わからなくても、一緒にできる改善はある
Clue of Kaizen and Framework.
皆さんこんばんは。現在出張中、新しいカイゼンProjectをサポートし始めたKusunoko-CIです。今回のカイゼンテーマは「教育」、そしてもっと大きく言うと「継承」でありました。
Kusunoko-CIは、いろいろなところを訪れ、カイゼンに必要なノウハウを提供します。それはカイゼンを進めるためのフレームワーク。
残念ながら、私たちのように工場にて勤務しない人間は、そこで作っている製品やオペレーションに対する深い知識はありません。一般的なことはわかりますが。ですので、カイゼンをやるにしても、「ああしろ、こうしろ」ということは言えません。
何が問題であるのか、現場の方から話を聞きながら、一緒に少しずつ糸口を見つけていきます。
そこで今回は「カイゼンの糸口とフレームワーク」をテーマに、場面ごとにおけるフレームワークの有効な使い方ということについて、少しお話ししたいと思います。
はじめに
問題解決で、まず何をしていかなくてはいけないか。
当然ながら、何が問題で、現場の方が何をしたいのかをクリアにしていかなくてはなりません。
今回は先にも述べました「継承」。これが現場リーダーさんの抱えるテーマです。
そのため何ができるか、何をしていかなくてはいけないか、これを日々悶々と考えてらっしゃったそうです。
今のままじゃいかん、という思いはある。しかしながら、漠然としてた思いなわけです。
ああしないといけない、こうしないといけない。これは直していかなくてはいけない、これもカイゼンしたい。ここは以前不具合が出た、でもこっちが今すぐにでもやらないとお客さんはカンカンだ、などなど。
現場で日々その生産に追われている方は、問題は山積しつつも手が付けられなくなっていたりする。
やらなきゃいけない気持ちある、やらなきゃいけないことも(なんとなく)わかっている。でも何から手を付けていいか、どうしていいのかわからない。
こういうケースは意外と多いのではないかと思います。
問題があるのがわかっているのに、手を付けられない状態と言うのはとてもフラストレーションがたまります。
そうですよね。それはまるで背中がかゆいのに手が届かず、いつもそのかゆみを一緒にいないといけないような気もちです。孫の手、欲しくなりますよね。
内容把握
そうです、その孫の手に当たるのが私です。
しかしながら、最初にも述べましたが、私はオペレーションの細かいところや、技術的に難しいところというのはさっぱりわかりません。まして、今務めている会社は、工場によって、ラインによって、扱ってる(作っている)製品がまるで違います。
例えばA工場のライン1で訓練を受け、それなりにそこの業務がわかるようになったとしますね。でも同じ工場のライン2では全く違う製品を作ってます。ライン3も同様です。
そして、工場が変われば、軍需産業のもの、飛行機のエンタメのもの、通信機械、医療機器、サーバー etc.と、ざっと思いつくかぎりでも、本当に違うものが生産されています。当然やることも違えば、ラインの作りも違う。作り方も、流れているのか、オペレーターさんが1から10まで完成させるのか、本当に千差万別です。
行く工場、行くラインで、全部違うといってもいいですね。
なのでまずは何をやっているのか、誰向けに、どういうメンツで、いつからいつまで、どこで(工場内でのモノや人の動き)やっているのか、どういう生産のタイプなのか(受注方法の違いであったり、ものの流し方の違いであったり、作っているのか・直しているのかであったり)、どうやっているのか、どのくらい作っているのか、いわゆる6W2H(what, when, who, to whom, where, which, how and how much)のフレームワークで尋ねていきます。
こちらに情報がなく、聞き取りをしたいなら、この方法で聞くとそれなりにまとまった情報がすっきりした形で得られます。ぜひお試しあれ。
ちなみに、こうしたインタビューは現地現物でやりましょう。
彼らの慣れた場所はその現場です。会議室などに呼んでしまうと、それだけで感じが変わって変に緊張してしまう人もいます。彼らが慣れ親しんだところのほうが、いい情報が得られやすい。
加えて、ライン傍なら心置きなく話ができる。何か問題が起きても、彼・彼女はすぐにサポートに回ることができますからね。
寄り添いましょう!
問題の顕在化
で、だいたいそのラインのオペレーションで何がやっているのかわかったら、ようやく次は何が問題なのかを解明していけなくてはいけませんね。
問題が何であるかわかれば、手の打ちようがある。そうでないと何かを改善するのはとても難しい。
そして、漠然と問題がわかっているのだが、漠としすぎて何から手をつけていいのかわからない。こうしたケースも間々あります。
今回サポートしたケースも、まさにそんな感じでした。「教育」、「継承」ということを考えているのだが、あまりにも課題が大きすぎて何からやっていいのかわからない。
以前も何度かお話ししましたが、
- 象を食べるにもまずはスプーン一杯から
- サクッと学ぶ(Breakdown)
こういう考え方が生かされるケースです。
Broaden, Narrow down
Leanやカイゼンの考え方で一つ、覚えていくと良いのが、「拡げては深堀し、広げては深堀し」という作業を来り返し行うこと。
例えば、「継承」と一口に言っても、何を伝承していかなくてはいけないのか。
こんなときマインドマップなどの「拡げる」系のツールはよく働きます。どんどんアイデアを出す。出せるだけ出す。いわゆる「Quantity matters」ということです。
そしてある程度網羅できてるかなと思えたら、まずは出てきた要件を一つ選んで、「深堀」します。例えば、品質に関わるある作業に焦点を当て、その作業に関わる要素をどんどん上げていく。深く深くその対象を掘り下げることで、その一作業がどんな要素から構成されているのかをはっきりさせます。
それがはっきりしてきたら、今度はどの要素から優先化しなくてはいけないのかを判断します。例えばその作業が10個の要素で成り立っていたとしても、全部を一気に片づけることはできない。時間も人も限られている中で、もっとも効果の高そうなものをいくつか選択し、順に片づけていく。こういう場合はパレート図を使うんでしたね。
深堀してさらに大きく広げていきたいなら、要素ごとにMECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)を使うといいですね。
以前もご紹介しましたが、要素を網羅するためには、このMECE(モレなくダブりなく)というのは、とても便利です。ツリータイプに展開して右へ行くほどアイデアを網羅するように広げていけばいいんですね。
そして広げたものは最終的には、「チェックリスト」のように機能します。
正直ダブりはあっていい。ただ、モレがあるのはとても危険なこと。特に今回の場合でいえば、品質に影響を及ぼすある作業の、すべての要素を、できる限り網羅したのち、優先化していきたい、という流れで動いています。漏れてしまうということは、その作業を「伝承」していけないということにもなってしまいますしね。
フレームワークのJust in time
このように、カイゼンのために、いくつか有益なフレームワークというのは確かに存在します。しかしながら、完璧なフレームワークもないし、あるいは完璧な要素の顕在化もまたあり得ないのだということは覚えておくといいでしょう。
フレームワークは、使い方を知っていれば確かにこうした段階段階で、我々を助けてくれるツールになります。が、もちろん使い手は我々人間ですから、完璧というものはあり得ません。
加えて、全部使わなければいけないというわけでもない。必要なものを、必要なときに、必要な数だけ使うという、フレームワークのJust in timeも心に止めておくのがいいと思います。
またよくある質問としては、どの段階で何を使ったらいいの? というものがあります。
これも答えはあってないようなものです。
拡げる系ならマインドマップやMECE、深堀系なら5 WHYとか、向き不向きはもちろんあります。しかしながら、どこの問題に対して、そういうアプローチが有効か、何を使うのかというのも含めて考えてみるというのが、型にはまり切らないためにも有効な態度です。型にはまれば、斬新なアイデアというのは生まれては来ませんし、柔軟に対応する能力も失われてしまいます。
そして、なにより、自分でフレームワークを作ろと思う姿勢も大事です。ちなみに私は、6W2Hの考え方とSIPOCの考え方を結合したフレームワークというのを以前考えてみました。事業計画などにも使われる6W2Hと、シックスシグマなどで使用されるSIPOC分析を合体させて、あまりにもわからない財務系のプロジェクトのサポートにつかってみたことがあります。私はこれを「6W2H SIPOC」と呼んでいますが、そのままですね。
ちなみにSIPOCの説明は以下のようになってます。
”SIPOCとは、業務プロセスのダイアグラムを構成する5つの要素[サプライヤー(Supplier)、インプット(Input)、プロセス(Process)、アウトプット(Output)、顧客(Customer)]の頭文字を組み合わせたものです。プロセス管理およびプロセス改善の技法のうちで最も使い勝手が良く、利用されることが多い技法です。特定されたコア・プロセスについてSIPOCダイアグラムでマッピングすると組織の中心的な活動が明らかになります”(SIPOC | 用語集 | ミツエーリンクスさん)
経理でそのプロセスを扱っている当事者の皆さんも、自分たちの作業の要素を考えてみたことがない。そして新しくできたチームであったため、共有すべき自分たちの仕事の情報が理解しあえていない(同じものを見ていない)という状態でした。
みんなでワイワイいいながらやったこのワークショップも、みなさん自分たちのプロセスが見えたと、とてもうれしそうにしていました。楽しかったですね。
まとめ
そんなわけで今回は、「カイゼンの糸口とフレームワーク」というお話でした。
大事なことは、我々のような外部の人間が、よくわからない作業の改善をサポートしなくてはいけないときに、何をしていたらいいのか、という部分です。それがもちろん業務の理解になるわけです。
そして現場の皆さんは業務内容や、漠然とした問題点はわかっていても、じゃどう手を付けていいのかわからない、という状態なのです。
ですから、お互いある知識をコラボレートさせながら、一緒にやっていくという姿勢はとても重要になってきます。謙虚に、そしてwin-winを意識しながらやるといいと思います。今回のリーダーさんも、最終的にはこの「win-win」を理解してくれて、一気に距離が縮まっていった気がしました。互いの信頼関係も、もちろんカギになります。
この6W2H SIPOCシート(↓)、つけておきましたので、ご活用ください。まずは手書きで、大きな紙にみんなでやるのがいいですよ。コンピューターは後からで。
お試しください!