改善提案制度の作り方と必要なもの
Kaizen idea suggestion system.
皆さんこんにちは。今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
さて、改善活動は、企業生き残りのための活動。何とかして、収益性の高い(生産性の高い)会社にしたいと、営利企業なら誰でも思うはずです。
もちろん、「改善していこう!」というトップの方の号令で始めるのは、全然ありです。
ですが、なんか言われたことだけ、なんとなくやってるようで、どうも現場からの改善案や、実際の改善活動が生まれてこないなー、ということもあるのではと思います。
そこで今回は、「改善提案制度」の導入について、少しお話ししてみようかとお思います。全員が参加し、活発にアイデアを出しては、それがどんどん具体的な行動に移っていくような環境を作りたいなら、提案制度を導入してみるのも一つの手です。
この記事を読めば、提案制度の仕組みから、必要なものまでご理解いただけます。
改善提案制度
これは読んで字のごとく、働いている皆さんに、業務への「改善提案」をどんどん出してもらって、ムダがどんどんなくなるようにしていく制度です。
あるいは、もっといいやり方があるとか、実際に業務に携わる方から出てくる意見は、一考の余地があります。
普段、普通に働いていると、こうした考えを提案する機会というのは、なかなかないものです。でも皆さん何かしら、「こうしたらいいのにな」とか、「これ、今の時代に合わないから、やめてもいいのでは」というのは、ちょっと考えたりしているもの。
そうした、ちょっとしたアイデアに光を当てて、皆さんから改善提案として出してもらう。そしてこれに対して、少額でもいいので「賞金」を出します。「あなたのそのアイデアは、会社にとって有益なんです」という姿勢を出すことで、「それならちょっとやってみようかな」という気持ちにもなってもらえます。
大事なことは、「アイデアを出した人もラッキー、提案で業務が楽になり皆さんラッキー、会社もラッキー」みないな「Win-win」の関係が作れる制度にすること。間違っても、なんかどっかの改善ポスターみたいに、「アイデア出すのがお前の仕事」、みたいな態度でやらないこと。これははっきり言って、やる気もなくなるし、反発も生みかねない、と私は感じます。
トヨタに見る改善提案
当たり前ですが、企業は「人」です。人から成り立っています。企業の能力の差は、そこで働く「人」の能力の差でしょう。
この改善アイデア制度、もちろん改善アイデアが出て、職場がどんどん良くなるのに越したことはないです。
しかしながら、もう一つの側面、「アイデアを出す」という、「人間の知恵」への探求心と実践力を養うという部分が、実は大きな財産(人財づくり)に有効だったりします。
改善の元祖トヨタにも、もちろんあります。トヨタの資料によると、制度が始まったのは、1951年。
青木幹晴さんという元トヨタの方も、ご自分のブログで、この改善提案制度のことを触れられてますね。
トヨタ生産方式の憲法に抵触しないよう心がけながら、「常識」の範囲の小さな改善を積み重ねて、結果として「脱・常識」といった状況を実現させているのだ。
私のカイゼン師匠も、「提案で一回500円」という話をよくしてくれましたが。
またいつものお話しに戻りますが、結局は、「続けることの大切さとトップの意志」です。
最初はいろいろ考えもあって、提案もいっぱい来るかもしれません。でもしばらくすると「打ち止め感」が半端ない。
ここからが本当の、改善定着のための真価が問われるところ。ぜひ社長さん以下、部長さん、改善事務局一丸となって、制度を殺さぬように、盛り立てていってください。
「改善は一日にしてならず」、です。
サウジトヨタでの取り組み事例
サウジのトヨタでも、もちろんこの改善提案制度がありました。私も改善部所属でしたので、運営側です。
実は何度か、制度が死にかけそうになることも経験しました。
トップは理解してくれてはいますが、何せ忙しすぎて、ずーっとここに注意を払っていることなど不可能です。
ですので、事務局の方で、定期的にテコ入れするわです。
例えば、今回はこちらの部門とのコラボキャンペーン。部内からも部外からも応募可能です。アイデアを募ります。きわめて優れたアイデアには、そちらの部から特別賞(iPad)なんかだしてもらって、社内報で宣伝したりもしました。
年末になると、「アイデアをいっぱい出してくれた人」には、改善Projectの表彰と同じイベントで、副社長から賞状とトロフィーを授与してもらったり。こうすると、悪い気はしないですし、彼・彼女が、いわゆる「オピニオンリーダー」になって、どんどん制度の認知度も上げてくれますしね。
制度があるだけでは意味がないです。どう有効活用するかが、改善事務局の腕の見せ所になります。
必要なもの
改善提案制度に必要なものを、最後に少し説明しておきます。
改善事務局
まずは改善事務局。これは提案制度だけではなく、会社の改善の仕組みそのものを、後押ししていく部門です。いろいろ役目がありますが、この提案制度に限って言えば、
- 提案制度の仕組みづくり
- 予算用意
- アイデア判定基準作成
- 他部門との調整
- アイデアの評価
- キャンペーンや表彰などの実施
- レポートなどで、上層部へ報告、協力を得る
- データ蓄積と処理
こんな感じですね。
改善協力者
これは、ほかの部に根まわしをしておいて、部の中に、提案制度をサポートしてくれる人をあらかじめ用意しておくことです。
時々、出てきたアイデアが専門的過ぎて、事務局ではちょっと判断がつかない、というケースもあります。
そんな時は、、そうした協力者に、アイデア内容を評価してもらいます。そうすれば、ちゃんと「わかる人に判断してもらった」という、納得感も出ますので。
たまにあるのが、「なんでこのアイデアがダメなんだ!」って文句言ってくる人。「アイデアは、出した本人にとっては、いつも最高のアイデア」なんですよね。
アイデア記入用紙と回収箱
このご時世、もちろんデジタルでやるのが普通ですが、まずは、昔ながらの仕組みでやった方がいいですよ。
これはどんな改善事例でもそうなんですが、いきなりシステムを入れると、だいたい失敗します。
なので、紙に書いたものを、回収Boxから回収して、評価してみて、発表して、などという一連の流れを実際にやってみてから、デジタル化をやっていきましょう。なんでもそうですが、実際にやってみないとわかりません。
やってみて、プロセスがはっきりしてから、デジタル化、です。
ちなみに、用紙はシンプルなものにしましょう。記入することが多いと、「めんどくさくてやらない」のが人情ですから。
トップの旗振り
何度も言いますが、これが一番重要です。
あくまで改善活動の長、社長さんとかが言い出しっぺで、活動をけん引するスタイルにしておくことです。そして、そのトップの命で、各部長さんにも協力してもらうことになります。先ほどの協力者の任命なども、部長さんたちと、やっていかなくてはならないですしね。
生かすも殺すも、トップの意志ですよ。
まとめ
そんなわけで今回は、「改善提案制度」の導入から、運営までお話ししてみました。
「アイデアを出せ出せ」と上から押し付けるのではなく、「出すと楽しいかもしれない」と思ってもらえたら、かなり成功です。
こちら、兵庫県高砂市のプラスチック加工会社「匠工芸」さんの事例ですけど、すごい楽しそう。
「ありがとうと言われると、ガチャを回す権利がもらえる」というもの。
こんな感じも楽しそうですよね。「改善提案で、ガチャ用コイン。運が良ければ1000円ゲット!」とか言って。
さっきの賞金制度や、表彰なんかもそうですが、「楽しいは正義」になりますから、ぜひそんなことも考えに入れながら、導入してみてください。
続ければ、組織としても大きな財産になりますよ。
そして、独自のやり方を、遊び心含めてやっていけばいいのでと思います。
今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。
ではまた!