仕事でミスを減らす方法 がんばっちゃだめだった
Don’t try your best! How to reduce mistakes at work.
以前「仕事でミスが多い人必見! 効果的にミスを減らす方法とは」というテーマでお送りしました。こちらなかなか人気の記事のようで、多くの方がミスには悩まされているようです。その時は、文章校正をやってらっしゃる編集の方の手法を紹介しつつ、工場などでも使われているやり方と合わせてご紹介しました。
さてそこで今回は、これをもう少しワイドに、仕事全般で使えそうな情報にしてみました。おすすめです。
仕事 ミスばかり
仕事でミスが多いとへこみますよね。周りに迷惑も掛かりますし、怒られるし、当然心も痛い。お客さんに問題が行ってしまうと、本当に目も当てられない。信用を失うのは一瞬といいますから、どうしても避けたいのですが、起きてしまう。
この仕事に向いてないんじゃないかと落ち込んでしまって、会社に行くのが嫌になってきたり、生活にも支障が出たり。いいことないです。本当になくせるものならなくしてしまいたい。Kusunoko-CIも落ち込みやすいタイプなので、若い頃は特に切り替えも苦手でしたから、それはもう精神的にも苦労しました。
『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』
そこで今回は、『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』という本で学んだことをここにご紹介します。著者は飯野謙次さんという方です。以下略歴ですが、
スタンフォード大学工学博士。1959年大阪生まれ。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、General Electric原子力発電部門へ入社。その後、スタンフォード大で機械工学・情報工学博士号を取得し、Ricoh Corp.へ入社。2000年、SYDROSE LPを設立、ゼネラルパートナーに就任 (現職)。2002年、特定非営利活動法人 失敗学会副会長となる。
失敗学の権威でございます。それこそ人はなぜ、どうやって失敗やミスを犯し、そしてどのようにそれを回避し、扱い、次へつなげていくのかを熱心に研究されている方ですから、当然本書はかなりためになる内容です。
仕事ミス なくすには?
では仕事でミスをなくすにはそうしたらいいのか? 今回は思いっきり一言で表しますが、このミスを減らすために必要なのは、ざっくり言って「ポカヨケ」です。
Poka-yoke? とは何ぞ? という方のためにご説明します。Lean-ManufacturingさんのWeb pageから借りてきました↓。
不良の原因ともなる人の作業ミスを総称して「ポカミス」と呼び、ポカミスを犯しても不良がヨケられる仕組みを「ポカヨケ」という。つまり、不良ゼロを実現化するための対策の1つで、機械設備等にその仕組みを組み込んでいく。
つまり、前回もお話しした「人はミスをするもの」という前提に立ちながら、それが起きたときに直ちにそれを検出し、不良を後工程に流さないための仕組みを作る、というものです。英語ではFool proofなどと言いますね。
いろいろなやり方がこの本の中で説明されていますが、大事なことは仕組みを作って予防する、ないしは嫌でも気づくようにしていこうということです。
がんばっちゃダメ
著者の飯野さんはこの本の中で、「(人の)高度な注意力が必要な作業というのは、作業自体が未成熟な証拠だ」と述べています。つまり、作業者が、高度な集中力でもって、一生懸命やろうとする努力が必要なやり方自体を変えていかなくてはいけないということですね。
このためシリコンバレーなどでは、人の忍耐力と集中力が必要で、かつ惰性によってミスが起きやすくなるようなものに関しては、ITでそれを置き換えるか、あるいは予防するようなシステムがすでにしっかり構築されていると。それに比べて日本は、そうした部分への対処がいまだ遅く、これでは日本の競争力も失われてしまうと警鐘を鳴らしています。
この便利にすると、なぜか反発する人間が出てくる日本という社会、とても面白いなと思うのですが、苦労することが美徳みたいな、変な根性論があるところ、Kusunoko-CIはとても非合理的だとも感じてしまいます。
トヨタのカイゼンでもこのポカヨケというのは、とても重要な機能として位置づけられています。そしてさらに言えば、「カイゼンとは怠惰になるためにやる」という考え方だってあるほどです。
これは語弊があるのできちんと説明しなくてはいけませんが、そもそもがんばっちゃいけないわけです。作業者が汗水たらして歯をくいしばってやるような作業といのは、どんどん減らしていかなくてはいけない。そのために機械を導入したりする。あるいは作業者が、更なる注意力でもって、ミスを犯さないように努力してやる作業というのは、真っ先にカイゼンされなくてはならない。
そういうものがカイゼンです。そして作業者の余計な負担を減らすのも、このポカヨケの機能でもあります。
あなたの仕事場では、データ入力者が、極度の集中力でもって数値を入力して長い時間をかけて作成する帳票などないですか? もしあったら、コンピューターやシステムにできる限り置き換えてしまいましょう。
飯野さんは、惰性でやることの危険性、そして一つに注力するとタスクの他の(えてして単純な)部分にミスが生じやすくなることも述べておられます。
ミス防止
とはいえ、そういう作業でも現行やり方がそうなっているなら、やらなくてはならないのがサラリーマンの宿命。大きい問題点ばかり指摘してもしょうがないので、実際的なミス防止法についてもちょっとご紹介します。
チェックリスト
シンプルですが効果あります。そしてチェックするなら、以下の3点で工夫してみようとのこと。
- 見る人を変える(ダブルチェックで)
- 見方を変える(チェックリストを逆さにするとか)
- 見た目を変える(データ入力なら、折れ線グラフなどを表しさせてみると、桁の間違いのような誤入力なども発見しやすい)
手垢のついた手法ですが、工夫の仕方はいくらもある。有効に使えるように、創造力が問われるのです。
マニュアル
どうしてもネガティブなイメージがついて回りますが、これは作業手順を示すという意味でなくてはならないものです(自分の頭で考えるかどうかという話は、また別の問題なので、これを批判する人はちょっと見当違いだとKusunoko-CIは思っています)。
ただし、世の中で作られているマニュアルというのが、どうも本質を逸してしまっていると飯野さんは指摘します。飯野さん曰く「正しくなくても、その通りにやったら完璧にできてしまうもの」、それが良いマニュアルだとおっしゃっています。
例えば、配線手順を1-10まで文章にして、正しく正確に書いてもわかりづらいだけです。むしろ飛ばせる(いらない)手順なら極限までそぎ落として、1,2,3,4とやれば配線は完璧になる。こういう方が、ミスを予防するには絶対効果の大きいマニュアルです。情報の5Sが必要ということです。
記憶に頼らない
人の記憶ほどあいまいなものはない。そして最近の脳科学の研究では、我々の脳はチャレンジしなくてはいけないタスクほど意識を向け、簡単にできそうなものは(簡単であるがゆえに)意識の圏外に放り出してしまいがちなのだそうです。
結果として、忘れちゃった、気づかなかった、勘違いしたなどということが起こってしまうのです。
何かに記憶させておけるもの、例えばスケジュール管理などはできる限りメールのスケジューリング機能などに任せてしまおう。そしてそれにアラームを上げてもらって、自分たちはチャレンジしなくてはいけない創造性の高い業務に注力する、とうことですね。
仕事、ミスは怖いけれども
冒頭にも書きましたが、ミスは怖いですよね。
でも、ミスにばかりフォーカスして、あんまり小さな事ばかりに気を取られないようにとも、飯野さんは指摘しておられます。結局のところ、我々のやらなくてはいけないことは、「創造性」が問われる分野。AIが台頭してくれば、その傾向はより一層強くなる。
あまりにも小さな、ミスとも言えないことまで完璧にしようとして、かえって新しいことにチャレンジできなくなるようでは、むしろよくないと。
そして、我々が犯してはならない人生で最も大きなミスとは、「失敗しないですごしてしまうこと。
100個ミスをし、100個対策を考えたなら、その100個分我々は想像力を使ったということ。自分で考え、自分で対策を講じていく=ミスを減らす努力そのものが創造性の構築であるということです。仕事、ミスは怖いですけれども前向きに捉えていきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 今回の「がんばっちゃだめ!ミスを減らす方法」。
私は読んでいて、さすが工学の方だ、トヨタのカイゼンの考え方ととても良く似ていると感じました。
このがんばってはいけないというのは、本当に重要なキーワードです。そしてこれに触れつつ、「成功する人がやっている効果的なやり方」ということにも記述がありました。
がむしゃらな努力というのは絶対にしないというのがそれです。
そうなんです、効果的でない努力ほど、忌避すべきものはないとKusunoko-CIも感じます。
みなさんも、どうやったら目的にかなった努力ができるのか、いったん考えてみるといいかもしれません。
それでは皆さん、ミスを減らしていく仕組み、作っていきましょう!