測定システム解析(MSA)とGage R&Rとは シックスシグマ 「Measure」でやること 4
皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
製造においては、製品の長さや重さをチェックして、お客様要件を満たしているかどうか判定することが常です。お客様に決められたサイズになっていないと、「不良」ということになってしまいますね。
シックスシグマのProjectでは、当然こうした不良や不具合を、いかに減らしていくかが目標になっていくわけですが、もし測定する機械そのものが不正確ならどうでしょう?
取っているデータ、解析するものそれ自体が、おかしな数値になってることになります。平たく言うと、Projectの前提が崩れてしまうわけですね。
このように、現場で使っている測定そのものの「正確さ」を問うのが「測定システム解析(MSA=Measurement System Analysis)」と呼ばれるものです。
そこで今回は、シックスシグマProjectにおける、「MSAとGage R&Rとは」です。DMAICの「Measure」でやること、その4になります。
計算式など、突っ込んで行くととても難しい話になるのですが、まずは基本定な考え方のみ、簡単にまとめました。初心者向けの内容になっています。
ぜひ概要をつかんで、皆さんのシックスシグマ理解にお役立てください。
測定システム解析(MSA)とは
みなさんが何か買い物をするとき、だいたいの商品に内容量が記載されているはずです。
今、冷凍ピザを買おうとしているとします(またピザ)。
裏面に100gと記載されているのに、実際に量ったら90gだった。これでは詐欺にあったようなものです。
「もうここのピザは買わない!」、とか思ってしまうのではないでしょうか。
製造する側というのは、お客様要件・規格を満たすために計測して、良品だけを出荷するように努めています。
しかしながら、先にも述べたように、その計測機械が壊れていたり、やり方がおかしかったら、計測自体が意味のない行為になってしまいますね。
計量器には100gと出ているのに、実際の重さが90gしかない、つまり誤差が生じてしまっている。
「ちゃんとピザの重さを計測できているか」が問われるわけです。
このように、測定器の誤差や、それをチェックする作業者のばらつき検証し、正確さを確認することが、この「測定システム解析(MSA)」になります。
シックスシグマのProjectで、問題解決のためにデータを取ります。その前提として、「そのデータが正しいのかどうか」を確認しておかないといけない。これがシックスシグマProjectで、MSAが使われる意味合いになってきます。
計測の確からしさの6要素
測定機器が確かである(誤差がない)ことや、測定する人によってのバラツキがないことを確認するには、以下の要素に着目する必要があります。
これらすべての検証結果がokであれば、きちんと計測できている=測定は正確だということです。
以下、英語と共に上げておきます。
- 分解能 Resolution
- 偏り Bias
- 直線性 Linearity
- 安定性 Stability
- 繰返性 Repeatability
- 再現性 Reproducibility
測定器の分解能(Resolution)
分解能は、「単位のこまかさ」です。
仮に「100g」のピザを量るのであれば、最小単位の1つ下まで読み取れる量りが必要です。つまり表示に、「100.0g」という、小数点第1位まであるもの。100gまでの表示だと、正確性に欠けているとされます。
このへん経験則とも言われていますが、金とか高価なものを買うことをイメージしてみてください。100g欲しいなら、きっちり100.0gくらいまでは見たいと思いませんか?
なので測定機器を購入するときには、前もって求められる精度に見合ったものを選ばないといけません。
買ってから、「ダメでした」では余計なコストもかかってしまいますからね。
偏り(Bias)
偏り(Bias)とは実際の測定値から、測定機器で取った値の平均値がずれているか否かを指しています。
例えば100gのピザを、1人の測定者さんに3回測ってもらいます。
この時、測定機器や測定者、測定サンプルは同じものであるようにします。
そして基準となる100gに対して、どの程度バラツキがあるかで、それらが現状OKなのかそうでないのかを判定します(計測の平均値 ― 基準値)。
バラツキ度合いが高い場合は、
- 測定手順に従わない測定者
- 基準値の測定エラー
- 測定の不安定性
などが潜在的な原因として考えられます。
直線性(Linearity)
測定する真の値に対して、測定した値の「ズレ」が直線的かどうかをみます。
例えば軽い(小さい)ピザを量る時には小さくズレて、重い(大きい)ピザの時は大きくずれるような場合、測定値のずれは直線的ではないですね。
直線的でない(偏っている)場合には、
- 機器の経年劣化
- 摩耗
- 校正(calibration)エラー
などの要因を調査する必要があります。
安定性(Stability)
安定性(Stability)とは、同じサンプルを測定するときに、時間の経過とともに測定値がズレていないかを確認することです。
測定機器は多くの場合、時間とともに変化する可能性があります。
例えば、機械的摩耗、電気的不安定性、外部環境の変化、経年劣化など。
毎日同じように安定したデータが取れているか=安定しているか?を確認するのも、「正確性」という意味において大変重要ですね。
繰返性(Repeatability)
繰返性Repeatabilityでは、同じ測定者が、同じ測定機器で、同じモノを複数回測定し、同じ値を取得できるかどうかを評価します。
例えば、同じピザをある測定者の方が10回測定して、その結果からバラツキがないかを確認します。
再現性(Reproducibility)
こちらは、異なる測定者が、同じ測定機器で、同じモノを測定し、同じ値を取得できるかどうかの評価です。
例えば、3人の方に同じピザを量ってもらって、結果がどうなるのかを見る。
人によるバラツキを確認しています。
ゲージR&R (Gage R&R)
ちなみに2.偏り、3.直線性、4安定性の3つをまとめて、「校正(calibration)」と呼びます。
ただこの校正だけでは、測定者によるバラツキが考慮に入っていないことになりますね。ですのでこの部分を評価することも、当然必要になります。
測定する人によるズレをチェックするのが、4.繰返性(Repeatability)と5.再現性(Reproducibility)ということになります。
これらを合わせて、ゲージR&R(Gage R&R)と言います。R&Rは、両方のR(RepeatabilityとReproducibility)の頭文字を取ったものですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「MSAとGage R&Rとは」と題しまして、取ったデータの正確性を問う部分のお話しでした。
要素としましては
- 分解能 Resolution
- 偏り Bias
- 直線性 Linearity
- 安定性 Stability
- 繰返性 Repeatability
- 再現性 Reproducibility
の6つでしたね。
それぞれ「きちんと計測できている」ことを確認しなくてはいけません。Project遂行の根幹にかかわることは、理解していただけたのではと思います。
また、当然Projectであるなしにかかわらず、不正確な測定でチェックし続けるということは、「不良を良品として出荷し続ける」ということでもあります。かなり恐ろしい話ですよね。
ですので、ぜひこのようなMSA・Gage R&Rを、しっかり実行されてみてはいかがでしょうか。
今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。
では!
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