方針管理は「問題」から始まる

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皆さんこんにちは! 今日もどこかでカイゼンサポート、Kusunoko-CIです。
さて、方針管理についてはすでに何回か記事も書いていまして、
- 戦略的重点目標を、組織の1年単位の活動に落とし込んでいくものであること
- 実践の仕方や、改善活動との絡め方
をご説明しました。
そこで今回は、どのような部分が戦略として重点課題となっていくのか、「方針管理は『問題』から始まる」と題しまして、ご説明したいと思います。
また実際にアクションを策定していくためのヒントや、日常管理との違いも少しまとめてみました。
みなさんの方針管理を、より力強く効果的にするための情報になりますので、ぜひ最後までお付き合いください!
方針管理は“問題”から
以前にも、方針管理は会社が向かうべき戦略を、その1年の具体的な行動計画に落とし込むもの、というお話はしました。
大事なことなのでまた書きますが、この激動の時代に、中長期の先を見据えずにビジネスをやるというのは危険極まりないことです。
パッと思いつくだけでも、
- 人口動態(マーケット含む)
- 技術の進歩
- 社会構造の変化
- 海外の情勢
- 法規制
など、企業を取り巻く環境は刻々と変化していることが考えられます。
そこらへん何も考えず日常の業務を何とかこなしている会社と、早くから先見の明をもって少しずつ変化に対応する準備をしている会社では、どちらが生き残る可能性が高いかは言うまでもないですよね。
蟻とキリギリスの寓話みたいなもんです。
そんなわけで、企業における戦略の必要性というのは何となく感じていただけるのではないかと思うのですが、ではそれをどう方針管理に落とし込んでいくのか。
まず会社というのは、トップがいます。当たり前ですが、社長さんとかいわゆるすべての活動に責任を負う方ですね。
会社の今を見据え、この先どうしていくのか、相談はすれども最終的には自分で決定していく立場ですから、その重圧たるや。
で、こうした方々は、「こうなりたい」あるいは「こういうものを目指していきたい」という、いわゆる組織のあるべき姿や方向性をもっているはずです。
Visionですね。
そしてこのVisionを目指すときに、今会社としてはどういう状態なのか。
もっとはっきり言えば、この組織の長の皆さんは、現状にどんな「不満」を抱えているのか。
つまり、「あるべき姿」と、「現状」を比較したときに、そこに自然とGap(差)が生まれてくる。
この「差」のことを、カイゼンの世界では「問題(ないしは課題)」と呼んで大事にしていくわけですが、方針管理の策定も基本的には同じ考え方に端を発しています。


Gap(=問題)があれば改善・課題解決ができる
つまり、方針として展開していきたい重点課題とは、そのまんま現在会社が抱えている、特にトップとして不満を持っているこの「問題(差)」のことになっていきます。
「戦略的Gap approach」です。
「問題」はいつも部下にある?
こうした「問題」があることをスタート地点として、それを事業部署ごとにBreak downしていきます。
社長さんとしては、将来会社をこういうふうにしたいのだが、今ある姿はそこに達してない(あるいは向かってない)。
では、そのあるべき姿へ向かうには、営業部としてはどうすべきなのか? 開発としては、人事としては、ITは、製造、品証、購買、物流、生産技術、マーケティング、事業企画などなど各部署でどうなのか。
こうした「現状とあるべき姿の差」アプローチの前では、「問題(課題)」のない部署など存在しないわけで、これがそのまま各部署の重点目標になっていくわけです。
さらに言うなれば、社長さんの望むあるべき姿が現状と乖離しているわけですから、現状の方を理想に近づけるよう努力しなくてはいけないわけですよね。
それが重点として展開されるべき目標・課題です。
ここで、ものすごく誤解を招きそうな言い方をすると、「トップの理想がかなわないのは、その下に原因がある」ということになっていきます。
トップが向かいたい方向(理想)はあるのに、現状がそうでないのは、現状が理想に追い付かずに「Gap(問題)」を作り出していているからにほかありません。
社長さんの下、部長さんのところであるべき姿が達成できていないのは、さらにその下課長さんレベルに「問題」があるからですし、その下はグループとか、ひいては個人のレベルでどんどん「問題」があるということになっていきます。
ただここで忘れないでおきたいのは、こうしたカイゼンの考え方において、「問題というのは金の卵である」というメインコンセプト。
決して、問題があるからそれを隠したり、あるいは叱責の対象にしたりするようなのものではないのです。
これが働く皆さんの基本的なマインドセットになっていないと、こういう言い方(その下に「問題」がある)は軋轢しか生みませんので、相当な注意が必要です。
下位方針はいつも上位方針のアクションプラン
このように、あるべき姿を目指すため、「問題(Gap)」という考え方を踏まえたうえで、では具体的な方針策定がどうなっていくのかです。
以前もお話ししましたが、方針というのは下へ行くほどより詳細なアクションプランになっていきます。
このことも実は今回の「問題から始まる」という考え方を当てはめてみると、かなりすっきり見えてきます。
先ほど、社長さんのあるべき姿に到達していない現状は、その下の部長さんレベルに原因があるのだとしました。
ということはつまり、部長さんのところで、社長さんが描く「あるべき姿=目標」に到達するようなアクションを取ればいいわけですよね?
もちろんこの「あるべき姿=目標」を達成するにはいろいろな方法(アクション)があると思います。ただし時間も金も人も限られた中で、最も効果的に成果を出していくためには、最も効きそうな「重点」にフォーカスするのが合理的な考え方ですね。
パレートの上位に当たるもの、これが方針管理の「重点主義」を満たすことになっていきます。
そしてさらに、たった今部長さんのところで出てきたアクションは、そのままその下の課長さんから見れば、達成すべき「あるべき姿=目標」になっていきますから、そのために一番効きそうなアクションというのを考え、実行していくわけです。
重点主義で、かつ詳細なアクションプランができていきますね。
このように、組織の職位を階段状に降りていきながら、重点項目を達成するための具体的なアクションプランが、下へ下へと設定されていくことになります。
これを続けていくと、最終的には個人の具体的な業務にまでアクションを落とし込めますから、個々人で方針の重点目標達成のために何をするのかもはっきりしていて、成果も出しやすくなっていくのがご理解いただけるかと思います。
「方針」という組織としてあるべき姿を達成するための「方向」を、具体的なアクションに落とし込み、組織階層ごとに順次決定していく。
そしてその進捗を、「管理」でもって定期的に確認し、効果的・効率的に運営していく。
そのため方針管理は、組織が戦略的重点項目を達成するために、大変有効な仕組みということができるのです。
ちなみに、上位方針を、ただそのまま下へ下へと投げていくやり方を、「Tunnel deployment(トンネル・デプロイメント)」といいます。
これは、一応「目指すべき姿」は上から下へ落されているのだけれども、その実全く中身がない(トンネルのように空洞な)展開になってしまってることからそう呼ばれております。
いわゆる「丸投げ」というやつですね。
当然下の者は何をやっていいかよくわからないので、決して何かが達成されることはありません。
それでいて、「方針管理は意味がない」というネガティブなイメージがしっかり根付きますから、これほどまずい状態はないですよね。
各レベルで具体的なアクションが議論・設定され、下へ下へと渡されていくことが重要です。ここが、方針管理にはコミュニケーション(キャッチボール)が必要といわれる所以です。
方針管理と日常管理
このように見てくると、方針管理と日常管理の違いもおのずと明らかになってまいります。
方針管理は、組織や会社のトップの方が目指したい、戦略的重点目標を達成するために使われる。
つまり組織としての「舵取り」に関わる部分になります。ですからいわゆる「トップダウン」方式。戦略的ゴール達成のため、全社員同じ方向を向いて、最も効果的なアクションを取っていく。部署間の相乗効果も期待出来るアクティビティです。
したがって、トップ主導で「えいやっ!」とやらなければならないようなことが、重点的に記載されていくことになります。
ですので方針管理には、日々の業務に関する管理項目を書きいれる必要はまずありません。大きな変化に関する管理のみです。
これに対して日常管理は、日々の業務管理。
戦略的なことではなく、今目の前にある業務の管理。
誰しも未来を考えて行動することは大事ですが、かといって今目の前にあるものをおろそかにしてしまっては本末転倒です。
今ある業務、今あるお客様に集中してしっかり成果を出す。
こうした日常業務の管理が日常管理であって、そこにも当然小さな改善や達成・未達といった日々のドラマ(?)がある。
これも会社の足腰としてとても重要な要素です。
しかしながら、えてして集団は、誰かが未来を描いてあげないと、目の前にあるものに良くも悪くも忙殺されてしまうもの。
こうした日常と、未来を見据えた双方の業務を、バランスよく運営していくために、日常管理と方針管理は対をなす活動ということができるでしょう。
どっちがなくても組織はこけます。
ちなみに、方針管理で変化・改善された新しい「標準」が、のちに日常業務で管理される項目になるというのは基本的な流れですね。
これがいわゆる方針のPDCA(Plan Do Check Act)と、日常業務のSDCA(Standardize Do Check Act)の違いです。
どんな新標準も、管理・維持がなくては定着しませんからね。方針管理と日常管理、これらがが両輪となるのがご理解いただけるのはと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は「方針管理は『問題』から始まる」と題しまして、下位へ行くほど具体的になる理屈のご紹介でした。
「問題」を階層ごとの具体的アクションに落とし込むからこそ、重点目標が達成されていくのですね。
方針管理がうまくいかないという場合、こうした効果的な方策の展開(下位へのBreak down)が出来ていない場合がかなりあるのではと思います。
そして方針管理成功の秘訣は、言うまでもなく「定期的なレビュー」。
関わるみなさんで、週に1度、月に1度、ないしは四半期・半期に一度、必ず進捗をチェックする会議を持ちましょう。
達成しているのであればよし。そうでなければ、何が原因かを判断してリカバリプランを実行していかなくてはいけませんね。
問題の早期発見に努め、最終的な達成を確実なものにしていくためのミーティングになります。
こうしたPDCAのCA(Check Act)がなければ、方針なんか作っても何の意味もないですので、ここは厳に覚えておいていただきたいところです。
またこの会議は、決して担当の方を叱責するような場ではないことを理解しておいてください。
一度でも責めてしまえば、人は必ず委縮し、次からどんどん問題を隠すようになっていきますからね。「問題」とは人ではなく、必ず仕組みややり方に原因があることをお忘れなく。
この意味においても、「問題」は隠すべきものではなく積極的に発見して、カイゼンしていくものという考え方を、全社的デフォルト設定にしていかなくてはいけませんね。
上にいいことだけを報告するようになった組織が、どうなっていくかは説明する必要もないと思います。
そんなわけで、方針管理が何だかよくわからない、どうやったらうまくできるのか、という方へ、その策定・展開のヒントになれば幸いです。
成果の出せる方針管理にしてください!
今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。
ではまた!
とても分かりやすい内容です。