転職の思考法 まとめ How to think about job change
皆さんは転職をしたことがありますか? あるいは過去に転職をされたことはありますか? Kusunoko-CIはすでに3度ほど転職を経験していますが、いずれも結構大変でしたね。にもかかわらず何とかやれているのは、運がよかったというか。さすがに3回目くらいになると今の自分をどう生かして転職するか、自分の市場価値はどのへんか、などということも考えました。さて今回は、最近巷で有名な『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』、北野唯我さんという方の著作を読んで思うところをまとめていきたいと思います。
転職の思考法
さてこの本は転職に必要なものが何かをしっかり表してくれる、非常にためになる本です。今や日本は、昔ながらの終身雇用制がくずれているにもかかわらず、いまだに「転職は悪」という考え方が蔓延している不健全な状態になっています。我々はこのままただ座して、この仕事や産業構造が極めて流動的になった世の中を漂っていいのでしょうか? いいはずないです、という視点で終始論が進められていきます。
この本の中で、転職にもっとも必要なのは、「自分自身の軸」を持つことだ、述べられています。我々は「自分という商品を、働くという時間を会社に売ることで、その代金をもらっている」。であるならば、自分という商品のも持つ市場価値を見極め、そして高めていける転職をしていかなくてはならない。それができなければ、我々は一生涯いつ会社をクビになるのか、そしてその恐怖の中で自分に大小の「嘘」をつきながら必死で今の組織にしがみついてしまうという不自由な生活をしていかなくてはならないことになります。
市場価値 Market value
ではその我々の持つ市場価値とは、いったい何であるのか? それが先ほどもお話した「軸」であると説明されています。軸には;
- 業界の生産性
- 技術資産
- 人的資産
の3つがあり、少なくともこれらのうちの二つを伸ばして、自分という「価値キューブ」を大きくしていかなくてはならない。
まずは2番目の技術資産ですが、これは専門性を経験に分けられるといいます。3番目の人的資産は、会社内外にどれだけ自分を助けてくれる人がいるか、です。
そして順番が後先になりますが、1番の業界の生産性は、なんだかんだ言ってこれが一番重要な部分である気がしました。どこのPhaseにあるどの業界を選ぶかによってその後の給与も、それから市場価値への活かし方も全く変わってくるからです。端的に言えば、産業にはLife cycle があるわけですが、上向きと下向きのどの産業を選ぶかという話ですね。
この本の本当に優れた部分は、このような情報は、おそらく現在われわれが普通に学校教育を受けて、社会に出てかつずーっと1つの会社に勤めたりしていると、知る機会がないという点にあると思うのです。ちなみに本書は、黒岩という転職エージェントが転職を考える青野という青年に指導を与えるという小説形式で書かれていますが、そこも結構普通に面白かったです。で、この黒岩が述べているのが、次のことばです;「覚えておけ、日本の会社の悪いところは、『転職できない人間』にその事実を40代後半まで伝えずに隠しておくことなんだよ」。
転職の思考法 Thoughts around the main topic
感銘を受けないページがないほど、あまりに洞察に満ちた内容で、「よくまーここに書かれたことを知らずに転職してなんとかなったな」とちょっと自分でもびっくりしてしまいました。それほど書かれたことは理路整然としていて、著者が本当に日本の産業界を思っているのだなということが伝わってきます。本筋における書評や分析というのはたぶんここまで良い作品なら腐るほどあると思うので、Kusunoko-CIはちょっと違う視点から。というわけで、ここではいくつか本筋以外のところで私の心をぐっと捕まえた言葉を紹介していきたいと思います。
- 意思決定とは何かを捨てることである
深いですよね。私も今までの人生、いろんな意思決定してきましたが、すべてを取ることは人間出来ません。昔好きだった村上春樹氏は「何かを得るためには何かを失わなくてはならない」と何かの作品で書いていましたね。結局のところ、人生というのは限られたリソースをどう割り振りしていくかというアクティビティです。何かを成し遂げたいなら、それと比較して相対的に価値の薄いものから順番に割く時間を軽減していくしかないわけです。メンタリストのDaigoさんも同じようなことおっしゃってますよね。
- 意思決定に関して:結局のところ、一番情報を持っていて、一番コミットしている人間が意思決定を行うべきである。そして最後はそれを信じるしかない。
これも本当にいい言葉だと思いました。最終決定を誰がするのか、それは責任問題とも相まって難しい問題です。まして、減点主義がまかり通る組織では、その逡巡は責任の擦り付け合いに他ならない。こうした病が蔓延する中で、「意思決定」というものを真摯に考えてきた著者だからこそ生み出せる言葉ではないかと感じました。「信じる」というのも、人間や論理の限界やはかなさを指し示していて、かつ結局は我々が持つべき心のありようを表していて、人間存在がとてもいとおしくなってくる表現ではないかと感じました。
そして最後にもう一つ;
- 失敗は結局考え方次第だ。ただ100%失敗を招く条件は、腹をくくるべきところで覚悟を決めきれなかったとことに因る。
腹をくくり決断した人間には、長い目で見たら失敗などない。誰に笑われてもバカにされても、何度でも立ち上がり前を向くからだ。そしてこれが、「世の意思決定にまつわる最大の心理である」。
私はこの部分を呼んだ時に、斎藤一人さんお言葉が浮かびました。「真剣に生きているか」というやつですね。まずは意思決定をするだけのところに自分を置いたかどうか、その意思決定を「何かを得るため、なにかを失って構わない」というぎりぎりのところで下したのか、そして、そこに100%の腹のくくり方があったのか、というところです。
すごく矛盾した言い方になってしまうかもしれませんが、決断するだけならだれでもできるんですよ。ただ後々のその成否をきちんと自分で受け止める覚悟があるほどの意思決定の下し方であったのかそうでないのかは、結局「失敗した」という時に改めて問われてくるんです。変な話、「こっち選ぼー」みたいなノリで何かを選択することもできる。ただし、「何かを失う」という側面には、全く気が付いていないか、あるいは気づくだけ成熟していなかったとか。Kusunoko-CIは、過去にそういう選択の仕方をいくつかして、後に大きな後悔に見舞われたことがあります。それこそ精神病むほどの。うん、自業自得ですけどね!
ですのねで、みなさん。例えばこのブログで初めて「転職の思考法」の本を知り、意思決定ってそういうもんなんだ、と今思ってらっしゃるかもしれません。それはそれでラッキーなんですよ! なぜなら意思決定が何であるかを理解しながら、この本で軸(思考法)を学び、そして実際の行動を起こせるわけですからね。
まとめ
というわけで今回は、とても面白い本に出合えたので思わずシェアしてしまいました。だけど腹は、くくれるようになってくるとまたそれはそれで味わい深い。始めましょう、新しいことを。ましてこの混沌とした現代社会で生き抜くためには、大海へと泳ぎ出す覚悟がもはやはじめの一歩と呼ぶべきBasicです。「覚えておけ、日本の会社の悪いところは、『転職できない人間』にその事実を40代後半まで伝えずに隠しておくことなんだよ」。こんなことに自分の人生を翻弄させてはいけません。黒岩氏が言っているように、辞表を胸に働くことで、自由を得ようではありませんか。あなたが生きるためにした覚悟は、あなたを決して裏切りませんよ。