あなたの改善活動 効果をお金で表そう! シンプル改善管理会計
Managerial accounting.
皆さんこんにちは。本日もお疲れ様です。今日も改善Projectをサポートしている、Kusunoko-CIです。皆さんの業務改善、いかがですか? 順調に進んでいますか?
改善は、お客様のためにする。求められている品質を、そして納期を100%守る。そして、それらの達成を、より少ない労力で、かつ今までと同等以上のアウトプットで出せれば言うことなしです。
言い方を変えれば、いかに「楽になりながら」、同じか、それ以上の結果が出せるかということですね。そうすれば、コスト削減は、必ず後から結果としてついてきます。
逆に言えば、コスト削減だけを追って改善してはいけない、ということなんですが。
経営陣はそうは見ない。まして外資系ならばなおさらです。
四半期ごとに、株主に対して、財務諸表でもって、進捗を報告しなければならない。そこでいい結果が出せなければ、彼らにとっては、それはそのまま近い将来の「さようなら」を意味しています。それはそれできついですよね。
そんなわけで、改善をすれば、「いくら削減できたのか」は必ず問われます。いいことではないですが、それもビジネスとしては仕方ない側面もある。
そこで今回は、改善の効果を、どうお金に換算して見せていくかのお話です。最もシンプルで、かつ作業者さんの努力が反映されやすい方法になります。「あなたの改善活動 効果をお金で表そう!」です。
トヨタの改善コスト計算
トヨタにおける改善のコスト計算は、極めてシンプルです。それがこちら、
- 「一歩一秒一円」(工場内の作業)
- 「一歩二秒一円」(事務作業)
です。
これは、本当に言葉そのまま意味です。
生産現場で、作業者さんが一歩歩く、あるいは一秒使えば、一円のコストがかかっているということを表しています。
事務作業だとそれが一歩歩き、あるいは2秒使えば、一円コストとしてかかっている、という意味ですね。
とてもシンプルです。
無駄に歩かない、作業にかける時間も最短でなければならない、という強い意思が感じられますよね。
これがトヨタ改善の原点になっていて、作業や業務の時間短縮の、懸命な努力を測る指標となるわけです。
ですので、リードタイムやサイクルタイムの時間短縮改善も、純粋に減らした分だけコストが削減されたのだ、ということを理解しやすい。歩くこと、作業にかけている時間の短縮が、会計的にも意味があると思える指標作りになっています。
あなたの部署の改善活動が、1時間リードタイムを短縮したのなら、1時間=3,600秒で、36,000円コストが削減された、と報告すればいいのです。
あるいは、1km/日、作業者さんの歩く距離が削減出来たら、歩幅70㎝として、一日当たり1,428円削減出来きた。よって、20日間の稼働日数で、一人月当たり28,571円削減だ、と言えばいいのです。その作業に当たる方が5人いるなら、単純に5倍です。
「一歩一秒一円」の検証
「一歩一秒一円」とか「一歩二秒一円」とか、どこから出てきたのか、と疑問に思う方もいらっしゃるのではと思います。そこのところを少し検証してみます。
例えば、月給与20万円で働いている作業者さんがいるとします。毎日8時間、月20日間働いている方の秒給は;
200,000円÷20日÷8時間÷60分÷60秒=0.3472…円。
だいたい0.3円ですね。
ただし、従業員一人を雇うということは、様々なコスが発生しています。例えば、
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 労災保険料
- 雇用保険料
などなどで、一般的には、給与の2倍から3倍の費用がかかっている(なぜ給与の3倍稼ぐ必要があるのか – 社会人の教科書)
それだけではないです。
在庫を抱えれば、それを維持するため、管理費用がかかります。これは一般的には、その抱えている在庫金額の15~25%というのが相場です(在庫管理の改善・生産性向上なら在庫管理110番)。
また生産に関わる光熱費はどうでしょうか? 生産にかかる時間が長ければ長いほど、そうしたコスト(変動費といいます)が、よりかかることになります。
まさに「時は金なり」。
こうしたことを考慮してみると、このざっくり「一歩一秒一円」というのも、あながち間違った数字ではないのです。
KPIはわかりやすくシンプルに
もちろん、「うちはもっと厳密にコストを出したいんだ」というなら、それはそれでいいと思います。
現場の作業者さんの給与体系もそれぞれ違うでしょうし、先ほどの部材管理費や光熱費ももっと細かく出していくことも、もちろん可能です。さらに間接費や固定費をどうするの? なんて言うのも、厳密に言えば議論の対象になります(ABC分析)。
ただし、正確さを追いかけ、複雑になってしまった計算式は、必ず使われなくなります。
なぜか。
それは、めんどくさいからです。
正確に出そうとするその心意気は、素晴らしいことだと思うのですが、カイゼンは、皆さんご存知のように、一回やって終わりではないですよね?
改善されてから、維持する仕組みを作り、そこを新たな標準として、更なるPDCAを回していかなくてはいけないわけです。継続的に。より速く。
毎日の業務を行い、また日々の突発的な問題の解決にも奔走しながら、複雑な計算式を使って、事細かに状況をモニターしていくことが可能だと思いますか?
おそらく無理ではないかと思います。
そうであれば、「えいやっ!」と「一歩一秒一円」とか、「一歩二秒一円」の計算式で、ざっくりでも改善の効果を計上してしまいましょう。シンプルなら、改善に参加してくれた作業者さんたちにもわかりやすく、そして成果が実感として感じられやすいはずです。
また、その改善後の新しい作業標準が、キープされているのかを測る尺度としても、とても使いやすいのです。
ご経験あるかと思いますが、多機能すぎる家電というのは、なかなか使いづらいもの。で、結局は、決まった機能のみの使用に落ち着いてしまうような。あるいは単純に使われない。
改善指標(KPI)は、わかりやすくシンプルに。
それが改善と、改善維持の極意です。
まとめ
ということで今回は、「あなたの改善活動 効果をお金で表そう!」でした。
- 「一歩一秒一円」(工場内の作業)
- 「一歩二秒一円」(事務作業)
で計算してしまうんでしたね。
以前もお話ししましたが、私自身は改善活動で、コストだけを追うことには反対です。
それは結果でしかないからです。
改善は人づくり。改善マインドを持つ人を作ることに成功すれば、コスト削減は必ずあとからついてきます。
ただ、経営層が納得しない、時がある。
そんな時は、こうした指標を使うことのコンセンサスを取りましょう。そしていずれは、会社の中で、独自の「管理会計」手法を作っていきましょう。
正直、工場内でできるカイゼン活動というのは限界がある。むしろサプライチェーン全体でお金の有効活用を見ていかなくてはいけないと思いますが。
いずれにせよ、管理会計できちんと追いかけていくことが必要です。
そうは言いつつ、工場内作業がすでにワールドクラスか、というとそうでもないはずです。まずは活動し、皆さんで成果を感じながら、どんどん改善したという結果を出していってください。結果が出れば聞く耳も持ってもらえるはずですよ。
皆さんの改善が、実り多きものになりますように。
今日も読んでいただきまして、ありがとうございます。
ではまた!