問題解決アプローチ Problem solving methodology
どこへ行っても毎日問題は山積、あれもやってこれもやってと、皆さんお忙しい毎日を送られていることと思います。「いやーうちはそんなに問題もなくて、のんびり優雅にやっているよ!」なんて言う方はまずいないですよね。問題があるとプレッシャーを感じてしまうことも多いのではと思います。Kusunoko-CIも結構プレッシャーとかDead lineに弱いタイプなので、以前は問題会解決よりも気持ちの持ちようが大変でした。さて、そこで今回はその「問題」について取り上げ、少し視点を変えてみることで、これとうまく付き合えることもあるかも、という期待をもって論じてまいりたいと思います。
問題とは
「問題」、聞くとネガティブなイメージですよね。問題というからには、なにかがうまくいってなかったり、すでに何か取り返しのつかないことが起こっていたり、起こりそうだったりして、とりあえず何かアクションを取っていかなくてはならないわけで、なんとなく否定的な感覚を持ってしまいます。
しかしながら、トヨタではこれと全く違う考えをもって、「問題」というものを見ています。どういうふうに見ているかというと、ずばり「金の卵」です。金の卵というのは、何かしら富を生み出すようなモノの象徴ですけど、なぜなんでしょう? それは、「問題は、改善を行うための金の卵」とトヨタでは考えられているからなんです。
トヨタの問題解決手法を学ぶトレーニングでは、はっきりと以下の3点が述べられています。
At Toyota,
“Problem” is NOT a negative word, “Problem” is a “Disguised Kaizen”.
We need to aggressively uncover them.
トヨタでは、問題はネガティブな言葉ではない、“問題”とは“改善が姿を変えたもの”である、だから我々はアグレッシブにそれを見つけ出さなくてはならない、という感じです。
だからKusunoko-CIも最近では、問題にぶち当たるたび、「これがこの物事を良くしていくための第一歩だ、ありがたいことにそれに気が付けたのだから、後は改善して向上していくだけだ、気づけて良かった」と考えられるようになってきました(いつもじゃないですけど)。
問題 Vs 課題
ここでちょっと問題と課題の違いは何なのか考えてみます。これはいろいろ考え方もあるとは思うのですが、CIといいますか、トヨタの改善の考え方にあるものを流用して考えてみたいと思います。
「問題」は、何しろトラブルですよね。上記のようにポジティブに考えるにせよ、現状なにかしら悪影響が出ているものと考えることができます。一方課題は、今取り立ててネガティブな現状を生んでいるのはないけれども、ここよりさらに上を目指していくために、現状レベルより高めに設定して、これを目指して努力するという感じでしょうか。
これをトヨタでは、「現状が標準より低いところにあるもの」と「現状は標準段階にあるのだけれど更なる高みへ」という区別に基づき、前者を「Event Type of Problem」、後者を「Setting Type of Problem」と呼んでおります。だから、簡単に言えばEvent Typeは問題と呼べるし、Setting Typeは「課題」と呼べるのではと思います。
なんでこんなことを気にしているかというと、言語・文化の壁もあるとは思うのですが、海外で現場改善指導とかに行って、「君のところの問題(Problem)はなんだい?」という聞き方をすると、「Everything is ok, no problem now」と返事がきたことが多々ありました。そんなわけないんですが、何というか問題があると認められない、あるいは認めた瞬間に責任問題になってしまうとか、いろいろあるんでしょうね。我々、「問題 」は、クイズ番組でも「さてここで問題です」みたいな表現で、Questionのような意味合いで使ったりしてますが、場所によってはちょっとストレートすぎるときもあるようで、「Painpoint」とか「Problematic area」みたいにちょっと表現を変えて聞かなくてはならないこともありました。もちろんそこもすでにKaizen mind setの部分ですから変えていかなくてはいけないのですが、いきなり熱い風呂に入れるとびっくりしますから、Shuwaiya Shuwaiya(少しづつ、少しづつのアラビア語)です。
トヨタの改善解決手法
TBP (Toyota Business Practices)というトヨタが開発した問題解決の手法があります。これは全世界どこのトヨタに行っても理解しあえる、トヨタのBusiness languageにもなっているものですが、この中でも最初の段階で、結構詳細にこの問題というものに対しての、人の心の在り方を変えようとする説明があります。以前も書きましたが、TPSの生みの親、故大野耐一氏は「問題がないといってるやつが、一番の問題なんだ」とか、「現場というのは問題がないように見えて、探せば少なくとも7つくらいのムダは出てくるもんだ(7つのムダのもとになった言葉)」という名言を残していますね。人間、問題があれば隠したくなるのが人情で、だいだい問題があれば人を責めますよね。しかも結構強く。我々、日本の学校教育もタイに近いところがあって、減点主義といいますか、率先して言った・あるいはミスを恐れない態度というのはあんまり褒められなくて、正しい答えを言った時にのみ褒められるような場面が多かったように思います。そうすると、人はだんだん間違えることに萎縮し、間違えた人を責め、自分の問題は隠す・ないしは認めない・あるいは人に責任転嫁する、こういう態度を培ってしまいがちです。トヨタでは「人間尊重」の精神から、人を責めず、そのようなミスをした環境ないしはシステムを整備しようとします。もちろんミスを出さないよう緊張感のなか仕事をすることは当然ではあるわけですが、この問題を発見できたことは今後の多くのお客様の笑顔につながっていくのだから、問題を隠すなんてとんでもない、それを見つけて改善していこう、こういう発想になるわけです。これも企業文化のたまものですね。
まとめ
いかがでしたか? 今回はいつも厄介に感じてしまう問題も、これから良くなるために必要なものという視点でとらえれば、かなりポジティブに見えてくるのではというご提案でした。課題だってそうです。結局のところ包み隠さず現状を見つめ、現状や問題を受け入れることからしか改良・改善というものは生まれてきません。そしてこうなりたいというIdeal statusを持つ(視る)ことで次のアクションが取っていけるのです。変化は挑戦です。そして努力し過去の自分と比べましょう、他人ではなく。これも重要です。