ご質問いただきました:「Cp・Cpkについて」
皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
さて先日工程能力(Cp・Cpk)について 、自動車部品製造会社にて営業をしておられる、H・S様からご質問いただきました。今回はそちらに回答する回になります。
こちらは「工程能力(Process Capability)とは シックスシグマ 「Measure」でやること 5」へのコメントとしていただきましたが、より詳しい返答の為、記事として掲載する了承をいただきました。
H・S様、ご質問ありがとうございます!
質問内容
ではさっそく今回の質問内容です。以下2つになります。
- このCp値、分母の6σ(中心から±3σ)と、分子の上下規格幅が一緒なら、当然「1」という数値になるという箇所ですが、どのように計算したら、1という数値になりますでしょうか?
- Cp値は、USLとLSLの幅の事を指しており、Cpkは、狭い方の偏りに対する中心値という認識でよろしかったでしょうか?
1つずつ順にみていきます。
1.Cpが1とは?
まず1の質問から見ていきましょう。
このCp値、分母の6σ(中心から±3σ)と、分子の上下規格幅が一緒なら、当然「1」という数値になるという箇所ですが、どのように計算したら、1という数値になりますでしょうか?
まず標準偏差(SDあるいはσ)の考え方からですが、こちらは取ったデータがどのくらいばらついているか、つまりどのくらい平均値の周りに集まり、あるいは離れているかを示すものです。
つまりこのσが小さければ小さいほど、バラツキは小さいということが言えます。バラツキが小さい=工程の能力が高い、安定しているということですね。
例えば今、USL(規格上限値)が13㎝、LSL(規格下限値)USL7㎝で、すなわちその規格幅が6㎝となる製品の製造工程があったとします(USL-USL)。
この工程の現在の状態を調べたところ、平均が10cmで、σが1㎝であったとします。
工程能力の式は以下のように表されるのでしたね。
この式に、今あるデータをそれぞれ代入してみましょう。
分子はUSL-USLですから、13-7=6㎝です。
製品のバラツキσは、今1㎝ということがわかっていましたから、分母の6×σは6×1㎝で6㎝ですね。
ということは、分子6分母6、6分の6(6/6)ですから、この工程の現在のCp値は1ということができます。
ちなみに規格幅をそのままに、バラツキσが例えば0.5㎝となる場合を見てみましょう。
そうすると分子は変わらず6㎝ですが、分母が6×0.5=3となりますから、Cp値は2となりますね。
その逆にバラツキが大きく、σが2だったならば、分母は6×2=12となって、Cp値が0.5となります。
なんとなく、分子と分母の関係性や、「1」となる意味が理解できましたでしょうか?
2.Cp、Cpkとは?
次のご質問が
Cp値は、USLとLSLの幅の事を指しており、Cpkは、狭い方の偏りに対する中心値という認識でよろしかったでしょうか?
です。
これらに応えるために、まずはCpの考え方から確認していきましょう。
Cp値とは
Cp(あるいはCpk)というのは、初めのうちはよくわからない指標ですよね。私も学び始めは、なんのことやらさっぱりというのが正直なところでした。
Cpはよくガレージと車の例を使って説明されます。
上図にあるように、ガレージを規格幅、車の幅をバラツキと考えてみてください。
今CPが1ということは、このガレージと車の幅がぴったり一緒ということを示しています(下図)。
ですので、例えばCpが1.33とか、1より大きい時は、この車の幅(バラツキ幅)が、ガレージの幅(規格幅)より小さくなっていることを意味します。
車が楽に、こすることなくガレージに駐車できるわけです。
計算で言えば、分母の「6×σ」の、この「σ」の値が小さいことで分母全体が小さくなっているわけです。
ご存知のように分数は、分母が小さくなれば数字は大きくなりますから、このCp値もどんどん大きくなる(工程がより安定している)ということになりますね。
ただしこのCp値は、工程が完全に安定している場合にのみ使用できるという条件が付いています。次節で、これがどいうことなのか少し考えてみましょう。
Cpkを使用する理由
モノづくりをやってみるとわかるのですが、上のCpでの例のように、規格幅の中心と、実際に作ったモノのサイズの中心が完全に一致しているなどということは、ほぼ起こり得ません。
だいたいどちらかに振れるのが一般的です。
そのために実務では、このCpkという考え方を使用します。CpkのKは「かたより」のKでしたね。
ここで、Cpkの式を確認してみます。
Cpと違い、分子はデータの中心であるμ(平均)を使った引き算になっていることがわかります。
ちなみに分母も、データ分布の中心(μ)から片側半分ですから、6ではなく3をσに掛けたバラツキ幅となっています。
ここで今規格幅と車幅(バラツキ)の関係が、以下の図のようになっていたとしましょう。
今規格値USL=13cm・LSL=7㎝で、車のサイズの平均は11㎝でバラツキ(σ)が1.1ということがわかっているとします。
見た感じ、上に振れていてUSL方面がやばいことはわかりますが、Cpkの式に入れて計算してみましょう。
Cpklは、11-7 (μ―LSL)/ 3.3 (3×σ、σ=1.1) ですから、1.21…。
Cpkuは、13-11(USL―μ) / 3.3 (3×σ、σ=1.1) ですから、0.60…です。
もうお分かりと思いますが、この振れてしまってやばいほうのCpk、すなわち計算で言えば出てきた値の小さい方を使って、工程の安定状態を確認する指標とするのですね。
ですからこの例で言えば、Cpkuの0.06…を使って判断することになるわけです。
ここで工程能力指数(Cp・Cpk)と、一般に言われている能力の判断表を再度載せておきます。
先ほどの0.60…はこの表で言うと、「工程能力は非常に不足」しており、「品質が満足できる状態にない」ので、直ちに改善策を講じていかなくてはならないことがわかります。
これはあくまで目安ですから、お客様や業界の中で決められている数値に従うことが求められます。
ちなみにH・S様のおられる自動車部品関連であれば、初期工程能力調査があり、1.67以上のCpkが求められるとされていますね(図解ISO/TS 16949コアツール 出来るFMEA・SPC・MSA)。
ということで、これらをまとめてみますが、
- Cp値は、USLとLSLの幅を、実際のバラツキの幅(σの6倍)と比較したとき、規格幅が実際のバラツキより大きいのは小さいのか、はたまた1ピッタリなのかを見る数値
- Cpkは、データの平均から規格幅に対する偏りの狭い方を見つけ、そちら側の規格限界値とデータ平均の幅を、実際のバラツキの幅(片側だから半分の3σ)と比べてみるための数値
というのがそれぞれの意味になります。
出てきた数値は指標として、先ほどの工程能力表を参照することで、処置(アクション)の判断に使用できるのでしたね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、自動車部品製造会社にて、営業をしておられるH・S様からのご質問に回答する回となりました。
工程能力(Cp・Cpkについて) でしたが、なるべく分かりやすく書くよう努めてみました。
この理解のためには、まず平均と標準偏差ということが、前提としてわかっていなくてはならないと思います。
まずはそちらの基礎的な部分を少し勉強してみて、またこのCp・Cpkという考え方に戻ってくると、より内容がとっつきやすくなっているはずです。
なので、理解するまでは時間がかかるものの、わかってしまえば何ということはないのではと思います(たぶん)。
今回の記事が、H・S様の理解の一助になりますように。ご質問ありがとうございました。
皆さんも、カイゼンに関する質問などありましたら、ご要望フォームからお問い合わせいただければ、今回のようにブログ記事として回答させていただきたいと思います。
お体にお気をつけてお過ごしください。
今日も読んでいただきましてありがとうございました。
ではまた!