方針管理 Xマトリックスってなんだろう? 学ぶべき?

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皆さんこんにちは! 今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
海外で方針管理展開をしようと試みると、どこからともなく「方針専門家」が現れます。どこかで学んだのか、本人たちはエキスパートであるとおっしゃるのですが、任せてうまくいくかというと、残念ながらとん挫するケースがほとんどです。
その中でも目を引くのが、方針管理作成に「Xマトリックス」を使用すると主張するケース。
なんだかとても難しそうで、かつちょっと格好いいこのドキュメント。ただ私の知る限りトヨタや、他の日本の方針管理を導入している企業での使用例を見たことがありません。
今回は、この方針Xマトリックスに焦点を当てて、必要性を検証したいと思います。
Xマトリックスとは
方針管理は中長期戦略を踏まえた、当面(多くの場合1年)のアクション計画であり、組織の進むべき方向を決定してくれます。
そのためには、適切な方向設定して、組織全体でそれらをフィルタリングすることが重要です。「戦略とは何をやらないかを決めること」でした。3Cで市場・競合・自社などの分析を行い、進むべき道を決めていくのでしたね。
こうしたフィルタリングの作業の際に、この方針Xマトリックスが使用されるようです。
誰が始めたのか定かではありませんが、英語で「Hoshin Kanri」とか検索すると、遅かれ早かれこのXマトリックスの情報に行き当たります。山ほど。
海外発ですね、きっと。おそらく品質機能展開(QFD)のマトリックスあたりからヒントを得て、どこぞのコンサルあたりが作り上げたのではないかとにらんでいます。名前も「Quality function deployment」で、方針管理の英訳「Strategy Deployment」に似てますしね。
確かに作り上げたものを見れば、「やってる感」はすごい出ます。
Xマトリックスの中身


Xマトリックス例
ではここで実際のXマトリックスの例を見てみましょう。
Xマトリックスには5つのエリアがあります。
南
まずは、一番下(South:南と呼ばれる)の長期的な戦略目標から始めます。3C分析などのあとに生まれた、組織の全体的な方向性がここに記入されます。
西
次に、中長期の戦略を達成するための、この1年でやるべき具体的な目標を左側(West:西)に記入します。
長期目標からの年間目標の作成。今年は何を達成したいですか? 長期目標と年間目標の間の空欄(マトリックス)では、どの長期目標がどの年間目標と一致しているかをマークしていきます。
北
そうしましたら今度は一番上(North:北)に、先ほどの1年の具体的な目標を達成するためのアクション・プロジェクトを書きいれていきます。
左上隅のマトリックスで、先ほどの年間目標をさまざまな優先順位に接続して、どのアクションがどの目標達成を意図しているのか図示しておきます。
東
最後は右側(East:東)に、アクションやプロジェクトの具体的な測定基準(KPI)を入れる。
何をどのくらい増やす、あるいは減らすのか。KPIの定石に基づいて、数字で判断できるものにします。
こちらも右上コーナーの交差点で、関連しているものを●や◯でマークして関連性をはっきりさせます。
さらに東
その東のさらに右端に、それぞれのアクションやプロジェクトの責任者を置いて、実行を手掛ける人をはっきりさせる。
ちなみに真ん中には、組織のVisionを置いて、それぞれのアイテムが、組織の求めるあるべき姿と同期しているのか確認できる、という構造になっているようですね。
やってることは悪くない Xマトリックス
このようにきちんと分解して確認してみると、難しそうに見えるXマトリックスも、やっていることは、方針策定のために当たり前に必要なプロセスであることがわかります。
- 中長期の戦略を決め(南)
- 今年やるべき目標を明確にし(西)
- アクション・プロジェクトという具体的な行動を決定して(北)
- 成功測定のためのKPIを設定して(東)
- 誰が責任をもって遂行するのかを明らかにする(東の右)
ということで、それ自体は悪くない。やってることは正しです。というかこれ以外に方法もない。特に組織のトップに位置する方々(エグゼクティブ)が、戦略と重点項目を部署方針に落とし込むための作業としては、結構ありかなと思ったりもします。
ただし、何もX型じゃなくてもいいんじゃないか、という素朴な疑問が残ります。
やってみるとわかるんですが、このXマトリックス、とても見づらいんですよ。
この例だと、一番上がちゃんと読める配置になっていますけれども、例によっては本当に天地逆に書いたりするケースもある。
それは極端な例としても、つながりを明らかにするために書いてる割には、東西に位置するアイテムが、首をかしげないと読めない。
細かいことかもしれませんけども、こういう資料を見える化しようとして壁に貼ってあったとして、なぜ首をかしげるというひと手間をかけないといけないのか。
改善を指導した方なら必ず、「見づらいからカイゼンしなさい」の一言で、でX型という存在意義が瞬時に霧散するのではないかと思うのですが、いかがでしょう?
「別に右から左に、項目ごとに書いて行けばいいよね」となりそうなもんです。
これらを総合して聞きたいのは、「これ実務で本当に使ってみたことある?」という質問ですね。
だからおそらく、どこかのコンサルの方が開発したのではないかなぁ、と感じるのですね。
日本人が、英語を使うと何となくと知的、あるいは格好よく見えるのと同じで、欧米人だって「Kaizen」とか「Hoshin」という日本語の響きに同様の感情を持ってます。
そういう感覚を利用しつつ、やってることを小難しく見せるために、生まれてきた感が否めないこのXマトリックス。
ビジネスですからね、そういうブランディングも必要なんでしょうけでれども。
手順は、方針管理策定前のブレインストーミングに使えそうです。ただしX型はやめた方がいい。
それからこれ自体は方針管理ではないですので、この後きちんとした方針管理のフォーマットを整えて、CAPDの管理ができるようにしていかなくてはいけませんね。
まとめ
ということで今回は「方針管理X-マトリックスってなんだろう? 学ぶべき?」と題しまして、Xマトリックスの中身を確認してみました。
分かったことは、中長期戦略から年間の具体的な活動を導き出す手順であるということ。
おさらいすると
- 中長期の戦略を決め、
- 今年やるべき目標を明確にし
- アクション・プロジェクトという具体的な行動を決定して
- 成功測定のためのKPIを設定して
- 誰が責任をもって遂行するのかを明らかにする
でした。
そして読みづらいから、X型はやめた方がいい、でしたね。
実務で使ったことのないコンサル方が、ちょっとかっこ良く見せるのに開発した感が否めないこのXマトリックス。
だからこそ、冒頭にも述べた、どこからともなく「方針専門家」みたいなのが現れて、したり顔でこれを使おうとするんですね。
よく聞いてみると、MBAのコースで学んだ、とか、セミナーに出たから、とか方針(とLean)に関する本を読んだから、という程度の知識で実務使用経験がない。
一度でもやってみれば、使い勝手が悪いことくらい、すぐわかりそうなもんなんですけどね。
まずはどんなツールやフレームワークも、自分でやってみて確認してみるというのは大事なことです。
これも現地現物の考え方ですね。
なので「方針管理X-マトリックスってなんだろう? 学ぶべき?」という質問には、ここまで読んでくださっていれば、もう十分な知識レベルです、とお答えします。
ここに貴重な時間を割くより、方針管理を愚直に行う=アクションに労力をさくことをお勧めいたしします。
今日も読んでいただきましてありがとうございました。
ではまた!
方針管理から日常管理版への落とし込みまで。