カイゼン活動導入・展開の8か条
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皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
さて今日は、組織のカイゼン活動を実りあるものにするための流れをお話ししたいと思います。
長年かけてじっくりとカイゼン活動を文化として積み上げてきた会社はともかく、普通カイゼンの歴史のない組織は、導入に際して何をどうしていいかわからないというのが本音ではないでしょうか。
そこで今回は、会社組織としてカイゼン活動導入・展開する際に抑えておきたいキーポイントを、ざっくりと流れで見てみようと思います。
いずれも当たり前のことで、残念ながら魔法のような方法ではありません。ですが当たり前のことを当たり前にやり切ることが仕事であり、ビジネスで勝ち残っていくための基本です。
カイゼン導入の際の指針にしていただければと思います。
全員が問題解決者
まず導入の際に、特にトップの方に理解しておいてほしいのが、カイゼン活動は全員参加の活動であるという点です。
よく掛け声だけかけて、「あとはお前らやっておけ」という上層部の方がいらっしゃいますが、それでは100%確実に活動はとん挫します。
また組織の一部局所的に、例えば工場の生産部門のみに展開するようなやり方も同様です。
カイゼンは確かにものづくりの現場で生まれた活動ではありますが、目指しているのは、品質を上げ、生産性を上げ、コストを下げ、さらにリードタイムを短縮することで、お客様満足度を向上させていこうという一連の行動です。そして手元のキャッシュを、いかに増やしていけるかになります。
これらのことは、企業が市場で勝ち残っていくためにやらなければならない努力以外の、何物でもないですね。
このように企業全体として取り組むものであるならば、そこで働く人全員で行うのは当然であり、また経営に関わる方が率先垂範しなくてはいけないものであることが、理解されると思います。
カイゼン活動の展開には、組織としてのさまざまな仕組みも必要になってきます。それらを作り支えていくのも、いわゆる事務方の部門の役割になります。
全員が、問題解決に貪欲になっている組織を作ることです。そういう企業文化を作り上げていきましょう。
会社方針展開
企業として、5年10年後にどうありたい、という戦略はありますか?
トップは夢を語らなくてはいけません。それは、組織論で言うところのVision(ビジョン)になります。
急激に変化するこの現代社会の中で、経営層、特にトップは組織を中長期的にどこへ向かわせたいのでしょうか? 社会は、テクノロジーは、競合は、お客様はどのように変化していくと考えているのでしょうか? そしてその激流の中で、御社は将来どこにポジションをとっていかれるのですか?
中長期的な戦略が決まれば、今年1年はその実現に向けて、何をすればよいのかが決まってきます。
ヒト・もの・カネ・情報の側面で、どのような具体的なアクションを取っていくのか、それが方針管理になります。
ビジョンと方針をしっかりと全員に伝えていきましょう。これがすべての活動の「なぜ」を明確にします。
- なぜこのタスク・プロジェクトに取り組まなくてはいけないのか
- なぜ、これがいま重要なのか
この「なぜ」が共有された組織の強みは、人が自発的に動くようになるところです。与えられたことだけにとどまらず、それ以上を目指すヒトが育っていきます。
方針管理は、問題解決やプロジェクトの発生する中心であり、そこで働く人間の努力の方向性を決定してくれるものなります。
80 20 ルール(最も効きそうなところ)
戦略とは「何をしないか決めること」であるとも言います。
限られた時間とリソース、有効に使わなくてはいけません。
戦略・方針が決まったら、どこ(例えばどの事業分野・新しい製品やサービス)に力を注ぐのかを決めなくていきましょう。
カイゼンも同様に、最も売上を産んでいるところ、あるいは最もコストがかかっているところなど、優先性が高い製品・サービスや部門・ラインを選択します。
いわゆる80 20ルールというやつですね。
その際も、当然ですがなんとなくではなく、データで語るようにしていきます。
売上高、コスト内訳などを分析します。カイゼンでは、QC7つ道具のパレート図がよく使われますね。
大事なことは、問題解決の因果とストーリーがしっかりしていることです。
こういう戦略で、こういう方向に向かう中、現状としてこのようなデータがあり、ここをカイゼンすることに決めた、というような説得力のある「シナリオ」が書けるかどうか。
活動の際には、常に考えなければならない部分です。
VSM(モノと情報の流れ図)を描こう(全体最適化)
そのように優先順位をつけ、製品やサービスを選択したならば、次は全体の見える化です。
「VSM(モノと情報の流れ図)を描こう」と題していますが、何も必ずVSMでなければならないということでもありません。
要はカイゼンしたい業務の全体の流れが、見えるようにしたいのです。
その工程に関わる部署・部門を網羅しているチームを作り、みんなで業務プロセスを可視化していきましょう。
その中で、問題となっている点を洗い出していきます。
問題が見えれば解決できます。
前工程や後工程が何をやっているのか、何をもって自分たちの仕事を完了としているのかの要件をすべて書き出しましょう。
おそらく今までそのような機会はなかったでしょうから、いろいろな新しい発見があるのではないかと思います。
その中から喫緊の問題を選択し、必要であればサブチームを編成して解決に当たります。ここでも80 20ルールで考えましょう。
全体最適を目指し、「流れ」を生み出すこと。
流れを阻害しているもの(ムダ)をいかに取り除くか、これがカイゼン活動です。
問題解決はストーリー
改善を指導していると、本当によく行き当たるのが、解決策に飛びついてしまうケースです。
おそらくその解決策、ないしはITシステムや機器とか、そういうものが導入したかったから、あるいは周りがやっているから、というのが理由になってくるのだと思いますが。
先にも述べたように、戦略であれ問題解決であれ、大事なのは因果であり説得力のあるストーリーです。
こういう背景があり、現状このような問題点があることがわかったので、このように活動していくということが、ロジカルに展開されていなければいけません。
もちろん、その作業者さんが業務のやりづらさを感じ、治具ややり方を良いものに変えていくという、日常における小さなカイゼン活動であれば、そういうロジックは自明です。
作業がやりづらかった、不良が出ていた、なのでこのように変更したというような、原因も解決策もはっきりしているこのような問題は、どんどん解決に向けてアクションを起こしていいと思います。「巧緻拙速」です。
しかしながら、慢性的な品質問題であったり、生産性を上げたい、あるいは新規の事業分野に拡大していきたいという原因や歩むべき道筋がよくわかっていない問題・課題の解決は、データを基にしたストーリー展開が欠かせません。
- 現在のビジネス背景を受けて、こうした問題・課題に取り組む
- 現状(悪さ加減)
- そのプロジェクトの目的やターゲットの設定
- 真因発見・成功へのシナリオ
- 解決策の考案と計画・実施
- 結果とプロセスの検証・反省
- 標準化・ヨコテン
因果関係のはっきりしたロジカルな活動であるか否かは、ストーリーから読み取ることができます。
「最近流行りのシステムだから」とか、「やってみたかったから」という理由で飛びついた解決策は、ほぼ100%うまくいきません。むしろ新たな問題を産むことが多いです。
指導の際は、この問題解決のロジックがしっかりしているかどうか、ガイドしていかなくてはいけませんね。
プロジェクトを管理する
一度プロジェクトが始動したならば、定期的な進捗確認が欠かせません。
当然プロジェクトの大きさや範囲によって、かかる期間というのは変わってくると思いますが、1・2週間ごと、計画と都度の目標毎に状況を確認する機会を設けましょう。
うまくいっているようであればよし、そうでなければ何か別の手を考えなくいてはいけませんよね。
このような時は、実際の現場に行き、現物を確認しながら、チームの皆さんと一緒に考え適切な指示を出すのも上層部の役目になります。
決して丸投げして、ただ出来ないことに腹を立てて叱責するような行動はとらないでください。残念ながら良くある形ですが。
また、プロジェクトが決めた期間通りに、アクションのすべてを完了できることも稀です。
おそらく多かれ少なかれ、キャリーオーバーアイテム(やりきれなかったアクション)が残るはずです。
そうした場合も当然、フォローアップをして、やり切るような環境を設定します。
「現場の書き物は金にならん」という言葉もありますから、こうした頻繁なアップデートは、管理者が自ら現場に行き、現物をプレゼンテーションの素材にするような工夫も必要になるでしょう。
これもある種の「躾」です。ビジネスですから結果を出さなくてはいけないのも当然ですが、その過程の中で、問題の解決までやり切れる忍耐力や、気力も養わなければいけません。
成果をたたえる仕組み
今まで見てきたことを機能させるには、いくつか組織内の仕組み整えておかなくてはいけません。
大まかに言って
- 事務局
- 学びと実践の場の提供
- 人事・褒賞システム
になるでしょう。
事務局は言うまでもなく、この全社的活動を推進・展開するためのさまざまな役割を負う人たちになります。
プロジェクトの成果発表の場を設けたり、活動の計画を立て、現場の人々と共に展開し運営していくこと、上層部と現場の橋渡しなど、活動を活性化させるためにやることは多いです。
マネジメントの方は活動に関わる裏方的なことまでは、当然手が回らないでしょう。そういうところをサポートしてもらうためにも、事務局設置は必須です。
学びと実践は、要はこれもPDCAを回すことにほかなりません。
掛け声をかけるだけでなく、きちんとしたトレーニングなどを実施して、そこで学んだことを実際に業務・カイゼンに活かしてもらわなくてはいけません。
こうした学びだけでなく、現場のカイゼン活動に時間を用意してあげるのもマネジメントの役目になります。
やってもらうなら環境を整備するのは、上の者の重要な役割です。
またこれに伴い、組織としてどのような「いいこと」を貢献者に用意できるのか。カイゼン活動に対する褒賞システムを設けましょう。
人事の昇進・昇給システムも同様です。
カイゼン活動で組織に便益をもたらした人たちの貢献具合を、人事評価に反映させる仕組みを持たなくてはいけません。
「いいことをすればいいことが起きる」という単純な図式が、ヒトの行動規範を決定します。
その行動規範に沿った、長年の活動の積み重ねが、いわゆる企業文化と呼ばれるものになっていきます。
PDCAを回す
このようなカイゼン活動の、ヒト・もの・カネ・情報にまつわる仕組み整備ができたなら、あとは愚直にこのPDCAまわしていきます。
カイゼン活動の初期の頃、2~3年くらいは単純な改善でも、いろいろと成果が出てそれなりに勢いをもって活動できるはずです。
ただ真価が問われるのはその後です。
本当の意味で会計上効果のあるカイゼン活動になっているのか、儲かる体質になるようなカイゼン活動だったのか。人は育っているのか。
真に意義あるカイゼンはキャッシュにも効いています。2~3年もすれば、その結果もはっきり見て取れるようになるでしょう。
また活動当初にどっさり出ていたコスト削減の値も、活動が進めば徐々に縮小していきます。そうなると、面白みがなくなってくるのも人情です。
活動の鈍化・モチベーションの低下を解決するのも、上層部の役割です。
組織は人。
常に問題・課題解決に挑戦し、やり切る力のある人間を育てることが、直接会社の体質となっていくことは想像に難くないはずです。
大事なことは、続けること、愚直にカイゼン活動というPDCAを回していくことです。
組織に属する人間全員が、常に問題を探してこれを解決しようとする力と胆力を備えている状態、これが会社のトップが作り出さなくてはいけない集団です。
そのための仕組みであり、企業文化になるのです。
活動のPDCAを回し、問題・課題解決のPDCAを回し続けられる人を、愚直な行動を通して育てていってください。
それが成功の秘訣です。泥臭いですが、真実です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は「カイゼン活動導入・展開の8か条」と題しまして、実査にカイゼン活動を行うに当たり、特にトップや上層部の方が心にとめておかなくてはならないことをざっくりと眺めてみました。
どれが欠けても、おそらくうまくいかないのがカイゼン活動。
そしてあまりにも地味で、こう説明すると見向きもされなくなるのも、この活動の特徴です(笑)。
ですがトヨタ自動車に代表されるような、生きた証というのは存在します。
「カイゼン」という言葉を分かりやすく使っていますが、これは要するに「ビジネ・ストランスフォーメーション」なのです。
強く、そして長年存続できる組織にするための、組織の仕組みと人づくりです。
新奇なバズワードに振り回されることなく、やるべきことをしっかりやっていくことが、成功の秘訣になります。
今日も読んでいただきましてありがとうございました。
ではまた!
元トヨタでコンサルの方。カイゼンにもかなり言及してます。