのだなーと、かなりワクワクしてくるのでした。
皆さんも、「ブロックチェーン」で、一緒にワクワクしてみませんか?
今回も読んでいただきましてありがとうございました。ではまた!