5分でわかる3定(と5S) 海外展開例も
皆さんこんにちは! 今日もどこかでカイゼンサポート、Kusunoko-CIです。
本日は、モノ・在庫管理の「3定」についてのお話しです。5S活動の一環としても重要なこの3定は、カイゼン活動の基本中の基本になります。
それぞれの意味や、考え方・実行の仕方をまとめておきましたので、ぜひご確認ください。5S・見える化との絡みも説明しています。また海外で使用する際の英語表現もつけておきましたので、お役に立てれば幸いです。
3定とは
3定とは、定位(置)・定品・定量という3つの言葉の「定」から来ています。モノの管理条件のひとつである整頓の基本になります。
それぞれ3つの定は
- 定位(置)・・・置く場所を定める
- 定品・・・置くものを定める
- 定量・・・置く量を定める
というルールを、モノの管理に適用することを意図して出来た言葉です。
整頓は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の2番目でしたね。
この3つ「定」をルール化して実践することで、どこに何があるかが分かり、必要なときに必要なものをすぐに取り出せるようになります。
最後の定量は、不必要な在庫を持つことを制限してくれますので、これも重要です。
3定がきちんとできた職場でなければ、必要なものを、必要な時に、必要な分だけ使用するJITのモノづくりを行うことはできません。
ちなみに海外では、5Sと違って訳しづらいせいもあるのか、この3定は全く浸透してないです。少なくとも私は、使用されているのを聞いたことがないですね。
敢えて英語にするならば、
- Tei E – (Where to put): Decide where to put items and display them clearly.
- Tei HIN – (What to put) – Decide what item needs to put.
- Tei RIYO – (How many to put) – Decide how many quantities of items need to put.
のような感じになるかと思います。
「Decide where, decide what & decide how many」で「3D control」とか補足説明してあげると理解しやすいかもしれませんね。
位置の「い」だけは、発音上「E」のほうがいい気がします。
3定のメリット
3定が正しく実行されている工場や物流現場では、誰が見てもモノの状態が瞬時に分かるようになっています。
これにより、目当てのものを探し回ったり、誰かにそのモノの場所を聞いたりする時間が無くなるはずです。「探す」というのは全く付加価値のつかない動きでしたね。
置くモノ・量も決まっていますから、何かあった場合はその異常に気づきやすくなります。
モノや在庫が少なくなっていることや紛失したこと、あるいはいつ発注しなくてはいけないのかの管理もしやすくなっていきますね。
目で見る異常管理、いわゆる見える化ができている状態です。
そのためには、当然この3定のコンセプトが全員に理解されていることが前提になりますが、仕事全体にムダがなくなり作業効率が上がる。
また副次的効果ではありますが、3定で整えられた仕事場は、外部の人から見られたときに良い印象を与えるでしょう。
顧客に対しては大きな安心感を与え、信頼とその後のビジネスを勝ち取るきっかけにもなっていきますよね。
3定 具体的な進め方
それでは3定それぞれの具多的な進め方を、サラッと確認しておきます。
定位
定位のポイントは「場所がわかりやすく表示されていること」です。
倉庫などで展開する場合は、手順として
- ロケーションのマップ作成
- 棚割表を作って、棚ごとに提示
- 棚にもプレートを貼り、処番地を明確にする
のように、広い範囲からだんだんと絞り込んでいきます。
作業ステーション等においても同様に、まずはモノの「処番地」を明示します。
定品
次に定品で、決めた場所に置くモノ・在庫の品目を決定します。定品を行う時は、以下のようなモノの特性を考慮しましょう。
● 作業の流れ
モノ・在庫は、出来る限りよく使う場所の近くで保管します。作業の流れを阻害していないか確認してください。
● 種類
モノを種類ごとに分けておくことで、ピッキングや使用の際の混乱を排除することができます。
● 使用頻度
使用頻度の高いものを取り出しやすい位置に配置します。いわゆる「ABC分析」で、よく使われるものが通路に近い側、といった配置を考えていきましょう。
また棚に関しても、人間が一番取り出しやすい動作の「ストライクゾーン」に、頻度の高いもモノを置くようにします。
●作業者への負担
一つ目の流れにも通じるところがありますが、作業者が作業しやすいかどうかの観点は忘れないようにしてください。
これには重いものは下の段、といったエルゴノミクス的なことも含まれてきます。
定量
最後の定量は、それぞれの在庫に対して適切な量を定めることです。
定量のポイントは、安全に在庫管理できる量を分析し、適切な量を定めることです。
需要・供給の適切な量は、在庫管理をデータ分析によって判明する値なので、最初のうちはざっくりと安全な在庫量考え、段階的に適量に近づける形で始めていきます。
必要量だけを作業場に持ち込み、残りは倉庫で保管という手もありますね。
この時、「ここまでになったら発注する」という発注点管理を行うといいでしょう。作業場の置き場を必要量しか置けない形にすると、ムダにモノや在庫を抱えることができなくなるのでおすすめです。
3定 定着のコツ
置くものと置く量が分かりやすいように工夫することです。こうした工夫は、ある種のポカヨケとして働きます。
- 置くモノのシルエットを保管場所に描き、置き方と置くものを形で示す
- ウレタンなどをモノの形にくり抜き、はめ込み式で保管する
どちらも共有物管理に最適で、新人もベテラン同様、置き場所・置くモノ・置く数・置き方が瞬時に理解されます。
また、モノの置き場はオープンにしましょう。
家庭と違って仕事場は、すべてのモノが見えるようになっていることが基本です。キャビネットであれば扉を外したりして、正常・異常が一目で判別できるようにします。
また「扉の開け閉め」は、扉が存在するあいだは「付加価値は付かないが必要な作業」と分類されていますが、そもそも扉がなければする必要もない動きです。
細かなことですが、作業効率のカイゼンというのは、そもそもその作業がお客様に価値をもたらしているのかをしっかり見極めていくことから始まります。
こうした考え方を「モーションマインド」と言います。作業や動作の問題点を判断し、より効率的な方法を探求し続けようという心構えや能力のことです。
5Sや3定は、こうした考え方を育み、効率化を実施する実力を養うのに効果的です。「5Sが出来なければカイゼンできない」、というのはこうしたところから来ている言葉になります。
作業者自らが、作業や動作に問題を発見してカイゼンしていく。その小さな積み重ねが大きな変革となっていきます。
当然このようにカイゼン・変更を行った場合は、周知徹底していきましょう。
ロケーションや資材の種類、場所が変わる度に、それが新しい標準ですから、決まりをアップデートして全員に伝えておかなくてはいけませんね。
また定着には、管理者の有言実行力・リーダーシップも問われていきます。時間はかかりますが、これがいわゆる現場力の育成ステップになりますので、忍耐力をもって遂行してください。
3定含む5SのPDCAを、何度も何度も回していくことですね。
まとめ
今回は3定についてのまとめでした。
3定は、ここに「定時(定められた時間)・定高(定められた高さ)」の管理ルールを加えて、5定とする場合もあるようです。
時間という概念もモノ・在庫管理においては需要な要素になってきますから、皆さんのビジネスの特性に合わせて組み込んでいくといいでしょう。
いずれにせよ、こうした活動が目指すところは、「何を守るかを決め、決めたことを守る」という仕事の足腰に当たる部分の育成です。
英語では「To decide what we have to comply, to comply what we have decided」。
先ほども述べた人の考え方(マインドセット)に関わる部分ですから、変革には当然時間がかかります。
特に海外では、年単位で取り組まなければいけないことを覚えておいてください。全社的に、体系的に行って3年かかったという実際の例もあります。
人が育たなければ、カイゼンも会社の繁栄もありませんからね。まずは「人」です。
今日も読んでいただきましてありがとうございました。
ではまた!
意識改革と5S・3定: 企業革新の基礎づくり (新IE入門シリーズ 2)
よくまとまった一冊。これから5Sを始めたいと思う方は。