書評『平常心のコツ』
Book Review: 「Tips for Normal Mind」
皆さんこんにちは、寒くなってきましたね(書いてる今は年末です)。風邪などひかれていませんか? Kusunoko-CIはちょっと鼻水と咳に悩まされております。やっぱり健康あっての生活ですよね。私は鼻水とくしゃみがひどいとほんとにイライラさせられてしまいます。平常心が失われていますね。
そこで今回は、書評『平常心のコツ』です。2013年に初版が発行されてからすでに20万部を突破とのことで、すでにベストセラーの仲間入りのこの本、果たして平常心を保つための指針となり得るのかどうか、ちょっと検証していきたいと思います。
平常心とは
まずは「平常心」が何なのかしっかり位置づけしましょう。コトバンクさんからです。
へいじょうしん【平常心】いつもと変わらない平穏な心びょうじょうしん【平常心】[仏] 日常ふだんの気持ち。
OHH、二つあるんですね、びょうじょうしん。
どうやら仏教から来ている言葉のようです。常に日常を過ごす普通の心の状態をキープする、している心のありよう、という感じですかね。
『平常心のコツ』著者紹介
以下アマゾンンからの情報ですが、本にも同じ紹介文が載ってます。
植西 聰(うえにし・あきら)心理カウンセラー
東京都出身。学習院大学卒業後、資生堂に勤務。
独立後、「心理学」「東洋思想」「ニューソート哲学」などに基づいた人生論の研究に従事。
1986年(昭和61年)、20年間の研究成果を体系化した『成心学』理論を確立し、人々に喜びと安らぎを与える著述活動を開始。
1995年(平成7年)、「産業カウンセラー」(労働大臣認定)を取得。他に、知客職(僧位)、「心理学博士」の名誉称号を持つ。
ちなみにこの名誉称号というのは、ある種の団体から優れた功績を認められて与えられる資格や肩書ですね。で、私の持ってるこの本ではこれが「名誉商号」となっていまして、ずいぶん変わったタイトルもあるもんだと思ってしまいました。
書評『平常心のコツ』
Question mark
正直、この手の本は私あんまり信用しません。だいたいは、「うん、その通り。正しいと思いますが、どうやればいいんですか? 書いてあることができるなら、とっくにやってますけど」という感想しか出てこないんですよね。
これが我々が心というものを扱う時に、一番難しい点だと思うんですよ。もちろんこの本に書かれていることは素晴らしい内容で、実践出来たらそれこそいつでも平常心を保つことができると思います。それはまったくもって同意いたします。
ただ、例えば第1章のP32、『「いやなお客さん」を「いい客さんに」変える方法とは?』の中で、「お客さんの話をよく聞きながら、冷静に毅然とした対応を取る」のが大事か出てきます。「できないことはできない、困ることは困ると毅然とした態度ではっきり言いえば、とんでもないお客さんに振り回されることはなくなる」って書いてらっしゃいますけれども、Kusunoko-CI、すごい大きな「?」を出してしまいました。
世の中、この本で書かれているようなまともな人たちばかりではないです。私が小売で働いていた時、何度暴言を吐かれたかわかりませんし、一人終わってもまた一人、また一人と次から次へと現れてずいぶん疲弊したものです。私はこの根本的な解決方法はただ一つ、「辞めること」以外に道はないと思っています。
もちろん、きちんとした対応でいいお客んさに変わったこともありましたよ。良くしていただいた方もいっぱいいました。が、それは感覚的に言って1割にも満たないです。場所や客層というのもあるんでしょうが、だいたい「他人を変えよう」という考え自体があまりよろしくないのでは、思ってしまいました。
これはOne of themで、いろいろちょっと?なところは出てきました。先にも述べたように「心」を扱う本を読むと、いつも出てくる居心地の悪さです。
Agreed points
とはいえ、いいこともいっぱい書いてあります。じゃなきゃ20万部も売れてないですよね。
この本のいいところは場面場面、異なったSituationでアドバイスというか、「こういうふうに考えてみたら心が楽になるよ」という考え方を提示してくれる点ですね。
遅くなりましたが目次を上げてみると、
第1章 他人の言葉に惑わされない
第2章 クヨクヨしないで生きていく
第3章 鈍感に生きていくほうが幸せになれる
第4章 自分の弱さに素直でいるから、心が安らぐ
第5章 「どうにかなるさ」と楽観的でいる
第6章 「人は人、自分は自分」の関係で人とつきあう
第7章 成り行きに任せるほうが、いい結果が出る
第8章 心を癒す方法を持っておくから持続力がつく
第9章 バランスよく生きることを心がける
とけっこう心惹かれる内容が多いです。
Agreed points と言いますか、今回あーそうだよなーと思った点をパパっと上げてみると、
- 少し鈍感なくらいがちょうどいい
- いい人はやめよう
- 失敗は成功のためのヒント
- 他人とは分かり合えないもの
- 日常業務を淡々とこなすことで平常心が生まれる
このあたりかなと思います。もちろんこうした言葉に出会ったのはこれが初めてではないですが、再確認といいますか、そうなんだよなー、と感じながら読了。
あ、あと、「今やることに集中することで結果がついてくる」というのと、「辞表を胸に働け」。この辺は、精神科医の樺沢先生や、転職の思考法の北野さんの著書にも書かれていて、やるよう心がけようと誓った部分ではありました。
平常心 英語とのちがい
これはいろいろ調べてみると、「Presence of mind」というのに行きつきました。
Cambridge Dictionaryによれば
the ability to make good decisions and to act quickly and calmly in a difficult situation or an emergency:
難しい状況や緊急事態時に良い決断をし、素早く落ち着いて振舞える能力。
というのがありましたが。なんか違う感が半端ない。
以前カウンセリングを受けているときに伺った話ですが、西洋の思想は論理の追求で、かつ近年そこに行き詰まりが見え始めた、そこで海外の方たちが目指した方向が「東洋思想」であったと。
これは結構言われていることですけれども、西洋的(この辺突っ込み始めるときりがないのですが)な考え方は、自然対人間(自分たち)といいますか、それと向き合い、突き詰め、論理を形成しようとする態度であるのに対し、東洋的思想というのは、「我々は自然のことわりの中に在る」という考え方をする、とざっくり言えるかなと思います。ざっくり過ぎてすみません。
で、こうした世界観の違いが、この「平常心」と「Presence of mind」を並べてみたときに、顕著に出るのでは、と。
結局のところ、我々日本人にとってしっくりくるのは、こうした世界観であると思います。「平常心」という言葉そのものがもともと仏教の言葉ですしね。この植西さんの思考の根底にある、仏教や東洋思想からの影響が大きく感じられる一冊でした。
Action
さて、大事なことはアクションなんですよね。理想はこうだよ、でそこに到達するには、こうするといいよ、という具体的なアクションの部分。これがないとなんとも再現の仕様もありません。私がおすすめできるのは以下です。
- 自己肯定感を高める
- ポジティブ日記(3 good things)
- 瞑想
- ゲシュタルトの祈り
- 仏陀式気にしない方法
- VisionとCore Valueの設定
このあたり、すでにブログに書きましたのでご参照いただけますと幸いです。
結局こうした心を手に入れるためにできることで、一番重要なのが「自己肯定感」の、しかもそのワークをいろいろ試してみることかもと思います。
何でもそうですが、成功の秘訣はとりあえず試してみる、です。うまくかなくてもいいんですよ。それがあなたには合わなかったというだけで。また何か違うのを試してみることです。もしかしたら次のは心にぴったりくることもあるかもしれない。大事なのはやったということです。何かアクションを取れば、変わる可能性が出てきます。アクションを取らなければ、ずーっとゼロです。
まとめ
今回は、書評『平常心のコツ』ということでお送りいたしました。こちらの本、割とお坊さんの説法に似た感じの雰囲気が漂っています。そういう意味では、好き嫌いは分かれるかもしれませんね。でも書いてある内容は、納得のいくものも多いです。本書に書かれている「と思うようにする」「考え方を変えてみる」というのも、おおざっぱですがアクションと言えなくもない。心持一つということもあるでしょう。読んでみて、とりあえずそう思うようにしてみるというのも変化への第一歩です。ぜひ!