「モノと情報の流れ図 (VSM) 」 アイコンの説明3「時間線」編
皆さんこんにちは! お疲れ様です。今日もどこかで改善サポート、Kusunoko-CIです。
さてここのところ、「モノと情報の流れ図 (VSM) 」のアイコンの説明をお送りしております。第1回が「モノの流れ」編、第2回は「情報の流れ」編でした。
そこで今回は、バリュストリームマップの一番下に書かれている、製造や生産プロセスに関わる時間を示した「時間線」部分のご紹介をしたいと思います。
こちらの記事で、「モノと情報の流れ図・現在」のアイコンと記入説明が完結いたします。
その1、その2と合わせてお楽しみください。
時間はVSMの再下段
こちら、このシリーズでお世話になっている「ReserchGate」さんのVSM例を見てみましょう。
上の写真にある、VSMの最下部の凹凸、「Days」とか「Sec」と書かれている線が見えると思います。
ここにその生産ラインでかかっている「時間要素」を書きいれていくのです。
時間の書き方
お気づきかと思いますが、この時間部分のライン、「凹凸」になっていて、上の「でっぱり」部分と下の「へこみ」部分に、分かれた書かれ方をしております。
順に書かれてる内容や、書き方を確認していきましょう。
上部分は「仕掛かり」を時間に変換
こちらの「凸」部分の時間というのは、上のモノの流れ部分にあるデータボックス間の、△アイコンに書かれた「何日分の仕掛かりがあるのか」と関わっている数字です。
「モノの流れ」編のところでお送した、この工程間の仕掛かりは、現地現物でどの位の在庫が眠っているのかを確認するのでしたね。
例えばこの例でいうと、CuttingとWeldingの間には今、LR合計で6400個の仕掛かりがあることが確認されております。
ここで、右上のお客様のデータボックスを確認してみましょう。
これによると、1か月に18,400個(L/R合計)で必要ということでした。
今、1か月の稼働日数が22日間だとすると、1日当たりの必要生産数は約837個(836.36…)ということになります (18,400個 ÷ 22日 ≒ 837個/日)。
さてここで、先ほどのCuttingとWeldingの間の仕掛かりに戻ってみましょう。現在LR合計で6400個でした。
この製品の1日に必要な量というのは837個でしたから、工程間にある仕掛かり6400個をこの837個で割ると、およそ7.5日分の仕掛かりが、この工程間で眠っていることがわかります。
この「ReserchGate」さんの例は、そこかしこで何やら計算が違っているようですが、基本的にはこのように、「工程間仕掛かり ÷ 1日に必要な生産量」という計算で、仕掛かりの量を時間に換算することができるのです。
下部分は工程のサイクルタイム
さて次が、この時間線凹凸の下、「へこみ」部分です。
工程毎の「サイクルタイム」を書きいれましょう。「モノの流れ」編のところで、「データボックスの書き入れ方」をご説明しましたが、その時計測したサイクルタイムを入れてください。
その工程で一つの製品を完成させるサイクルタイムと、工程を抜けるのにかかる時間=リードタイムに乖離がある場合は、凹のへこみ部分に上下に分ける線を入れて、上をリードタイム、下をサイクルタイムという書き方にしてもよいでしょう。
こうすれば、そのモノが工程を抜けるのにかかる時間と、実際にその1工程でかかるサイクルタイムが、違いも含めて一目でわかります。
そしてそれの乖離が大きいほど、何か(ムダ)がその工程内で滞留を生み出している、ということも理解できますからね。改善への第一歩「見える化」になります。
合計時間を出す
凹凸すべてに時間を書きいれたら、上下それぞれで数字の和を求めます。
上の数字の和が「生産リードタイム」、凹部分の和が「現在ラインで、加工にかかっている時間」ということです。
こちらの例は(上がなんだかよくわからない足し算になっていますが、計算が正しいと仮定して)、今このラインでかかる生産のリードタイム(材料が到着してから完成品になるまで)が23.6日、そして加工そのものにかかっている時間はわずか188秒ということが見て取れます。
これは面白いので、ぜひ皆さんの現場でもやってみていただきたいのですが、だいたいはそのムダの多さに、驚かれるのではないでしょうか。
この例で言うと、現在の加工にかかっている時間は、生産リードタイムのわずか0.01%(!)にも満たないということが見えてきました(188 ÷ 2039040秒〔23.6日〕で計算)。
この数字は、改善前と改善後を比較していくときの目安になりますね。0.01%が0.1%になったとしても、大きな違いです。
分母である生産リードタイムに潜む「悪さ加減=ムダ」をどれだけ排除していけるか、それがすなわち「リーン(Lean)」なラインを目指すという作業になります。カイゼン活動です。
付加価値時間
ちなみに物の本では、この時間線の凹部分の数字を「付加価値時間」と呼んでいる場合もあります。
しかしながら、私は少しこれに抵抗があります。
なぜかというと、果たして今のサイクルタイムが「本当に付加価値をつける動き(働き)のみで構成されているか」、に疑問が残るからです。
もちろん徹底的にカイゼンの進んだ工程であれば、ほぼほぼ動きのムダも排除されているかもしれません。
ですがたいていの場合は、作業内にはムダな動きが、まだ多く隠されているはず。
「動作の経済」という観点で見て、ムダのない作業になっているのかどうか。
実際に現地現物で、時間観測をして、動線の分析もしながら、もっとも効率的で、かつ作業者さんの疲れない形になるよう工夫をする。
そうやって付加価値率を上げる努力をしたあとで、工程にかかる時間を「付加価値時間」と呼べるようになるのでは、と考えています。なので私は前項で、「現在ラインで、加工にかかっている時間」という書き方をしています。ご参考まで。
まとめ
今回は、バリュストリームマップの一番下に書かれている、製造や生産プロセスの時間に関わる「時間線」のご紹介でした。
これで一通り、VSMの現在図を描くのに必要なアイコンがすべて確認できました。ぜひ皆さんも、製品群のバリューストリームに関わる全員で、現在の状況を見える化し、カイゼン活動に役立てていただきたいと思います。
その際は、必ず未来図もターゲットとして描き、改善Projectを進めてください。
全ての問題点が改善された時、その未来図が今度は現在図になっているはずです。そうしましたらまた新たな「未来図」を書いて、改善を継続的な「カイゼン」活動にしていってほしいなと思います。
今日も読んでいただきまして、ありがとうございました。
ではまた!